酒匂隆雄の畢生の遊楽三昧 sakoh

ドル安。

2020/12/18

ドル安が続いている。

主要通貨の年初と昨日のニューヨーク市場の終値を比べてみると、

      ユーロ・ドル ポンド・ドル 豪ドル・ドル

1月2日   1.1171 1.3135 0.6697

12月17日 1.2270 1.3580 0.7627

   +9.8% +3.4% +13.9%

EU.からの離脱問題で揺れる英国のポンドは年初から3.4%の上昇(ドルの下落)に留まっているが、ユーロは9.8%、豪ドルは13.9%上昇している。

ドル・円相場は年初108.54、昨日が103.07で約5%ドル安&円高となっているが、ポンド以外の通貨と比べるとドル安の度合いは低い。

年末と言う事で来年の相場予想が出始めているが、米系証券・銀行の予想は殆どがドル安で、凡そ15~20%のドル安進行を見る会社が多い。

その背景はバイデン新政権の大規模財政支出とFRB.による金融緩和継続への期待で、政府による債券発行で市場に金が余り、それが株式市場に流れて株価は上昇、為替市場では売られてドル安に繋がると見ている様である。

既にニューヨーク株式市場の3指数は連日最高値を更新し、ビットコインなどの仮想通貨も高騰している。

もし彼らの予想通りにドルが対円でも15~20%下落するとドル・円相場は88円~82円と空恐ろしいレベルに達する事になる。

空恐ろしいと言ったが、実は安倍内閣が発足してアベノミクスで金利安と株価高を演出するまでは2011~2012年までの2年間は75円~85円でドル安&円高で安定していたことを忘れてしまっている。

特にここ数年は105円~115円のドル高&円安に目が慣れてしまっているので、100円割れのドル安&円高は中々ピンと来ない人が多いのが実情だ。

面白いことにドル安が進むであろうと読んでいるシカゴ・IMM.の投機筋は約58億ドル相当のドル売り&円買いのポジションを持ち、ドルは下がらないと読んでいる我が国の個人投資家は約38億ドル相当のドル買い&円売りポジションを持っている。

米系証券・銀行の予想通りにドルが下がればシカゴ・IMM.の投機筋は利益を上げることが出来るが、我が国の個人投資家は損失を被る。

我が国の個人投資家が損失を回避する為には保有しているドルを売らなければならない。

只、今年の3月のコロナ・ショックの時にひと月の間に101円台から111円台まで急回復した記憶が有るので、ドルの下落リスクに対して高を括っている節がある。

上のチャートの黒い線が下がると(ドルが下がると)赤い線も下げている(ドルの買い持ち額を増やしている。)のが良く分かるが、彼らはドルが下がるとともに逆張りを行ってドルを買い下がっている。

相場が反転上昇すれば万々歳なのだがこのまま下がっていくと損失がどんどん膨らんでしまうので、あるレベルでタオルを投げて損切りを強いられる危険性が有る。

先ずは昨日一瞬切れた103円、次は今年の安値の101.17辺りがキーのレベルなのだろうか?

年末・年始は市場参加者数が減り、市場の流動性が低下するので思わぬ動きに注意致しましょう!

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プロフィール

さこう・たかお
酒匂隆雄

酒匂・エフエックス・アドバイザリー代表
1970年に北海道大学を卒業後、国内外の主要銀行で為替ディーラーとして外国為替業務に従事。
その後1992年に、スイス・ユニオン銀行東京支店にファースト・バイス・プレジデントとして入行。
さらに1998年には、スイス銀行との合併に伴いUBS銀行となった同行の外国為替部長、東京支店長と歴任。
現在は、酒匂・エフエックス・アドバイザリーの代表、日本フォレックスクラブの名誉会員。

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