酒匂隆雄の畢生の遊楽三昧 sakoh

ドル高&円安の流れが止まらず。

2023/09/06


ドル・円相場の上昇が止まらず、今日の東京外国為替市場で昨年の11月以来の高値となる147.80を示現した。



先週初は前週からのドル買いの動きが続いて147円台まで上昇したドル・円相場は、JOLTS.求人件数(米労働省が毎月公表する雇用動態調査)と言う聞き慣れない数値が予想を下回り、その後もコンファレンスボード消費者信頼感指数が同じく予想を下
回ったり、第2四半期GDP.改定値が下方修正されるなどの悪材料が出てFRB.による追加利上げへの期待が一時後退し、10年債利回りも4.1%台へと下落することとなった。



週末発表された8月の米雇用統計は非農業部門雇用者数が市場予想の16万8千人を上回る18万7千人となったが6月、7月分の非農業部門雇用者数が下方修正され、又失業率が前月の3.5%から3.8%へと悪化し、平均時給も前月比、前年比共に伸び悩んだ為に
長期金利の下落(10年債利回りが4.05%まで下落。)に伴ってドル・円相場は週の安値となる144.45まで下げたが、その後に発表された8月米製造業PMI.改定値や8月米ISM.製造業景況指数、7月米建設支出が軒並み予想より強い内容だったことから10年債利回りが4.23%まで上昇に転じると、ドル・円相場も146円台へと急激に値を戻した。



これらが2円近くも相場を上昇させる様な要因とも思えず、正に不可解な動きとも言えるが週明け月曜日のニューヨーク市場の休場(レーバーデイ)を控えて、長い週末に向けてのポジション調整が起きたと理解している。



この様な不可解な動きが見られる時は往々にして市場のポジションがロング、或いはショートに偏っていることが考えられるが、8月29日付でシカゴ・IMM.はネットで98,473枚の円・ショート(約84億ドルのロング)で、我が国個人投資家は約10億ドルのショートとなっており、前者はドルの上昇、後者はドルの下落を期待していると思われる。



因みに両者の現在のポジションは過去の実績から見ると相対的に極めて大きいものであると言え、金曜日の雇用統計の発表後にシカゴ・IMM.によるドル・ロングの調整(ドル売り)が起き、その後我が国個人投資家によるドル・ショートの調整(ドル買
い)が起きた可能性は高いかも知れない。



先週のドル・円相場は、強弱まちまちであった米国経済指標に翻弄されたが、全体的には市場予想を下回るものが目立った感じがする。

9月19日~20日に開催予定のFOMC.では政策金利が据え置かれる公算が大きいのではなかろうか?



未だ金利差を意識してのドル買い&円安の流れが止まらないが、物価上昇の元凶とも
言える円安進行そろそろ止まって欲しいものである。

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プロフィール

さこう・たかお
酒匂隆雄

酒匂・エフエックス・アドバイザリー代表
1970年に北海道大学を卒業後、国内外の主要銀行で為替ディーラーとして外国為替業務に従事。
その後1992年に、スイス・ユニオン銀行東京支店にファースト・バイス・プレジデントとして入行。
さらに1998年には、スイス銀行との合併に伴いUBS銀行となった同行の外国為替部長、東京支店長と歴任。
現在は、酒匂・エフエックス・アドバイザリーの代表、日本フォレックスクラブの名誉会員。
YouTubeチャンネル「酒匂塾長チャンネル」開設。

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