中国株投資家のみなさん、こんにちは。
イノベーションは静かに進む
中央経済工作会議が18日から20日の日程で開催された。
中国共産党中央委員会、国務院が主催するこの会議、1994年以来毎年1回、11月、12月に開かれるのが恒例である。その年の経済情勢、経済運営を分析、研究、説明し、翌年のマクロ経済発展計画を制定するのが目的である。
しかし、今年は習近平体制2期目の最初の年となる。十八大(2012年に行われた共産党大会)以来の経済発展状況、現在の経済情勢分析、第13次五カ年計画が終わる3年後までの経済運営方針、2018年の経済運営方針などが発表された。
経済成長率の目標が発表されたわけではない。
また、経済運営の重要原則はこれまで通り。
経済の安定を第一に置く("穏中求進)"という方針である。財政政策もこれまで通り。
金融政策については、"穏健な貨幣政策は中立を保持しなければならない(直訳)"としている。去年は"貨幣政策は穏健中立を保持しなければならない(〃)"とあり、原文の中国語は微妙に違うが、何を意図したのかよくわからない。
いずれにしても金融政策は緩和でも、引き締めでもなく、中立である。しかし、それは足元の緩やかな金利上昇を見てもわかることである。中立は既に市場コンセンサスとなっている。
来年の経済方針は今年同様、質を重視した経済運営が行われるということである。
例年と違うとすれば、今年は第十三次五カ年(十三五)計画の最終年まで後3年に迫っており、習近平政権第2期目最初の1年ということもあり、十三五計画達成のための方針が加わったことである。
その最重要目標は全面的に小康社会形成を成し遂げることである。そのためには、重大なリスクの解消、貧困からの脱却を正しく進めること、環境汚染防止といった3つの問題を攻略しなければならないと説明している。
重大なリスクの解消については、金融リスクを防ぎ、コントロールする。金融サービスは供給側構造性改革のサポートをメインの役割とする。
金融と実体経済、金融と不動産、金融体系内部において、良好な資金循環の形成を促進する。重点領域のリスク防止、処理をしっかりと行い、違法な金融活動を断固として打ち砕き、弱い部分の監督管理制度構築を強化する。
貧困からの脱却については、現在の基準における貧困脱却を保障し、救済の基準を低くせず、また、必要以上に高くせず、特定の貧困層の救済に標準を定め、深刻な貧困地区に力を集中し、貧困者の内生する力を引き出し、検査、監督管理を強化する。
環境汚染防止については、主要な汚染物質の排出量を大幅に減らし、生態環境の質を相対的に改善する。
"藍天保衛戦(青い空を保つ戦い)"政策を成功させ、産業構造を調整し、劣った生産能力設備を淘汰し、エネルギー構造を調整し、省エネ、環境検査にもっと力を入れ、運輸構造を調整するなどとしている。
また、質の高い発展を推し進めるためには次の8つの重点業務を上手く行わなければならないとしている。その内容は以下の通り。
(1)供給側構造性改革を深める
(2)各市場において主体的な活力を発揮させる
(3)農村振興戦略を実施する
(4)地域間の協調発展戦略を実施する
(5)全面開放の新局面形成を推し進める
(6)民生の保障水準を引き上げ、改善する
(7)多くの主体が供給し、多くのルートを保障し、賃貸・購入共に増やすような住宅制度をいち早く打ち立てる
(8)エコロジー文明の建設推進を加速する
この中では(7)に市場の注目が集まっている。
賃貸住宅市場、特に長期賃貸市場を発達させる。賃貸側の合法的な権益に基づく利益を保護し、専業化、機構化した賃貸物件を供給する企業の発展をサポートする。
不動産市場の平穏で健康的な発展の長期的に効果のあるメカニズムの形成を促し、不動産市場コントロール政策の連続性、安定性を保持し、中央と地方の権益を明確にし、差別化されたコントロールを実行するとしている。
不動産価格のコントロールがうまく行かないが、この点について、当局は、賃貸住宅を大量に供給することで、価格の急騰を抑え込もうとしている。
こうして今回の中央経済工作会議の内容を見ると、資金流動性は中立に保たれ、投機の徹底排除が続きそうだ。
戦略的振興産業に対する育成・発展政策はあくまで、経済が質の高い成長を達成されるといった条件の中で、行われるもののである。イノベーションは静かに進むことになりそうだ。
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