中国株投資家のみなさん、こんにちは。
上半期の香港市場、不動産、カジノが買われる!!
早いもので、今年も後1週間もすれば、半分終わってしまう。今回は上半期の香港市場の総括をしておきたい。
まず、昨年最終取引日と今年6月23日の終値を比較すると、ハンセン指数は16.7%上昇しており、NYダウの8.3%、TOPIXの6.1%、上海総合指数の1.7%を大きく上回っている。
上半期(ただし6月23日まで)のハンセン指数はこの4指数の中でもっともパフォーマンスが良かった。
2016年1年間の騰落率を見ると、NYダウがトップでハンセン指数はTOPIXを僅差でかわして第2位となっている。決して前年の相場が悪かったから今年前半のパフォーマンスが良かったわけでない。
ちなみに、一昨年最終取引日と直近とを比較した場合は、NYダウがトップだが、僅差でハンセンが続いている。
1か月ほど前に"香港ハンセン指数はなぜ上がる?"といったテーマで相場上昇の要因を分析した。本土からの資金流入、欧米機関投資家のリスク選好、ドル安傾向、堅調な企業業績などが要因であると指摘した。
今回は、"どのセクターが上昇したか、下落したか、その要因は何か"といった点に絞り説明したい。
この半年間で上昇の目だったセクターは、不動産、電子部品、マカオカジノなど。
不動産では、恒大地産(03333)、融創中国(01918)、碧桂園(02007)、雅居楽地産(03383)、中国海外宏洋集団(00081)などが大きく買われている。
全国不動産開発投資(累計)の伸び率を見ると、2016年7月をボトムに上昇傾向を示しており、5月(累計)については8.8%と少し鈍化しているが、4月(累計)は9.3%まで上昇している。
(注.月次推計であり、文中累計数字とは異なる)
個別企業ベースでみると、1-5月累計の契約販売額がいずれも好調だ。たとえば、恒大地産は65.7%増、融創中国は90%増(予約販売含む)、碧桂園は155.7%増、雅居楽地産は49.9%増、中国海外宏洋集団は64.8%増と、いずれも販売額は大きく伸びている。
マクロベースでは厳しい不動産価格コントロール政策が打ち出されてはいるが、ここで示した不動産会社が提供する中高級住宅に対する需要は非常に強い。厳しい政策は2件目住宅への投機を排除することであり、大手不動産会社への影響は軽微である。
株価については、業績が良く、手元の開発案件も豊富であることから買われている。
電子部品では、BYDエレクトロニック(00285)、舜宇光学科技(02382)、AVコンセプト(00595)、瑞声科技(02018)などが大きく買われている。
金属製ケース、レンズ、音響・振動部品などスマホ関連部品を中心に、電子部品の需要が伸びている。大幅な仕様変更が予想されるiPhone8に対する需要が大きいだけではなく、中国系スマホメーカーの台頭により、本土部品メーカーの受注が増えている。
瑞声科技の株価は、空売りを専門に行う投資集団による攻撃を受けて、5月中旬に下落、3週間ほど売買停止に追い込まれたものの、取引再開後、株価は落ち着きを取り戻している。粉飾への懸念は今のところ、収束している。
マカオカジノでは、メルコ・インターナショナル(00200)、ウィン・マカオ(01128)、銀河娯楽(00027)、澳門博彩控股(00880)などが買われている。
業界全体のカジノ月間売上高を見ると、2015年2月の48.6%減を底に回復基調となっており、2016年8月からプラスに転じている。
マカオカジノ最大の顧客は本土中国人であるが2014年に入り、汚職取り締まりが厳しくなると、顧客数が大きく減少し、業績が悪化した。しかし、その影響も既になくなっている。各社の2017年1-3月期業績は回復に向かっている。
共産党の厳しい汚職取り締まりはひと段落しており、マネーロンダリングなどのグレーな資金の動きが活発となりつつある。贈り物、接待・宴会需要として本土で根強い人気のある白酒なども、既に業績が回復し始めて1年以上経つ。
本土A株であるが、貴州マオタイ(600519)、五糧液(000858)といった主要白酒メーカーの株価は2016年春以降、しっかりとした上昇トレンドを形成している。接待需要についても、通常の状態に戻っている。
これらのセクター以外では、需要拡大の続く家電、自動車、業界再編計画に期待の高まる空運、運賃底打ち期待の高まる海運、薬価改定の悪影響が薄まった医薬品、ガス利用拡大政策で恩恵を受けるクリーンエネルギーといったところが好調であった。
この半年間で下落が目立ったセクターは、食品、アパレル、電力機械など。
食品では蝋筆小新食品(01262)、天アク国際(01219)、現代牧業(01117)、神冠控股(00829)などが大きく売られている。
低インフレ下で価格上昇が見込めない中、需要の伸びが低く、競争が激化している。食の安全問題などが業績の足を引っ張る企業もあり、業界内で淘汰が進んだ。
統一企業中国(00220)、万洲国際(00288)、青島ビール(00168)など、激しい競争の中で一歩抜け出すことができた企業もあり、こうした企業の株価は上昇している。
アパレルでは、エスプリ(00330)、波司登国際(03998)、テキスウインカ(00321)などが大きく売られている。
国際的な大競争が進んでおり、業界全体で寡占化が進んでいる。中国企業の中には、コスト面でも、商品競争力の面でも弱い企業が多い。前年は業界全体で不良在庫の処理が終わったことで買われた銘柄が多かった。
しかし、今年はその反動が出ている。さらに、構造的な要因が加わり、株価は下落している。
電力機械では、新疆金風科技(02208)、中国風電(00182)、中国高速伝動(00658)などが売られている。
中央政府は昨年、風力発電需要、設備投資の拡大に繋がる諸政策を打ち出したことから、好業績の企業が多かったが、今年に入ってからはその反動が出ており、今期の業績見通しは弱含みである。それが株価低迷に繋がった。
そのほか、本土株式市場が調整局面となっていることから本土証券、政策面で期待外れとなった太陽電池、技術革新の波に押し流されつつある広告・イベントといったセクターが売られている。
さて、下半期の相場はどうなるだろうか?
香港市場はファンダメンタルズ重視の市場である。業績が良くなりそうなところに資金は向かい易い。
上期は金融レバレッジの縮小政策が重点的に行われた。一旦、投機が収まれば、構造改革の進展に政策の軸は戻されるだろう。PPP(公民提携)、一帯一路戦略の進展などによるインフラ投資拡大が期待される。
建設・エンジニアリング関連、素材関連などは、上半期軟調であっただけに、株価の水準訂正が起こるとみている。
また、上期の本土市場は、投機抑制による流動性不足、売買活性の低下から冴えない動きとなった。香港市場とは対照的な値動きとなっている。下期はそうした厳しい政策が一旦フェードアウトするとみており、証券、銀行、保険など金融セクターにも注目したい。
そのほか、需要拡大が続きそうな電子部品については長期的に期待が持てそうである。
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