中国株投資家のみなさん、こんにちは。
先週の重要イベントは23日(木)に集中していた。
まず、米中が160億ドルの追加関税を双方で掛け合う件について、当初の予定通り実施された。
また、米中貿易協議がワシントンで22日(水)、23日(木)にかけて行われたが、"建設的で率直な意見交換が行われ、双方、引き続きコンタクトを保ち続けることで一致した"という、いつもの結果であった。
20日の時点でトランプ大統領はメディアに対して、"貿易協議によって重大な結果が生まれることには期待していない"と発言しているが、その通りの結果となった。これらだけをみると、米中貿易戦争は厳しさを増しているように見える。
ただし、2000億ドル相当の中国からの輸入品に対する追加課税措置に関する公聴会の状況をみると、少し様子が違うようだ。アメリカ国内からの不満が大きく、このままの規模では実施されない可能性がありそうだ。
日程であるが当初、20日から23日の予定であったが、それが27日までに延長されている。前回の公聴会では反対意見が多かったものの、結果には反映されなかった。
しかし、今回はその時以上に不満は高まっており、360名近い企業、業界団体など様々な組織の代表が意見を述べている。初日には、61組の各界からの代表の内、55組が追加関税措置に反対を表明している。
世界全体がグローバルなサプライチェーンで結ばれ、分業を進めている中で、中国はそのサプライチェーンの重要な節となっており、中間品貿易では世界最大の生産国となっている。
中国は長年、豊富な製造業の経験を積み重ねており、効率の高い成熟したサプライチェーンを作り上げている。生産ラインを中国から移転するのは非常に困難で、アメリカに戻すなどとても無理である。
出席した半導体、アパレル、バッグ、家具、照明、自転車、タイヤ、化学、プラスティック、海産物など幅広い業界関係者は、このように不満を漏らしていたそうだ。
アメリカにおいて、輸入品全体の金額はGDPから見れば相対的に小さいが、赤ちゃん用の座椅子から、結婚式の衣装、棺桶に至るまで、中国製品に依存していると言われている。
こうした身の回り商品の価格が上昇すれば、消費者心理への影響は決して小さくないだろう。景気への影響を軽視すべきではない。
問題は、公聴会での意見をトランプ政権が聞き入れるかどうかであるが、8月30日まで、意見徴収を行うとしていたが、政府はそれを9月5日までに延長している。何らかの形でトランプ政権は措置を軽減する可能性がありそうだ。
一方、中国側は、"太陽政策"で対応している。
銀行保険業監督管理委員会は23日、既に宣言していた銀行業開放措置を迅速に推し進めるために、「一部の規章について廃止、修正に関する決定」を発布した。
内容は、中国資本の銀行、金融資産管理会社における外資持ち株比率制限を取り消し、内外資本同一の株式投資比率規制を実施、外資投資の利便化を持続的に推し進めるといったものである。
これは、金融分野で強みを持つアメリカが長年、中国に要求してきたことであり、アメリカ金融界にとって大きな話である。既に大きな方針は発表済みで、今回はより具体的な法整備が進んだということではあるが、それでも好材料には違いない。
中国はアメリカの強固な政策に対して、市場開放という形で答えようとしている。
一番厄介なことは論点が為替に広がることである。中国は形の上では基準値をベースに上下に2%の変動枠を設けるといった管理フロート制を採用しており、相場が始まる前に中国人民銀行が基準値を発表している。
ややこしいのは、基準値の設定方法であり、それには前日の終値、通貨バスケット、モーメントを和らげる調整などが複雑に絡み合っている。実体としては、中国人民銀行が裁量で動かしているとしか思えない。
そのことをトランプ大統領が徹底的に問題にすれば、話は更にこじれてしまう。この点についても、「製造2025」計画同様、中国は一歩も引くことはないだろう。自国の金融システムを守るために、為替制度をこれ以上自由化したりはしないだろう。
今週も米中貿易戦争が、本土、香港を含め、世界の株価を動かす重要な要素となりそうだ。
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