中国株投資家のみなさん、こんにちは。
上海総合指数が5月22日(金)、再び高値を更新した。
この日の上海総合指数は2.83%上昇、終値は4657.60ポイント。4月28日場中で記録した高値を超え、終値ベースでは2008年2月19日以来、約7年3カ月ぶりの高値更新となった。
深セン総合指数については、今年の春節休暇に入る前の段階で、史上最高値を更新している。その後上昇トレンドが続いており、この日は1.01%上昇し、終値は2740.92ポイント。当然ながら、史上最高値を更新している。
この日の売買代金をみると、上海市場は1兆72億元(19兆7411億円相当、1元=19.6円で計算)。深セン市場は9530億元(18兆6788億円相当)。
同じ日の東証第一部売買代金は2兆4182億円に過ぎない。中国の経済規模は日本の2倍強とはいえ、資本市場の活発さは日本とはとても比較にならないレベルに達している。
この点だけをみれば、本土株式市場にはよほどの好材料があるようにみえる。もちろん好材料はあるが、悪材料も多い。株価は決して全面的な楽観が支配する中、簡単に高値を更新しているというわけではない。
悪材料には大きく分けて2つある。一つは景気の悪化である。
マークイット、HSBCは21日、5月の中国製造業PMI(速報値)を発表した。結果は49.1で、4月の確定値である48.9と比べ、0.2ポイント改善したが、依然として景気拡大・縮小の分かれ目となる50を割った状態が続いている。何よりも、市場コンセンサスである49.3と比べ、0.2ポイント下振れしている。
マークイットのAnnabel Fiddes氏は、「産出指数が今年に入って初めて50を下回るなど、中国製造業の経営環境は一段と悪化している。国内外の需要が減少、引き続き人員を削減している状態で、短期的に景気が戻るのは難しい状態である。需要が弱いことから、企業は生産計画を縮小している」などと指摘している。
4月の固定資産投資(累計)、小売売上高は前月を大きく下回っており、鉱工業生産、輸出は前月よりは回復しているものの、予想に対しては下振れしている。景気は依然として低迷を続けている。
もう一つは当局による厳しい株価過熱防止策である。
上海総合指数は5月の上旬、一旦崩れかけたが、その要因はこの株価過熱防止策にある。
当局は、流動資金が違法な形で株式市場に流入するのを厳しく規制しようとしている。
銀行に対しては傘下の信託会社を隠れ蓑にした株式運用を厳しくチェックしており、証券会社には信用取引の拡大を抑えるためにリスクコントロールの程度を厳しくチェックしている。一方で、IPO認可の数を増やし、認可の頻度を上げることで、株式供給を増やしている。重要なことは、当局が相場をコントロールしようとしていること、急騰を排し、穏やかな上昇に導こうとしていることである。
一方、買い材料は明白である。昨年7月中旬以降相場が反転上昇して以来、一貫して同じ要因が株価を引き上げている。政策期待が株価を引き上げている。
こうした悪材料、好材料が入り乱れる中で、株価は上昇トレンドを形成している。
つまり、たえず、政策期待の方が強いということである。
しかし、よく考えてみると、景気の下支えは3年前(正確には2012年8月)から行われている。金融緩和については、昨年春から本格的に始まっており、11月以降は利下げサイクルが始まっている。それなのに景気が回復してこない。それでもより多くの投資家が株を買ってくる。その理由は何なのか?
最大の理由はこれまで説明した通り、中国の構造改革が上手くいくこと、一帯一路戦略が加速し、アジア自由貿易圏形成への期待が広がっていることなど、長期の見通しに楽観的である投資家が増えた点を指摘してきた。
さらに、4月末に開かれた中央政治局会議で新しい政策方針が示され、そのことが景気回復への期待を高めていると考えられる。
これまでの需要拡大策には大きな問題があった。資金が付いてこなかったのである。中国のインフラ投資は地方政府が主役であり、銀行融資による厚い支援が不可欠であるが、いずれも十分に役割を果たせなかったからだ。
地方政府は慢性的な財政難に陥っているが、中央が地方政府の金融プラットフォームを通じた資金調達を厳しく制限し、また、土地売却についても、不動産価格コントロール政策の影響で、思うように売れず、結果として資金をねん出できないでいた。
一方、銀行については、バーゼル3に準拠した厳しい自己資本規制が敷かれている。2013年には理財商品問題で銀行の経営姿勢が当局より厳しく問われたことで、積極的な経営活動が控えられていた。
共産党がこれらの経済上の問題点を理解した上で、しっかりとコントロールしつつ、地方政府の資金力を高め、銀行融資の拡大を促す政策を取る方針を示し始めた。
利下げ、地方債の担保化、5000億元の信用貸出資産証券化テスト、地方のプラットフォームに対する貸し剥がし、貸し渋りの禁止などにより、地方政府、銀行は今後、投資、資金供給を増やし始めるだろう。
景気が簡単には回復しないことは良いことである。当局が経済主体を自由にしたら、不動産会社は投機を煽り、重厚長大産業は設備投資競争をはじめ、また、2009年に逆戻りしてしまう。
今後は経済体質が強化された上で、景気は回復し始める。
本土市場はバブルなどではない。少なくとも中国経済はバブルとは程遠い状態である。本土市場の上昇トレンドはこの先も続く。
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