酒匂隆雄の「為替ランドスケープ」 

米長期金利高(債券安)、米株安、ドル高。

2026/06/08

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市場予想を大幅に上回る米雇用統計の結果を受けて米長期金利は上昇し、「ベッセント・ライン」とも呼ばれる4.5%を突破した。
これによりFRBの年内利上げ観測が再燃し、米国株は大幅下落、ドルは主要通貨に対して全面高となった。
一方でドル円相場は160円台を回復したものの、依然として為替介入への警戒感は根強く、投機筋と当局の駆け引きが続いている。




先週のドル円相場は、前々週の158.59~159.34、前週の158.76~159.64からレベルを少し上げた159.30~160.34の凡そ1円内でのレンジ取り引きとなったが、週末に発表された5月の米雇用統計に於いて非農業部門雇用者数が市場予想の+9.2万人を大きく上回る+17.2万人となり、又前月4月の非農業部門雇用者数が+11.5万人から+17.9万人へ上方修正されたことを受けて、米10年債利回りがベッセント・ラインとも言われている4.5%を超える4.532%となり、結果としてFRB.による年内利上げの観測が高まって先週まで連日市場高値を更新していたニューヨーク株式市場のダウ、ナスダック、そしてS&P.の3指数が大幅に下落して、株安、債券安(金利高)、そしてドル高と言う動きとなり、160.24の高値引けとなった。

雇用統計発表前日木曜日の終値と金曜日の終値を比較すると、株価、特にナスダックの下げが大きかったが、為替相場に対するインパクトはそれ程でもなく、特に介入警戒感が漂うドル円相場は0.1%の上昇に留まった。

6月4日6月5日比較
米10年債利回り4.474%4.532%+0.058%
ダウ51,561.9350,866.78-1.3%
ナスダック26,830.9625,709.43-4.2%
S&P7,584.317,383.74-2.7%
ドル・円160.02160.24+0.1%
ユーロ・ドル1.16111.1522-0.8%
ポンド・ドル1.34231.3336-0.6%
豪ドル・ドル0.71330.7042-1.3%

とは言え、大台の160円をすんなりと超えた事により、再び更なる対円でのドル上昇を見込む向きが増えて来た。

先週高市首相は、参院本会議の答弁で、“為替については必要に応じ、いつでも適切に対応する。”と語り、又片山財務相も

-円安は中東情勢や原油価格も要因。

-為替のボラティリティの高さは2月以降のホルムズ海峡と関係あると思うが、円安の影響分析は難しい。

-足元の為替動向については具体的なコメントを控える。

-為替で、必要に応じていつでも適切に対応する。

と同じ様な発言をしたが、市場の反応は限られた。

ゴールデン・ウィーク中の11.7兆円の介入にも拘わらずにドル円相場は介入開始レベルに戻ってきており、どうやら市場は介入に対してその効果に対して疑問視し始めた感が有る。

実際、シカゴ・IMM.は6月2日時点で前週の約90億ドルの買い持ちから更に11億ドル買い増して約101億ドルの買い持ちとなっている。

そして何と、前週は介入期待で前週から僅かながら1億ドル売り持ちを増やして10億ドルのショートを保持していた我が国個人投資家は、7億ドル買い戻して3億ドルの売り持ちとなった。

とうとう痺れを切らしたか?

確かにドルのショート・ポジションを保持すると、日々スワップ・ポイントと言う日米金利差を払わなくてはならず、これは平均して毎日凡そ1.8銭のコストとなる。

(注:米短期金利が3.75%、日本短期金利が0.75%とすると、理論上のスワップ・ポイントは160円×(3.75%-0.75%)÷360≒0.013円、つまり日々1.3銭となるが、これに業者がある程度の手数料を加えて1.8銭くらいになるのであろうと考える。)

10日間ショートを保持すると1.8銭×10日=18銭。

20日間ショートを保持すると1.8銭×20日=36銭。

僅かに見えるが、長期間ドルをショートにしていると、このスワップ・ポイントがズシリと響いてくる。

それに加えてドル円相場が上昇するとCapital Loss.(元本の棄損)も被る訳で、ダブルのマイナスとなる。

逆にドルをロングにしておけば、日々このスワップ・ポイントが手に入ると共にドル円相場が上昇するとCapital Gain.(元本の増加)も得られる訳で、ダブルのプラスとなる。

言い換えれば、現状の日米金利差が存在する間は、ドルのショートを保持することは経済的に、そして精神的にも辛いと言えなくもない。

では何故ドルをショートにするのか?

それはドルが下落した場合は、スワップ・ポイントを大きく上回るCapital Gain.が得られるからである。

例えば介入で1日で4~5円もドルが下落すれば、1日でスワップ・ポイントの数百倍を得られる事になる。

話が逸れたが、我が国個人投資家はドル円相場が160円に近付く段階では介入を期待してドルの売り持ちを増やしたものの、その気配が見られない為に一旦ポジションを縮小した可能性は大である。

シカゴ・IMM.は介入は出ないと高を括っているのであろうか?

植田日銀総裁は先週の通信社主催の講演会に於いて、“経済・物価・金融情勢に応じて、引き続き政策金利を引き上げ、金融緩和の度合いを調整していくというのが、日本銀行の基本的な考え方である。”と述べ、今月15~16日に開催される金融政策決定会合での利上げに前向きな姿勢を示した。

筆者の勝手な考えは日銀の利上げと共に日米で協調介入を行ってドル円相場を下げると言う物であるが、それまでの1週間強の間のスワップ・ポイント支払いには、何の痛痒も感じない。

期待に反して協調介入が無いようであれば、戦略の変更を考えなくてはならないかも知れない…。

今週のテクニカル分析

今週のテクニカル分析の見立てはドルの上昇を予想。但し、テクニカル分析は介入などの人為的な動きには無力なので要注意。

今週のレンジ

ドル円:155.50~160.50
ユーロ円182.00~187.00

酒匂隆雄

酒匂隆雄 (さこう・たかお)

酒匂・エフエックス・アドバイザリー 代表
1970年に北海道大学を卒業後、国内外の主要銀行で為替ディーラーとして外国為替業務に従事。
その後1992年に、スイス・ユニオン銀行東京支店にファースト・バイス・プレジデントとして入行。
さらに1998年には、スイス銀行との合併に伴いUBS銀行となった同行の外国為替部長、東京支店長と歴任。
現在は、酒匂・エフエックス・アドバイザリーの代表、日本フォレックスクラブの名誉会員。


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