低下する家計の現預金比率 第2四半期資金循環統計
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経済ジャーナリストの鈴木雅光氏が、家計の現預金比率が低下するなかで進む「貯蓄から投資」への変化を解説。
株式や投資信託の保有残高が増加する一方、債券への関心も高まっています。資金循環統計から、家計のお金の置き場所がどう変わっているのかを検証します。
この記事で分かること:家計の現預金比率低下/株式・投資信託の保有状況/NISAによる資金流入/債券保有が回復する背景

先日、2026年第2四半期(6月期)における資金循環統計が発表されました。いくつか気になった点を解説していきましょう。
家計部門における保有金融資産の総額は2519兆1289億円で、前年同期比では11.05%増となりました。5期連続の増加です。この総額に対して従前、メディアなどでよく言われていたのが、「日本人は現預金指向が強い。なぜなら家計部門の現預金保有比率が50%を超えているから」ということでしたが、明らかに状況が変化しつつあります。2026年6月期の現預金比率は、44.92%へと低下しました。
家計部門の保有金融資産全体に占める現預金の比率は、2020年6月期の54.71%をピークにして低下傾向を続けていますが、それでも2025年3月期までは50%を超えていました。それが同年9月期からは50%を割り込み、以後、それが続いています。

現預金の総額自体は、それほど大きく減ってはいません。現金、流動性預金、定期性預金、外貨預金を合わせた現預金総額は、2026年6月期が1131兆5910億円で、前年同期比だと0.46%増となっています。それでも保有金融資産全体に占める現預金の比率が低下しているのは、他の金融資産の保有額が大きく増えているからです。
その最大の要因は株式と投資信託です。
家計部門における上場株式と投資信託の保有残高は、この数年で大幅に増加しました。コロナ禍の真っ只中だった2020年3月期の保有額と比べると、上場株式は272.87%増、投資信託は308.35%増です。上場株式が2.72倍、投資信託が3.08倍ですから、この間、リスク性資産の保有額が大きく増えたのが分かります。日経平均株価が7万円に乗せるなど、全体的に株式市場が堅調に推移したことが、その背景にあります。実際、2026年6月期の数字は、6月にかけて盛り上がったAI半導体相場の影響もあり、上場株式や投資信託の保有残高は、2026年3月期に比べると大幅に伸びています。それぞれの数字を上げると、
【上場株式】
218兆3295億円(3月期)→253兆1750億円(6月期)
【投資信託】
165兆2438億円(3月期)→193兆3357億円(6月期)
となりました。上場株式が15.96%増、投資信託が17%増です。
ただし、株式や投資信託の保有残高は、時価で評価されていることに注意が必要です。このように株式も投資信託も、保有額は大きく伸びているのですが、上場株式であれば株価の、そして投資信託であれば保有資産の評価益が含まれているのです。つまり、保有残高は確かに増えているのですが、新規資金の流入によって保有残高が増えているかどうかは、また別の話になります。
新規資金が流入しているかどうかを見るためには、保有残高から「調整額」という数字を加減する必要があります。
2026年3月期から6月期まで、上場株式の保有残高は34兆8455億円の増加でしたが、調整額は35兆443億円です。保有残高の増加額を超えて、保有株式の評価額が増えたということは、この間、上場株式の資金フローは、流入ではなく流出が生じたことになります。つまり、個人はむしろ売り手に回ったということです。大きく株価が上昇するなかで、相応に利食いする動きが広まったのでしょう。

一方、投資信託はどうだったのかというと、2026年3月期から6月期まで28兆919億円の増加で、調整額は24兆1291億円でした。両者の数字を比較すると分かりますが、評価益以上に保有残高が増えていますから、資金フローは流入であることを意味します。特に近年、投資信託に関してはNISAによる積立投資が増えていますから、それが資金流入を支えていると考えられます。
また現預金の動きで注目したいのが、定期性預金に復活の兆しが見えてきたことです。従前まで、利率がゼロ近傍で推移していたため、流動性の高さから流動性預金に資金が集中していましたが、わずかながら保有残高が増え始めました。一方で、現金保有は大きく減少しており、2026年3月期まで続いていた100兆円台を割り込み、99兆8357億円まで減少しています。物価高が続くなか、現金で保有することのリスクが浸透してきたからと思われます。
もうひとつ、確定利付商品で注目したいのが債券の保有残高です。2000年3月期には50兆5716億円あった家計の債券保有残高は、ゼロ金利・マイナス金利政策のなかで減少傾向をたどり、2018年3月期には24兆2060億円まで目減りしていたのが、徐々に金利水準が上がってきたことで再び注目を集め始め、2026年6月期には37兆9502億円まで回復してきました。10年物変動金利型個人向け国債や、個人向け普通社債の利回りが比較的高めであることから、価格変動リスクを抑えて運用したい個人に注目されています。
最後に「国債・財投債」の保有者内訳ですが、中央銀行である日銀は徐々にその保有比率を下げる一方、預金取扱機関と家計は微増。存在感を高めているのが海外投資家で、2012年3月期には4.03%だった保有比率が、2026年6月期には7.94%まで上昇してきました。ちなみにこの保有比率は過去最高です。

鈴木雅光(すずき・まさみつ)
金融ジャーナリスト
JOYnt代表。岡三証券、公社債新聞社、金融データシステムを経て独立し(有)JOYnt設立し代表に。雑誌への寄稿、単行本執筆のほか、投資信託、経済マーケットを中心に幅広くプロデュース業を展開。
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