蟹瀬誠一コラム「世界の風を感じて」 kanise

皆が知りたい エプスタイン事件

2025/09/25

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このおぞましい事件はどこまで解明が進むのだろうか。

美しいカリブ海の米領ヴァージン諸島沖に浮かぶリトル・セント・ジェームズ島。その東京ドーム6個分ほどの離れ小島で起きた出来事がいま亡霊のごとく蘇り、傍若無人なトランプ大統領を政治的に追い詰めている。

単なる個人の犯罪だけでなく、下劣な享楽に溺れた権力者たちの醜い振舞いやアメリカの司法制度の闇を浮き彫りにする勢いだ。なにしろその島が250人以上といわれる少女らへの深刻な性的虐待は人身売買の拠点として使われていることが発覚しているからだ。

事の発端は20年前。フロリダ州パームビーチの警察に、米富豪ジェフリー・エプスタインの邸宅で同氏に14歳の少女が性的虐待を受けたと両親から告発があったことだった。

エプスタインは2008年、児童買春1件の罪を認め、今思えば不可解な司法取引によって軽い刑罰で釈放された。だがそれは氷山の一角に過ぎなかった。2018年以降に新たに数十人の女性が沈黙を破って同氏の性的虐待を訴えたことを受け、米司法省が再捜査を開始。

捜査が進むにつれ、エプスタインが自ら所有する小島に豪華な邸宅やゲストハウスやスパを建設し、多数の少女ら(11歳を含む)への深刻な性的虐待や人身売買の拠点としていたことが発覚した。それだけではない。国内外の著名な政財界人やセレブなどが密かにこの島を訪れていたことも明らかになり、一大スキャンダルに発展した。

エプスタインの通称「ロリータ・エクスプレス」と呼ばれたプライベートジェットの搭乗記録にはトランプ大統領(少なくとも7~8回)やクリントン元大統領を始めアンドリュー英王子など著名人の名前が含まれていた。搭乗記録に名前があることは必ずしも違法行為への関与を証明するものではないが、エプスタインと親しい交友関係にあったことは明らかだ。

2019年7月、エプスタインは未成年者に対する性的人身売買容疑で再逮捕・起訴されたが、翌月になって拘置所の独房内で首つり状態で死亡しているのが発見された。ニューヨーク市検視局は「自殺」と断定したが一部の法医学者が首の骨の折れ方から他殺の可能性を示唆したため、有力者に「口封じされた」のではとの陰謀説がソーシャルメディアで拡散された。

現在注目されているのは、エプスタインが要人に対する脅迫手段として隠し持っていたとされる性的「顧客リスト」の存在の有無だ。

24年の大統領選中、トランプはエプスタイン事件に関するFBIの捜査資料をすべて公表すると約束していた。ところが当選後はその約束を撤回。さらには、事件と自身への疑惑から衆目をそらすために「エプスタイン事件は民主党の茶番」と息巻いたり、「オバマとバイデンによるでっち上げだ」などと根も葉もない主張をするようになったため、反トランプ派だけでなく幻滅した保守派やMAGA(米国を再び偉大に)運動支持者たちからも証拠隠滅ではないかと猛反発を受けている。トランプの言葉を信じてエプスタイン事件の真相と「闇の政府」の陰謀が明らかにされることを信じていたのだから無理もない。

さらに、トランプに指名されたパム・ボンディ司法長官がFOXニュースに対してエプスタイン元被告の顧客情報は「私の机の上にあり、検討中だ」という発言は、火に油を注ぐ結果になった。

民主党議員はもちろんのこと、MAGA運動の象徴的存在であるマージョリー・テイラー・グリーンなど一部の共和党議員からも事件資料の完全公開を求める声が上がった。

慌てた司法省と連邦捜査局(FBI)は沈静化を狙って「顧客リスト」は存在しないと断定したが、これも逆効果。岩盤といわれる熱烈なトランプ支持層に亀裂が走り、トランプは守勢に立たされている。

2000年代初頭までトランプはエプスタインと極めて親しい仲だったことは間違いない。それを裏付ける写真や証言も数多く残っている。2002年のメディア取材には「俺とジェフ(エプスタイン)は15年の付き合いだ。素晴らしい奴だ。俺と同じぐらい美しい女性が好きで、しかも若いのが多い」とさえ語っている。ところがエプスタインが逮捕されると手のひら返しで「俺はあの島には行ったことがない。あの男となんら関係がない」と親交を一転否定。

だが疑惑は深まるばかりだ。下院監視説明責任委員会の民主党議員は9月8日、エプスタイン元被告の遺産管理者が提出した非公開資料の一部として、2003年にトランプがエプスタインの50歳の誕生日に送ったとされる手紙を公開した。

その手紙には女性の体のセクシーな輪郭線を描いたスケッチの中にタイプ打ちの文章が数行あり、最後の行には「友達とは素晴らしいものだ。誕生日おめでとう。そして毎日がまた新たな素晴らしい秘密であるように」と記されている。文書の下部には署名があり、CNNなどの報道では過去のトランプの署名と酷似しているという。

トランプは手紙は「偽物だ」「捏造だ」「名誉棄損だ」といった強い言葉で自身の関与を一貫して否定している。

その最中、英国の対米外交の中心役だったピーター・マンデルソン駐米大使が9月11日、エプスタイン元被告との過去の密接な関係を理由に解任された。

だが、このおぞましい事件の全貌は未だに解明されないままだ。エプスタインは数億ドルといわれる資産をどのようにして築いたのか。どれほど多くの政財界の有力者たちが悪名高き「ペドフィリア(小児性愛)島」に群がり、罪と知りながら少女への卑劣な虐待を繰り返してきたのか。

死者が残したとされる秘密の「顧客リスト」はアメリカの政局にも新たな火種となりつつある。

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プロフィール

かにせ・せいいち
蟹瀬誠一

国際ジャーナリスト
明治大学名誉教授
外交政策センター理事
(株)アバージェンス取締役
(株)ケイアソシエイツ副社長
SBI大学院大学学長

1950年石川県生まれ。上智大学文学部新聞学科卒業後、米AP通信社記者、仏AFP通信社記者、米TIME誌特派員を経て、91年にTBS『報道特集』キャスターとして日本のテレビ報道界に転身。東欧、ベトナム、ロシア情勢など海外ニュース中心に取材・リポート。国際政治・経済・文化に詳しい。 現在は『賢者の選択FUSION』(サンテレビ、BS-12)メインキャスター、『ニュースオプエド』編集主幹。カンボジアに小学校を建設するボランティア活動や環境NPO理事としても活躍。
2008年より2013年3月まで明治大学国際日本学部長。
2023年5月、SBI大学院大学学長に就任。
趣味は、読書、美術鑑賞、ゴルフ、テニス、スキューバ・ダイビングなど。

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