蟹瀬誠一コラム「世界の風を感じて」

蟹瀬誠一(かにせ・せいいち)

国際ジャーナリスト
明治大学名誉教授
外交政策センター理事
(株)アバージェンス取締役
(株)ケイアソシエイツ副社長

1950年石川県生まれ。上智大学文学部新聞学科卒業後、米AP通信社記者、仏AFP通信社記者、米TIME誌特派員を経て、91年にTBS『報道特集』キャスターとして日本のテレビ報道界に転身。東欧、ベトナム、ロシア情勢など海外ニュース中心に取材・リポート。国際政治・経済・文化に詳しい。
現在は『賢者の選択FUSION』(サンテレビ、BS-12)メインキャスター、『ニュースオプエド』編集主幹。カンボジアに小学校を建設するボランティア活動や環境NPO理事としても活躍。
2008年より2013年3月まで明治大学国際日本学部長。
趣味は、読書、美術鑑賞、ゴルフ、テニス、スキューバ・ダイビングなど。


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トランプ、共和党内の刺客

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流石狡猾なドナルド・トランプ前米大統領である。またも見事にマスコミを煙に巻いた。

今月行なわれた中間選挙の激戦区に彼が無理矢理送り込んだ「刺客」候補が軒並み惨敗して批判の矢面に立たされたトランプは、「重大な発表をする」と意味深な事前告知でメディアを惹きつけ、共和党や家族の反対を押し切って、15日にフロリダの大邸宅でド派手な2024年大統領選出馬セレモニーを敢行した。

するとメディアの関心は一気に中間選挙の結果から次期大統領選でトランプはどうなるという話題に移ってしまった。してやったりと薄ら笑いを浮かべるトランプの顔が目に浮かぶ。

「マスコミについて俺が学んだのは、連中はいつもニュースに飢えていて、それもセンセーショナルな話しほどよいということだ」と、トランプは自伝で述べている。

ところが、虚言、暴言、妄言で大統領退任後も共和党内で猛威を振るっている前大統領の前に思わぬ強力なライバルが現れた。かつて「ミニトランプ」と呼ばれたフロリダ州知事のロン・デサンティス(44)である。

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中間選挙で民主党候補を「地滑り的」な大差で破り再選され、他州で共和党候補が苦戦する中、一夜にして激戦州で「レッドウェーブ(赤い波。赤は共和党のシンボルカラー)を起こしたのだ。今や次期大統領選で共和党の「脱トランプ」候補の本命として脚光を浴びている。

保守系メディア界の大物でルパート・マードック率いる経済紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ),タブロイド紙ニューヨーク・ポスト、そしてFOXニュースもこぞって「共和党の未来」だとデサンティスを称賛。WSJに至っては社説で「トランプは共和党最大の敗者」だと名指しで前大統領を厳しく批判した。

トランプにとっては旧友からの手痛い仕打ちだ。マードック傘下のメディアは共和党の支持基盤や党幹部に大きな影響力を持っている。昨年1月、過激な連邦議会議事堂襲撃事件をトランプが煽るまでは前大統領を後押ししていた。

デサンティスは、派手な身振り手振りや強権的な政治姿勢だけを見れば確かに「ミニトランプ」だが、傍若無人なトランプと違って頭が切れ、経歴は超エリートだ。スポーツ万能で、アメリカの二大名門大学イェールとハーバード法科大学院で学び、大学院生時代には海軍エリート部隊「シールズ」に所属してイラク戦争も経験している。舌鋒鋭く行動力もある若手保守派そのものだ。

共和党右派やいずれトランプを排除したいと思っている共和党支持者にとっては、トランプ抜きで「トランピズム(右派保守思想)」を実現してくれそうな期待の候補だろう。

しかも彼にはハリウッドスターを彷彿とさせる美人の夫人ケイシーさんがついている。8日にフロリダ州タンパで行なわれた祝賀パーティでは、イエローとゴールドのゴージャスなロングドレス姿で3人の子供たちと壇上に上がり、満面の笑顔で夫の勝利を祝っていた。

ケイシーさんはサウスカロライナ州のチャースルトン大学で経済学を専攻し、卒業後はフロリダ州のテレビ局WJXTのキャスターを務めていた。デサンティスとはゴルフ練習場で出会ったという。下院議員だった夫の政治活動を支え、デサンティス人気の一翼を担っている。今年9月、大型ハリケーンがフロリダ州を直撃した際には被災者救済基金の責任者として4500万ドル(約63億円)の救援金を集めた。

しかしながら、デサンティスの人気はバブルに終わる可能性もある。国政選挙ではまったくの未知数だからだ。大統領選への態度は明言していないが、今回の選挙戦でざっと見積もって2億ドル(約280億円)の政治資金を集めている。

彼が出馬表明すれば、トランプの怒りを恐れて遠慮している共和党の政治経験豊富な面々も名乗りをあげてくるだろう。マイク・ペンス前副大統領、マイク・ポンペオ前国務長官、ニッキー・ヘイリー前国連大使などが考えられる。

2019年にニューヨークからフロリダ州の自宅兼リゾートに住民登録を移したトランプの存在も不気味だ。2018年のテレビ選挙CMでデサンティス幼い息子に「トランプ自伝」読み聞かせる姿を恥ずかしげもなく見せて前大統領に媚びをへつらっていた。ところが今は袂を分かっている。

人一倍負けん気の強いトランプが黙っているはずがない。「あいつは忠誠心がない!平凡な共和党知事だ!」と自身のソーシャル・メディアでこき下ろした。これからさらにデサンティス潰しの悪手を打ってくるだろう。

トランプは黒いマフィア人脈からふたつの掟を学んでいる。ひとつは、やられたら容赦なくやりかえせ。もうひとつは、ボスを裏切った奴は絶対に許さないだ。

トランプの逆襲を侮るとデサンティスの大統領出馬は幻想に終わる。

トランプの悪巧みについては拙書『ドナルド・トランプ世界最強のダークサイドスキル』(プレジデント社)をぜひお読みいただきたい。

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巨漢の隣人

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身長は推定180センチ、体重100キロを超える習近平主席は、中国共産党史上で最重量級の指導者だ。だが、国際舞台での彼の存在感は今やそれよりもはるかに大きく重い。

16日、北京の人民大会堂で開幕した5年に1度の中国共産党大会で異例の3期目続投が確実視され、独裁的権力集中に拍車をかけようとしているからだ。

えんじ色のネクタイに紺のスーツ姿で大会堂の中央ホールに入場してきた習近平の口元は珍しくほころんでいた。自信の表れなのか、それとも不安を隠す為のポーズなのか。

冒頭の活動報告では過去5年間を「極めてまれで異常」と表現し、ゼロコロナを含めた自らの政策の成果を並べ上げてアピールした。しかし最も大きな拍手が起きたのは台湾統一の手段として「武力行使も除外しない」と発言したときだった。続投の正当性を不調な経済から安全保障にシフトして求心力を高めようとする習近平の意図が垣間見られた瞬間である。

習近平の3選は昨年12月の中央委員会全体会議で内諾を得て盤石のはずだった。しかし今年に入って様子が変っている。党での序列で第2位の李克強首相を筆頭とする反習近平の「改革派」が水面下で巻き返しにでているからだ。

個人独裁を進めた初代国家主席毛沢東を崇拝する習近平だが、戦乱を生きた毛沢東のような輝かしい軍歴もカリスマもない。孟氏、孔子など「四書五経」の古典から巷で流通したポルノ小説まで詳しかった毛沢東のような知性もない。

紆余曲折があったにせよ、無名だった習近平が政界で権力の会談を上がることができたのは父親の習仲勲が革命指導者のひとりで特権的地位にあったからに他ならない。

党総書記に就任した習近平はすぐに軍と治安組織内の反対勢力を粛正し、反腐敗キャンペーンで政敵や他派閥を排除して強固な権力基盤をつくりあげた。トップに就任してからわずか5年で140万人を超す官僚らが腐敗を理由に処分されたというから凄まじい。恐怖でカリスマを演出し、彼に忠誠を誓う者だけで周囲を固めたのだ。

いまや各省の常務委員レベルの常務委員281人のほぼ全員が習に推挙された人物だという。

ところがこのところ失政が目立つようになった。強権的なコロナ政策は国民生活を混乱させ国内経済を疲弊させた。強気の親ロ反米の外交方針は国際社会からの孤立を招いた。強硬な台湾政策は台湾市民の反中感情を高め、欧米や日本の台湾支持の輪を広げている。まさに内憂外患だ。

このまま習近平体制でいいのかという声が国内であがっている。大会直前には「習近平自宅軟禁」や「クーデター」というデマがツイッターで広がった。北京市内の高架橋に異例の「独裁」「国賊」「PCRはいらない。飯を食わせろ」という習氏を非難する横断幕が掲げられた映像も流れた。

改革派にとっては追い風だ。しかし、いま一気に習近平下ろしを仕掛けると党内が大混乱する。そう判断した改革派は習近平の続投を容認する代わりに政府の重要な実務ポストを奪取して経済政策で実権を握ろうと目論んでいる。

すでに「国家副主席」「全人代委員長」「首相」などのポジションを巡って両派の間で凄まじい暗闘が繰り広げられているという。

党の新体制人事は大会閉幕時に発表されるが、首相などの重要政府ポストは来年3月の中国の国会にあたる全国人民代表大会で決まることになっている。それまでは熾烈な権力闘争が続くことは間違いないだろう。

8月に広東省深圳市を訪れて「改革開放」の立役者だった故鄧小平最高指導者の銅像に献花した李首相は、次のような発言で暗に習主席を批判していた。

「黄河と長江は逆流しない」 

改革開放路線は逆戻りできないという意味だ。

習近平の思想がなんであれ中国共産党の歴史は権謀術数の権力闘争の歴史であることは今も変わりはない。

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「食べるビタミンD」SUN+d、先行予約販売スタートしました

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みなさん、こんにちは。トレトレスタッフです。

蟹瀬誠一さんの奥様である、蟹瀬令子さんが代表を務める化粧品ブランド「レナジャポン」から、本日より新商品の予約販売がスタートいたしましたので、ここにお知らせいたします。

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■食べるビタミンD「SUN+d」
母が娘のために開発したスキンケアブランド「レナジャポン」が女性の悩みに目を向け開発した100%植物由来でSDGsな新栄養機能食品「食べるビタミンD」SUN+d(サンディ)。

こちらの商品は、現代の女性たちが不足がちなビタミンDをはじめ、ビタミンC,E,B,ポリフェノール、マグネシウム、亜鉛など身体に必要な栄養成分を豊富に配合。

「サプリメントが苦手・・・」という方も、SUN+dならそのまま食べたり、毎日スプーン一杯パンにつけたり、ヨーグルトにいれたり。美味しく、楽しみながら、太陽の愛をいっぱい受けることができます。

本日より、クラウドファンディングサイト「Makuake」より先行予約を受付中です。早割中により最大20%OFFでご購入いただけます。一定数に達し次第、終了となります。

今だけのチャンス、ぜひともお買い求めください。

▼Makuake -「SUN+d」予約購入ページはこちら▼
https://www.makuake.com/project/sun-d/%20

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▼レナジャポン - SUN+d 商品紹介ページ▼
https://lenajapon.com/pages/sund

▼プレスリリース▼
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000016.000000453.html

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四面楚歌のあの漢

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第45代大統領の選ばれる前、不動産業やカジノでえげつない商売をしていたドナルド・トランプはマフィア人脈からふたつの掟を学んでいた。

ひとつは、やられたら容赦なくやりかえせ。そしてもうひとつは、「裏切り者は絶対に許さない」だ。それがトランプの仕事のルールになっている。先日、秋の中間選挙に向けた共和党予備選挙が行なわれたが、遺憾なくその掟が発揮された。

蛇のように執念深いトランプは昨年1月の弾劾裁判で彼に刃向かった10人の共和党下院議員を徹底的に口汚く批判を繰り返しただけでなく、彼らに"刺客候補"を放ったのである。

結果はどうなったか。前大統領に反旗を翻した勇気ある10人のうち勝ち残ったのはわずか2人。4人が敗北し、他の4人は出馬断念に追い込まれてしまった。退任後もトランプが恐怖支配で共和党内に強い影響力を持続していることを見せつけたかたちだ。トランプの高笑いが聞こえるようだ。

だが、皮肉なことに、このトランプ流復讐劇が2年後の大統領選で再選を目論むトランプの命取りになるかもしれない。落選した有力女性議員がトランプの「やられたらやりかえせ」という掟を逆手にとってリベンジを誓っているからだ。

ワイオミング州予備選でトランプが支援した対立候補に37ポイント以上の大差で敗れた反トランプの急先鋒リズ・チェイニーはNBCのニュース番組「トゥデイ」出演し、「いかなる手段を使ってもトランプをホワイトハウスに近づけさせない」と宣言。 自身が2024年の大統領選への出馬を検討していることを明らかにした。

トランプが「米国にとって非常に重大な脅威とリスク」を及ぼしているというのがその理由だ。

リズ・チェイニー(56歳)は、ブッシュ(子)政権で副大統領を務めた父ディック・チェイニーの娘。父の地盤を引き継いで下院議員を3期務め、共和党保守派の期待の星と目されていた。2年前の共和党予備選では得票率73%で大勝。昨年1月の連邦議会議事堂襲撃事件でトランプを批判して解任されるまでは下院で共和党第3位の重要ポストに就いていた。襲撃事件を調査する超党派の下院特別委員会でも副議長を務める有力議員だ。

一方、してやったりと大満足のトランプはさっそく自身のソーシャルメディアで嫌みたっぷりにこんな投稿をした。

「彼女はようやく政治的忘却の彼方に消えることができる。その方が今よりずっと幸せだろうと俺は思うよ。ワイオミング州よ、ありがとう!」

だが現実は違っていた。忘却の彼方に消えるどころか今やチェイニーはメディアや保守層の間で一躍スター扱いだ。下院再選のプレッシャーが無くなった彼女はトランプ追い落としへの執念をさらに燃やしている。

「たとえ共和党の大統領候補に選ばれなくても、トランプの野望にかなりのダメージを与えることができるだろう」と、米政治ニュースメディア「ポリティコ」のデビッド・サイダース記者は分析している。

 

 確かに、今回の敗北によってチェイニーは米全土で勇気ある「真の反トランプ」リーダーとして全国的に知名度を高めた。多くの保守層の目には、傍若無人な前大統領の顔色ばかり気にしている弱腰の共和党幹部とは一線を画す「ヒーロー」と映っていても不思議はない。それに彼女の思想信条は保守層に受け入れられやすい。例えば、人工中絶には反対だ。

 その証拠に、今回の予備選だけで集まった選挙資金は1400万ドル(約19億円)。そのほとんどを反トランプキャンペーンに使うという。

「我々の党の偉大な初代大統領エブラハム・リンカーンは上院、そして下院でも選挙で負けたが、最も重要な選挙(大統領選)で勝利した。・・・共和党支持者、民主党支持者、無党派層が一丸となって、我々の共和国を破壊しようとする者に立ち向かおう」

彼女の敗北宣言はトランプに対する新たな宣戦布告のように響いた。

そんな中、トランプ自身が起訴され出馬できなくなる可能性もでてきた。8日、泣く子も黙る連邦捜査局(FBI)がフロリダのトランプ私邸に家宅捜索に入ったからだ。大統領経験者が家宅捜索を受けた前例はない。起訴できる確証があるのだろう。

司法省による異例の申請で公開された司法省による異例の申請で公開された捜査令状によれば、捜索容疑は公文書の隠匿・破棄、スパイ防止法違反、連邦捜査にかかわる文書の破棄や改ざんというから事態は深刻だ。押収された文書の中には核関連など漏洩されれば米国の国家安全保障に「きわめて重大」な打撃を与える極秘文書もあったという。

米国では1978年の大統領記録法によって、大統領の公務に関する電子メールやメモ、書簡などあらゆる記録を保存し、退任時に国立公文書記録管理局に提出することが義務づけられている。貴重な歴史的資料だからだ。機密文書隠匿罪は2千ドルの罰金と3年以内の禁固刑。スパイ法違反で有罪になれば文書ごとに最高10年の実刑となる。

ただ、3ヶ月後に迫った中間選挙前に司法省が訴追すると、選挙に影響を与えるだけでなく政治的謀略だと批判されることは間違いない。訴追は来年になるのではないか。

家宅捜索とほぼ時を同じくして、米ニューヨーク・タイムズ紙の記者が秋に発売する著書で、トランプが在任中に公文書を頻繁にトイレに流していたことを証拠写真とともに暴露していることが明らかになった。米ニュースサイトAXIOSが公開した2枚の写真を私も見たが、便器の中に沈んだ紙片にある油性サインペンで書かれた文字はトランプの筆跡と酷似している。

事実ならトランプは公文書破棄の常習犯だということになる。間違ってもそんな人物を大統領に再選してはいけない。

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スリランカの悲劇

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「エコノミック・ヒットマン」という言葉をご存じだろうか。

表向きはアメリカの一流コンサルティング会社のエコノミストだが、裏の顔は工作員として途上国を負債の罠にはめて米国の言いなりにする"経済的刺客"のことだ。

手口は極めて巧妙だ。まず、彼らは豊富な自然資源を持つ途上国の指導者に世界銀行の融資を受けて国家の近代化をすれば飛躍的な経済成長と共に巨万の富を手に入れられると言葉巧みにもちかける。

ところが実際には融資された資金は巨大インフラ事業を受注する米企業と現地の強欲なエリート層の懐へ入るだけで、「債務の罠」陥った国は破綻する。

こんな悪行を平気でやるのは覇権国アメリカだけかと思ったら、最近は急速に台頭してきた中国が真似をするようになった。

最近その餌食となったのが、風光明媚さとその島の形から「インド洋の真珠」とばれるスリランカだ。衝撃的な政変が繰り広げられている。

数万人の怒れる群衆が豪華絢爛な大統領公邸を占拠し、逮捕を恐れたゴタバヤ・ラジャバクサ大統領と夫人が慌てふためいて警護1人とともに軍用機で隣国モルジブに逃亡してしまった。

かつてはニューヨークタイムズ紙に「訪れたい国」第1位に選ばれたこともあるスリランカだったが、今は1948年の独立以来最悪の経済危機に見舞われているからだ。物価は高騰する一方で生活必需品は不足し、大規模な停電も頻発して最低限の生活すら維持できない惨状だ。病院では医療品が不足してまともな治療すらできない。あまりの生活苦に危険を覚悟で海峡を隔てたインドまで泳いで渡ろうと試みる人まで出ているという。

さらに、新型コロナの世界的大流行によって主要産業である観光業が壊滅。とうとう債務不履行に陥った。今月5日、ウィクラマシンハ首相は議会で国家破産を宣言した。

驚くべきことには、国家の破綻がラジャパクサ一族という私利私欲に走ったファミリーの悪政によるものだということだ。

多民族国家スリランカでは、独立後26年にも渡って内戦が続き7万人以上の犠牲者がでた。2009年にマヒンダ・ラジャパクサ大統領(逃亡したゴタバヤの兄)が独立派武装組織「タミール・イーラム解放の虎」を制圧し内戦終結を宣言。ようやく平和が訪れた。

しかしそれもつかの間、ラジャパクサ一族が強権的にスリランカの政界、経済界を支配するようになったのである。兄弟で大統領と首相を務め、その権力を笠に政府の重要ポストのほとんどを身内で固めてしまった。国家予算のじつに75%を独占するようになったというからネポティズム(縁故主義)の極めつけだ。

そこに目をつけたのが中国だった。ラジャパクサ一族は中国との関係を深め、インフラ整備に大幅な借り入れを実施した。借り入れの総額は4月時点で1000億ドル以上にも膨らんでいたという。

2017年、スリランカ政府は同国の南部の要衝・ハンバンドタ港の運営権を99年間中国の国営企業にリースすると発表して世界に衝撃が走った。

インフラ建設などを行うために中国からふんだんに融資を受けたものの、施設が十分な利益を生まず、借金だけが膨らみ、返済不能になったため施設や土地を中国に明け渡さざるを得なくなったのである。いわゆる「債務の罠」の典型例だ。その裏には中国版エコノミック・ヒットマンが暗躍したに違いない。

地政学的にみても重大な出来事だった。なぜなら中国のハンバンドタ港支配は米国、インド、そしてスリランカの旧宗主国によるインド洋支配を脅かすからだ。先週凶弾に倒れた安倍晋三元首相が2016年に唱えた「自由で開かれたインド太平洋構想」に米英印3国が強い関心を示したのはそんな危機感があったである。

習近平主席が「一帯一路」(中国を起点としてユーラシア大陸全体や南太平洋を結ぶ経済圏構想)を推し進めれば「債務の罠」に陥る第2、第3のスリランカが現れても不思議はない。ドル基軸体制維持に危機感を抱いたアメリカはこれからさらに反中国色を鮮明にするだろう。

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