蟹瀬誠一コラム「世界の風を感じて」

蟹瀬誠一(かにせ・せいいち)

国際ジャーナリスト/明治大学国際日本学部教授
(株)アバージェンス取締役
(株)ケイアソシエイツ副社長
1950年石川県生まれ。上智大学文学部新聞学科卒業後、米AP通信社記者、仏AFP通信社記者、米TIME誌特派員を経て、91年にTBS『報道特集』キャスターとして日本のテレビ報道界に転身。東欧、ベトナム、ロシア情勢など海外ニュース中心に取材・リポート。国際政治・経済・文化に詳しい。現在は『リーダー&イノベーション・賢者の選択』(日経CNBC,サンテレビ、BS-12)、『マネーの羅針盤』(テレビ東京)のメインキャスター。カンボジアに小学校を建設するボランティア活動や環境NPO理事としても活躍。
2008年より2013年3月まで明治大学国際日本学部長。
趣味は、読書、美術鑑賞、ゴルフ、テニス、スキューバ・ダイビングなど。


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トランプと民兵

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アメリカ中西部ミシガン州にミュニスと呼ばれる人口5万人ほどの田舎町がある。その森の一角で数ヶ月前から毎週日曜夕刻になると銃声と爆発音が響いていた。

ミシガン州では「オープンキャリー」(銃を公然と持ち歩く権利)が認められているので、住民は射撃の練習だろうと思って警察には通報はしなかった。ところが今月に入って衝撃の事実が明らかになった。

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なんと「ミリシア(民兵)」と呼ばれる極右武装勢力が大統領選挙直前にミシガン州庁舎を襲撃してグレッチェン・ウィトマー州知事(民主党)らを拉致・殺害する準備をしていたのだ。

事態を察知した内部通報者が連邦捜査局(FBI)に連絡したため計画は未遂に終わったが、13人が内戦を画策した容疑で逮捕された。知事の厳しいコロナ対策に不満を募らせ、11月の大統領選挙前に本気で州政府転覆を狙っていたというから狂気の沙汰だ。

アメリカでは昔から政府から独立した市民による市民のためのミリシアの存在が憲法で認められている。独裁的な政府が出来たときに圧政から共同体を守るという崇高な目的のためだ。だから「武器を保持または携帯する権利」が与えられているのである。しかし現在のミリシアは違う。そんな気高い思想とはまったくかけ離れた白人至上主義者たちや政府や警察の権威主義を敵視する危険極まりない過激派の集団ばかりだ。

「スリー・パーセンターズ」「オウス・キーパーズ」「ブーガルー・ボア」「プラウド・ボーイズ」「パトリオット・プレーヤー」など全米各地に点在するミリシアの数は正確には把握されていない。だが、ソーシャルメディアで暗号化されたメッセージで繋がっている支持者は数千人規模にのぼると専門家はみている。FBIはこうした武装市民集団を「アメリカにとって国内最大級のテロの脅威」とみなしているほどだ。

ところが、人種差別主義者のトランプ大統領はそんなことはお構いなし。「ミシガンを解放せよ!」「バージニアを解放せよ!」などと得意のツイッターで彼らを煽り続けている。両州とも知事が民主党だからだ。勢いづいたミリシアやネオナチが全米各地で活動を活発化させていて11月3日の投票日に向けて暴徒化する可能性も出てきた。選挙戦終盤でトランプがコロナ感染入院したうえ世論調査で民主党のバイデン候補に大差でリードされているからだ。

先月末の第1回大統領候補テレビ討論会の中でも、トランプはミリシアのひとつ「プラウド・ボーイズ」に対して「下がって待機せよ!(Stand back and stand by)」と語りかけて物議をかもした。それはそうだろう。「お前たちの出番はこれからだ」と言ったに等しいのだから。

以前にも「バージニア州の民主党は憲法で守られたお前たちの(銃を所持する)権利を奪おうとしているぞ」という大統領がツイートしたため、全米の武装したミリシアが州都リッチモンドに集結して一触即発の事態になったことがある。州知事が慌てて非常事態宣言を発令して大事には至らなかったが、なにしろ高性能ライフルなどで武装している連中である。ひとつ間違えれば大惨事になるところだった。

その一方で、トランプは彼に対して批判的な勢力には容赦がない。極右組織と各地で激突しているアンチ・ファシズム運動、略してアンティファに対しては「お前らをテロ組織に認定してやる!」と激怒。しかしアンティファは緩やかなネットワークで繋がったリーダーのいない運動で組織もない。そもそもアメリカの法律では国外から支援を受けた団体でなければテロ組織として非合法化できない。だからトランプを支持する武装したミリシアや過激な白人至上主義団体クー・クラックス・クラン(KKK)なども大っぴらに活動できるのである。トランプはそんなことも知らないのだろう。

第2回大統領候補討論会をボイコットしたトランプは12日フロリダの空港に降り立ち、退院後初の大規模野外集会に姿を見せた。そして壇上から未使用のマスクを参加者たちに向かって投げるとこう言い放った。

「私はみなさんの祈りでとても元気になった。そちらに行って男性にも美しい女性にもキスするよ」

セクハラ親爺丸出しで、気持ちが悪い。

全米でコロナ感染者・死者数が急増していて、さすがのトランプ大統領も敗色濃厚だ。「トリプルブルー」(大統領、上下両院を民主党が制する)が実現する可能性も出てきた。だが、トランプは決して負けを認めない狼藉者だ。「郵便投票で不正が行なわれた!」とわめき散らして泥沼の法廷闘争を仕掛ける一方で、危険な極右勢力を扇動して大混乱を起こしホワイトハウスに居座ろうとするだろう。なぜなら、再選されなければ権力乱用や不正な取引、セクハラなど様々な過去の悪行で監獄にぶち込まれる可能性があるからだ。

大統領に解任されたジョン・ケリー前大統領補佐官は友人に怒りを込めてこう漏らしたという。

「(トランプは)私がこれまでの人生で出会った中で最も欠点だらけの人間だ」

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