イラン軍事衝突秒読みか

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Benjamin Netanyahu, February 2023
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Official Presidential Portrait of President Donald J. Trump (2025) by Daniel Torok / White House (Public Domain)
マジック・カーペット、魔法のランプ、シンドバット・・・
子供の頃読んだ『アラビアンナイト』(千夜一夜物語)はどれもファンタジックで、遥か遠くの異国の物語に想像力を掻き立てられた記憶がある。そんな物語の多くの舞台が古代のイラン(ペルシャ)の街であることを知ったのはずっと後になってからだった。
もちろん現実のイラン・イスラム共和国はそんな夢物語とは程遠い。いまや1979年のイラン革命以来最大の地殻変動期を迎えている。気になるのは気まぐれなトランプ米大統領の決断と反米イランの核武装への執着、そして狡猾なイスラエルのネタニヤフ首相の策謀が中東地域を大規模な戦争の瀬戸際にまで押しやっていることだ。
情報筋によれば、11日にネタニヤフがトランプとホワイトハウスで2時間を超える会談をした際に、イランとの交渉の埒が明かなければ、今後6週間以内にイスラエルは単独でもイラン攻撃に踏み切ると強く圧力をかけたという。圧力というよりは「最後通牒」に近い。
ネタニヤフはイスラエル史上最長の首相で、老獪なネゴシエーターだ。トランプだけでなく歴代のアメリカ大統領を巧みに操ってきた。とりわけ思慮に欠けるトランプは操縦しやすく、エルサレムをイスラエルの首都と承認、ゴラン高原のイスラエル主権承認、イラン核合意離脱など、彼が長年求めてきた政策をトランプ政権で一気に実現してきている。
もしイスラエルと米軍の共同作戦となれば、数週間にもわたる大規模な攻撃になり、先月のベネズエラへのピンポイント攻撃より遥かに本格的な戦争に近いものになるだろうと、米オンラインニュースサイトAxiosは伝えている。イラン政権にとっては存亡をかけた戦いになるだろう。
振り返れば、数年前まで米国とイランの関係は「代理戦争」のレベルに止まっていた。両国とも直接戦うことは避けたいという地政学的な相互抑止が効いていたからだ。しかし2023年10月、パレスチナのイスラム組織ハマスはイスラエルに前例のない大規模な奇襲攻撃を決行。それに対してイスラエルは、ハマスを代理勢力として使うイランに直接攻撃を開始した。

それだけではない。政治の魔術師と呼ばれる狡猾なネタニアフは、対イラン軍事介入には否定的だったトランプをまんまと巻き込んで、「イランの核開発を阻止」を理由にイラン国内の核関連施設に大型地下貫通爆弾による空爆と巡航ミサイルを撃ち込ませた。恐れていた直接軍事衝突である。
それに対しイランは、カタールにある中東最大の空軍基地を含む、中東各地の米軍基地に対して電撃的にミサイル攻撃を実施。この「12日戦争」はイランとイスラエルがそれぞれ勝利宣言の上で米国が仲裁して停戦となった。
イスラエルと米国の攻撃でイランは壊滅的な打撃を受けたはずだ。だが数か月過ぎても、引き下がる兆しはない。イランは米軍との交渉に応じる姿勢をみせる一方、最高指導者であるハメネイ師は「攻撃があれば地域戦争になる」と発言し、報復も辞さない姿勢だ。イランはまだかなりの短距離弾道ミサイルや長距離ドローンを保有しているようだ。
バンス副大統領は、トランプ大統領は合意を望んでいるものの、外交交渉は「自然な終焉を迎えたと判断する可能性」があると明言している。なんとも恐ろしい話だ。
すでに米国の軍事力を象徴する最強の存在である空母打撃群がアラビア海に展開し、攻撃の体制を整えているという。BBC検証チームによれば、多数の米軍機と給油タンカーがこの地域に到着していることが確認されたという。150便以上の米軍貨物機が、武器システムと弾薬を中東に輸送している。
しかし、そこまで強大な軍事力を展開して振り上げた拳は、イランの大幅な譲歩なしでは下ろすのが困難になるのではないか。トランプはTACO(Trump Always Chicken Out:トランプはいつもビビッて退く)なのか、それとも再び米国によるイラン攻撃はあるのか。米国の目的は何なのか。そんな不安が中東地域に確実に広がっている。この緊張を解く魔法のランプは見当たらない。

