若林栄四 ニューヨークからの便り

若林栄四(わかばやし・えいし)

1966年東京銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。シンガポール支店、本店為替資金部及びニューヨーク支店次長を経て勧角証券(アメリカ)執行副社長を歴任。現在、ニューヨークを拠点として、ファイナンシャル・コンサルタントとして活躍する傍ら、日本では株式会社ワカヤバシ エフエックス アソシエイツ(本邦法人)の代表取締役を務める。著書:、『大円高時代』(ダイヤモンド社)、『ドルの復活 円の失速』(ダイヤモンド社)、『勝つドル 負ける円』(フォレスト出版/大竹愼一氏との共著)『黄金の相場額 2005~2010』(講談社)、文庫版『黄金の相場額』(講談社+α文庫)、『「10年大局観」で読む2019年までの黄金の投資戦略』(日本実業出版社/2009年2月)など。

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いよいよ米国大統領選挙は、ヒラリー・クリントンとドナルド・トランプの対決となった。この両者は、歴史的にみて、最高度に嫌われている大統領候補である。Strongly unfavorable -- 強く嫌いのパーセンテージが、ヒラリーは37%、ドナルド・トランプに至っては53%となっており、あと6カ月でこれがどれほど変わるか。

過去の例では6カ月でこれが大きく動くことはない。これは53%の人はトランプには投票しないということであり37%の人はヒラリーに入れないということである。

もともと大統領選挙は民主党が有利というのが常識である。選挙人の数が過半数を採れば大統領になる仕組みで、選挙人の総数は538人であるから270人の選挙人を集めれば大統領になれる。

州別に選挙人の数が決まっており、その州の人気投票で勝利した候補が、州の選挙人を総取りするというWinner take allの方式である。おおむね州により民主党色が強い州、共和党職が強い州、選挙ごとにどちらかにスウィングする州が決まっている。

1992年から2012年までの選挙で常に同じ党の候補を勝たせてきた州の選挙人数をみると、民主党242、共和党102となっている。つまり世の中の激変がないとするならば、最初からこれだけの差が付いている。

つまり民主党はスウィング州19州の選挙人194人のうち28人をとれば大統領選勝利ということになるのである。フロリダはスウィング州の中で最大の選挙人数の29人となっており、フロリダが民主党勝利となるだけで勝負はついてしまう。

これだけのハンディを跳ね返してトランプが当選するのは至難の業である。もちろん不可能ではない。だから現実に選挙を行うわけである。より保守的な見方では、民主党の217はまず確実、共和党は191が可能性として高いとするレポートもある。

その場合でもスウィング州で2008年2012年とも民主党に入れた州の選挙人を合計すると90となり、217プラス90で307と圧勝することになる。

つまりよほどのことがないとクリントンが勝つというのが選挙6か月前の数字である。

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今回東京からNY への帰路、サンフランシスコに寄って、あるヘッジファンドを訪問した。

このヘッジファンドはいい加減なものが多い業界では大いにまともで、50億ドル程度のアセットを運用している。マネジャーはスタンフォードのビジネススクールを出たいわゆるブレイニー(BRAINY―頭の良い)なヘッジファンドマネジャーである。

彼は米国株には弱気で、昨年NYであった時、筆者と意気投合し、この株式相場は2016年に入ったら急落するだろうという、筆者の日柄の研究から来るタイミング論が現実のものとなり始めた今年1月には大変上機嫌でよくメールしてきたものである。

頭の良い人間だけに何にでもはっきりした理屈がほしい性質である。

1月20日で底値を見たNY株が3月に向けて大きく上昇し始めた現象についての彼の解釈はトランプ現象である。ジャネット・イェレンFRB議長が、昨年12月の利上げの際のタカ派的なスタンスから年明け一転してハト派に転換したのは、金利上げで株価が下落すると、その不満からトランプ支持者が増えて、トランプが大統領に近づく恐れが出てきたので、リベラル派のイェレンが急にハト派に転身、その結果株価が上昇したという解釈である。

また中国が人民元安からわりと素直に経済改革を推進することにコミットしたのも、ルー財務長官がG20でアジアの連中に、あまり通貨安政策ばかり推進すると、これもトランプのバッシングの対象になり、トランプ大統領の出現に力を貸すことになるので、やめた方が良いと忠告したということになっている。

米国の金融当局はトランプの影におびえたり、あるいはトランプを出しにして、ほかの国を説得したりと大童でトランプ現象を政策に投影させてきた。まさに破竹の快進撃であったトランプに対する危機感は政府当局者の中では非常に強いものであった。

ところがそのトランプがウィスコンシン州でクルーズに破れ、共和党大会までに過半数の代議員の獲得がやや難しくなってきた。その上に失言が相次ぎ、この選挙戦で最悪の2週間といわれるほどトランプはメディアや、ほかの候補者から袋叩きにあっている。

そうした事情を勘案するとトランプ現象で足踏みをしていた米国株が、トランプの脅威が希薄化するにつれて、本来の暴落商いに入ってくるのではないかというのが、このヘッジファンドマネジャーの見方である。

トランプ現象で1月下旬以降の株式相場の戻りが演出されたかどうか筆者は知らないが、確かに4月は重要な日柄を迎えて、相場がいつ本来の暴落商いに戻っても不思議ではない。

昨年8月、今年1月と2度15000ドルのロウを見たNYダウには、結構強気の見方をする人が増えている。しかし日柄でみればこれからである。3度目の急落は15000ドルでは止まらないだろう。しかも相場は急落前夜の様相を示している。

トランプの凋落と米国株の下落が機を一にするという皮肉はよく考えられた喜劇である。

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米国大統領選挙が佳境に入りつつある。

共和党はトランプのようなとんでもない偽物が大統領候補として指名される可能性が高まっている。まともな共和党のエスタブリッシュメントは何とかこの形勢を変えてまともな候補に指名を向かわせたいと絶望的な努力をしているが無駄な努力のようだ。

トランプが大統領になることはないと思うが、もしなったら3ヶ月で国民から大ブーイングとなるだろう。米国の恥である。全く中身のない演説を延えんとやり、その中に何とも言えない下品な言葉を使って、人々を罵倒するような輩である。

大統領選挙での共和党の混迷は、恐るべきものだが、もう一つの三権分立の基本である司法の分野でも共和党は苦境に立ちつつある。

米国の最高裁判所判事は9人で構成されており、従来5人が保守派、4人がリベラルと色づけされてきた。ところがその保守派の重鎮であるスカリア判事が79歳で亡くなってしまった(2月)。

当然オバマ大統領がその後任を指名し、それを上院でコンファームすれば新しい判事が決定する。オバマ大統領は当然のようにリベラル色の強い判事を指名すると思われる。

それに対して、共和党上院のミッチェル院内総務は、来年新しい大統領が決まってから判事を指名するべきだとして、オバマの指名を拒否する構えである。オバマがリベラル系の判事を指名して最高裁判事がリベラル5対保守4という構成になり、すべてのリベラル・アジェンダが最高裁で通ってしまうことを共和党は恐れている。

しかしオバマの任期がまだ1年近く残されている中で、大統領が憲法上保障されている権利である最高裁判事の指名を遅らせようというのはどう考えても無理な話である。

この話を議会が強行すると、議会によるオブストラクション(妨害)の批判が高まる恐れがあり、それがひいては、大統領選挙と並行して行われる議会選挙に悪影響を及ぼす恐れもある。

一部共和党上院議員の中にはこれを強行すると、上院での共和党の過半数支配が崩れるとして、オバマの指名した判事を、議会で少なくとも審議すべきだという当たり前の意見をなす人もいることはいる。

共和党は最高裁の構成がリベラル有利になると、これから長期間(最高裁判事は罷免されない)に渡ってリベラル法廷(10-20年)となるので、これを何とか防ぎたい。

トランプの登場も頭が痛いが、スカリア判事の死亡も難しい。共和党はどうしようもない袋小路に追い込まれつつある。大きな政治潮流はすでに共和党から民主党リベラルに移行中である。スカリア判事の死亡はまさに天の配剤であり、一旦駄目になった流れは天も味方せずということか。

※1establishment 既存体制。この場合共和党の守旧派、主流派を意味する。

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1946年から1964年の間に生まれたアメリカ人は77百万人でベイビーブーマーと呼ばれ、第2次世界大戦後の米国経済の繁栄の基礎となった労働者であり消費者であった。日本の団塊の世代よりはるかに大きい割合を米国人口の中で占めている。

1946年生まれは今年70歳に差しかかる。現役を引退して、リタイアメントに入っている人が多い。この世代は毎日一万人の割合で、リタイアメントに入っていく。それが18年間続くことになる。

この人たちが、消費者として最も威力を発揮したのは40-50代の働き盛り、稼ぎ盛りであった2000年代(2000年ー2009年)である。その後は徐々に引退する人も出てきて、今や毎日大量の引退者が出始めている。

当然の結果、米国全体の消費活動は勢いを失ってくる。ある調査会社の調べでは、この世代の持つ資産総額は46兆ドル(5400兆円)といわれている。この大量のカネも徐々に減少に転じることになろう。

それがリタイアした人たちの生活費で消えていくのか、それとも持っている資産の資産価値が下落することにより消えていくのか。両方だが、少なくとも今から米国デフレの最悪期である2022年までの6年間は基本的に資産価値が大幅下落することで、やり過ぎた米国経済の決算を迫ってくるはずである。

昨年11月のインサイダーによる株の売却(経営者、従業員による持ち株の処分)は史上最高に近い巨額であったらしい。インサイダーはボーナスを株でもらうことが多い。したがって株価を上げるために経営者は自社株買いを増やすという、まやかし行為を行うことにより、インサイダーの私腹を肥やすことに專念してきたわけだ。

それが昨年8-9月に株の大きな下落にあったことで肝を冷やしたのか、10-11月の戻り相場を利用して一斉に持ち株を売ったということらしい。老後の資金である、持ち株の価値が大きく落ち始めたら、だれも我慢できる人はいない。

明らかにやり過ぎた過去40年間のツケを一気にこれからの6年間で払わされることになるのだ。もうすでにその株価の崩落は始まっている。FRBも利上げの間違いにもうすぐ気がつくだろう。

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日米の株価は年明け後、予想通りの急落の展開となった。しかし8日発表の米国12月の雇用統計は予想を上回る数字で米国経済の好調さを見せつけた。これを見てまた米国利上げの話がメディアを中心にやかましくなりそうだが、大局を見る限り、この米国の好調は長続きしないだろう。

それよりも株価が、もう上がらなくなってきている。どういうことかというと、世界のマネーの量が、1970年台からの資源バブルで膨らみに膨らみ切ったものが逆に減少に転じているということだろう。実体経済に対するマネーの量が大きくなりすぎた結果資源バブルが破裂したというのが、今の状況である。米国経済が好調かどうかは二の次の問題である。

問題は膨らみ過ぎたマネーがいつまで縮小するのか、またその過程で、いつ独り勝ちといわれる米国経済に、悪影響を及ぼしてくるのかである。資源バブルに踊った本家本元の米国が資源バブル破裂に無傷でいられるはずはないだろう。各月ごとの雇用統計に一喜一憂するのではなく、本質である資源バブルの破裂がどうなるかがポイントなのである。年初来中国経済の不調をはやして世界株価が動揺しているが、確かに中国株価の消長は先進国経済にそれほど大きく影響を及ぼすことではない。

しかし物事の本質である資源バブルの破裂という観点からすれば、これは世界の株式相場にとって重要な出来事である。中国経済が果たした最後の資源バブルの担い手としての役割がますます小さくなることで、世界のマネーの縮小がますます深化することを意味するからである。

世界デフレの動きは世界インフレの頂点であった1981年9月からの40年半の日柄である2022年まで継続する。むしろこれから本格的にデフレが悪化することが考えられる。そのマネー減少が一番大きくあらわれるのは、株式相場の下落による時価総額の減少ということになるだろう。

米国をはじめとする先進国の株価下落はこれからである。

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