若林栄四 ニューヨークからの便り

若林栄四(わかばやし・えいし)

1966年東京銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。シンガポール支店、本店為替資金部及びニューヨーク支店次長を経て勧角証券(アメリカ)執行副社長を歴任。現在、ニューヨークを拠点として、ファイナンシャル・コンサルタントとして活躍する傍ら、日本では株式会社ワカヤバシ エフエックス アソシエイツ(本邦法人)の代表取締役を務める。

【著書】
・黄金の相場予想
・世界一やさしい図解FXの教科書
・異次元経済 金利0の世界
・富の不均衡バブル
・etc

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マーケットの警告

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6月9日の金曜日のマーケットは大荒れであった。

実は6月8日を注目していた。

ECB金融政策、コーミーFBI長官の議会証言、英国総選挙と材料が目白押しであったからである。

さらに6月8日は昨年11月4日のトランプラリーの起点のNYダウ17883ドルの安値からの31週目(216日目--- 54×4)だったからである。

普通の相場は31週間も上がればとりあえずの高値を迎える。トランプラリーが普通の相場なら、ここで天井を打つ可能性が非常に高いとみていた。

コーミー証言の内容は、水掛け論(英語ではHE SAID、SHE SAIDと言う)で決定的なものは出なかったが、これからトランプの苦戦を予想させる出来事ではあった。

だから相場がどうなるということではなく、このコーミー証言がこの31週目のタイミングで出たことが大事なのである。

相場は材料で決まると考えている多くの市場参加者にとって、6月9日の高値と言うのはコーミー証言による乱高下であり、もし筆者の予想する如く、これから米国株価が大幅に下がれば、コーミー証言によりトランプの脆弱性が暴露されたという解釈になるからである。

コーミー証言と株価は全く関係ないのだが、材料主義の人には、恰好のきっかけを提供することになる。つまりトランプが危ないから株価が下がったということである。

そうなると株価は、これからのトランプの片言隻句をとらえて材料にし、さらに株を売り込んでいくということになるのである。あるいはロシアゲートが実態以上に大きな意味を持つかのように株式市場が新たなダイナミックスを導入することになる。

この新たなダイナミックスは滑稽ではあるが、マーケットやメディアは大まじめでこれを追求する。この問題はすぐに解決する問題ではなく、延々と長続きする可能性がある。

どこかでこのダイナミックスの賞味期限が切れて、相場がこれに反応しなくなる。

そうすると今度は、ロシアゲート問題はマーケットの関心外に置かれ、次のマーケットの主要関心事を追求し始める。

相場の材料と言うのはその程度のもので、それ以上でもそれ以下でもない。

ロシアゲートも本当は特別検察官のもとで地道に捜査されるが、マーケットの話題としては、議会が夏休みに入る8月には一旦賞味期限が切れる。

それまでの間に株式相場がどれぐらい下落するか。10%ぐらいの下落は大いに考えられる。

トランプに関係なくハイテク企業の株価はバブルの様相を呈している。

アマゾン、アップル、グーグル、マイクロソフト、フェイスブックの5社の時価総額の合計は2.9兆ドル(320兆円)に達している。本格的な株式市場の崩壊は来年だとみているが、その前にこの数ヶ月間でその予行演習のような急落場面を演出するだろう。

1929年の大暴落以前にも小規模の急落を数回繰り返している。


"マーケットは警告する"は無能の大統領を選んだ米国にふさわしい事件である。

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コミー長官更迭の意味

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トランプがなにをしても驚かなくなっていた米国民だが、まだ驚かすことが残っていた。

FBI のコミー長官の首を切ったのである。

その理由はほとんどない。ただトランプが、彼を嫌っていたことはどうも確からしい。

"ShowBoating"とトランプは言っているが、要するにマスコミーに対して自分と同じほどの影響力をもっている人間の存在が耐えられなかったのだろう。

まさに好き嫌いで簡単に首を切られないために、FBI長官は10年の長い任期で任命される。コミーはまだ4年目に入ったところである。

こんなところで好き嫌いで首を切られてはたまらないし、そんなバカなことは、大統領はしないというのが常識である。だから首を何故このタイミングで切ったかということで、メディアは当然ロシアゲートがだんだん包囲網を狭めてきたからだと解釈している。

トランプが2016年の選挙でロシアの暗黙の協力を得たのは常識だが、果たして、事前にキャンペインの首脳部とロシアが裏で合意があったのではないかというのがロシアゲートである。FBI の幹部が今週議会に対して、さらにこの件を調査するための予算措置をよろしくと頼んだと言われており、それにトランプが怒ってコミーの首を切ったとも言われている。衝動的なトランプ劇である。

まだ1月20日の大統領就任時に首切りをやるのなら納得できるが、なぜこのタイミングなのか。

一部のメディアは丁度1973年10月にニクソン大統領がウォーターゲートの特別検察官の首を切ったこと(土曜日の大虐殺といわれている)でさらに墓穴を掘り、最終的に弾劾必至となり、しょうがなく辞任に追い込まれた事件とアナログ(類似、酷似)していると言っている。

(Constitutional Crisis)-- 憲法の危機の再来である。

ウォーターゲートは1973年前半から調査が始まり、その時ちょうど米国の株価が天井を付け下がり始めるタイミングであった。

憲法の危機で相場は大幅に下落して1974年10月には約50%の下落を見るまで下がった。

トランプはロシアゲートとは何も関係がないかもしれないが、如何にも今FBI 長官の首をを切るのは怪しい、後ろ暗いところがあるからだろうとなっている。

これからの調査がさらに厳しくメディアに監視されることになりそうだ。

株式市場は23年ぶりの株式恐怖指数(VIX)の10割れで、ほとんどノーリスクという一般的な思い上がり(COMPLACENCE)の極致にある。まさにその足元を狙って政治危機が到来して1973-74年の株価暴落の再来となるか、黄金分割の大事な42-3年の日柄が丁度到来している。

歴史は繰り返すかどうか。

 

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< お知らせ > 6月17日(土)赤坂アークヒルズにて若林栄四さん、川合美智子さんが講師として参加するセミナーが開催されます。

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トレードトレードスタッフからのお知らせです。

6月17日土曜日にトレトレのコンテンツでもおなじみの、若林栄四さん、川合美智子さんのお二人が講師として参加する為替セミナーが赤坂アークヒルズで開催されます。

海外投資で地政学 リスクから資産を守る
6月17日土曜 13:30~ 赤坂アークヒルズクラブ
 
セミナーは3部構成で行われ、若林さんと川合さんが参加するのは16:30~の3部目。マーケットから発信されるヒントを元に、1時間30分にわたり為替セミナーを行います。

また、今回のセミナーでは他の講師として東京外為市場の伝説外為ディーラーの酒匂隆雄さんや、ペンタゴンチャートでおなじみ、チャートの鉄人、川口一晃さんなど迎えた豪華なセミナーとなっています。

定員に限りがありますので興味のある方はお早めに申し込んでおきましょう。

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マーケットを左右する米国長期金利のトレンド

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FRBが量的緩和(QE)で買い上げた連邦債と住宅担保証券(MBS)を少しずつ減額していくことを考えており、2017年後半からそれを実施したい意向であることを、FOMCの議事録で明らかにした。

リーマンショック以前FRBのバランスシートは8,000億ドル程度であったが、数次のQEで3兆7千億ドルほど債券を買い上げた。

短期金利は既に3度にわたって引き上げたが、長期金利に影響を与える、この債券持ち高を減少させることはまだやっていない。

現在でも満期が来た債券については同額買い上げている。それを満期到来時、再投資しないことにより膨らんだバランスシートを徐々に減少させようというわけだ。

FOMCの議事録でこれを見たマーケットの反応は区々である。

これは2013年にバーナンキが発表したQEのテーパリング(買い入れ額を徐々に減少する計画)に匹敵するか、それ以上のインパクトを市場に与えてもおかしくない。

テーパリング発表の2013年5月から9月までの4ヶ月間で長期金利は約1%上昇、10年物は3%を付けるほどの金利急騰ぶりであった(2012年7月は1.38%であった)。すなわち1年2ヶ月で1.6%の金利上昇となった。テーパリング・タントゥラム(癇癪)と呼ばれている。

今回はまだその影響がはっきりしないが、長期金利に与える影響は今のところほとんどない。2.33%の金利が一時的に2.38%辺りまで上昇したが、4月6日現在では2.34%とほぼ発表以前と同じ水準である。

これは何を意味するのか。本来なら急騰してもおかしくない長期金利がほぼ不変であり、12月15日に付けた2.639%の高値に比べると2度の短期金利上げと、FRB による債券不買のニュースを見ても金利が12月15日より0.3%も低いというのは不可解である。

あえて言えることは、金利はもう上がらない時間帯に入ったということしか考えられないだろう。

毎月の米国雇用統計で強い数字が出ても、FRBが金利を上げても、何をしても金利が上がらないというのは金利上げトレンドが終わったということでしか説明できないだろう。

少なくともここ数ヶ月はどうもその金利下げトレンドの中にいることは確かだろう。

そうこうしているうちに、ファンダメンタルズで金利下げを補強するニュースが出たりするものである。

今年のマーケットのすべてをコントロールする米国長期金利の動きに要注目である。

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主役は金利ではなく株価ではないか

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いよいよ3月の米国利上げが、確定的になりつつある。

その利上げの予想に、当然のように米国株価も調整している。

昨年12月の利上げの時は、米国株価はほとんど調整なしで高値を追いかけ、さらに1月に入っては、もう一段の上昇となって今日に及んでいる。同じ利上げでもマーケットの対応は少し違うようだ。

そういえば、原油のマーケットも1月に高値56ドル台を付けたが、ここへきて50ドルを割り込むなど、やはりデフレ的な圧力が世界経済を押し下げようとする力は働いている。
OPECによる減産合意は世界的なデフレ圧力のもとで、原油価格を支える力を失いつつある。人為的な合意は所詮神意であるデフレには敵わないということだろう。

ひそかに注目している豪ドル・円相場も均衡点である86-87円のレンジから下抜けるように見える。米国金利がさらに上昇しようとしているにもかかわらず、デフレ圧力が強まっている証拠ではないかとみている。

そうなると米国金利が上昇確実だから、株価が調整するのは当たり前というのも疑わしくなってくる。主役は金利ではなく、株価なのではないか。
つまり株価が下落するタイミングに入ったところで、誰も疑わない株価調整の材料らしきものがFRBの金融政策ということではないのか。

その辺りがはっきりするのは、FOMCの決定が明らかになる3月15日以降だろう。

短期金利はFRBがコントロールできるが、長期金利はコントロールできない。

3月利上げの後、米国財務省証券10年物の利回りが、前回12月利上げの時の最高水準である2.639%を持続的に超えるかどうかがポイントになりそうだ。

昨年12月15日の金利ピーク、2.639%は、2008年12月のFOMCによるZIRP (ZERO INTEREST RATE POLICY ゼロ金利政策) 採用からの
ちょうど8年-96ヶ月(95.5ヶ月が黄金分割382÷4である)目に出ているので、この水準を超えられないとなると、すでに長期金利の戻り天井を12月に見たという見方が可能になる。

ここ1週間は要注目である。

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