日米協調介入。
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FOMCと日銀会合はともに政策金利を据え置いたものの、その後のドル円相場は急変。市場では日本の為替介入に加え、米国による協調介入との見方が広がった。
日米当局は今後も円安是正へ動くのか。協調介入の背景や市場への影響、ドル円相場の今後を展望する。
注目のFOMC.と日銀政策決定会合が終了し、両者共に事前の市場予想通りに政策金利の据え置きが決定された。
只、前者に於いては9対3、後者に於いては8対1の多数決で決定され、満場一致ではなかった。
先日の議会証言では“インフレ抑制を許容することは決してしない。”とタカ派的な見解を示していたウォーシュFRB.議長は、会合後の記者会見で“インフレに関し、心強いデータがいくつか出ており、暫く状況を注視していく。8月27~29日に開催されるジャクソン・ホールで重要な問題を提起したい。”と述べて、これがややハト派的な見解と取られて、市場で高まっていた早期利上げ期待は後退し、市場はややハト派的金利据え置きと理解した。
日銀政策決定会合後の記者会見で植田総裁は、“金融環境が緩和的すぎると判断すれば、利上げのペースを速めることもあり得る。”と強調して物価の上振れリスクが高まっているとの認識を示し、市場はややタカ派金利据え置きと理解した。
日米中央銀行の政策決金利は据え置きとなり、無風となったが30日木曜日の日本時間午後10時から1時間足らずの間にドル円相場が163円から158円割れまでの凡そ5円の急落を見せ、ニューヨーク市場に於いて我が国金融当局のドル売り&円買い介入が行われたことと推測されたと共にニューヨーク連銀によるレート・チェックの噂も流れて市場に緊張が走ったが、市場はこの後に日米協調介入が行われるであろうことは知らず、31日金曜日の日本時間正午前後には160.86迄大きく戻す展開となった。
そしてニューヨーク市場が始まる前の日本時間金曜日午後10時(ニューヨーク時間午前7時)頃に米国財務省がニューヨーク連銀を通じて複数の銀行に対して、“7月31日に円相場に介入する可能性があるとして、今後の措置に備えるよう通知した。”とのニュースが流れてドル円相場は160円台ミドルからじりじりと値を下げて一時158.15迄下げた後市場の引けに掛けて159.20迄戻し、その後介入と思しき大量のドル売りで引けに掛けてたった30分の間に159.20から157.52迄急落すると言う荒い動きを見せて週を終えた。

取引終了後に判明したのは、米国財務省の要請を受けてニューヨーク連銀がユーロ売り&円買い介入を行ったことである。
これを受け、ユーロ円は木曜日の高値187.44から金曜日には安値181.84迄大きく下げることとなった。
週末から週明けに掛けては今回の介入に関して様々な報道が為され、30日木曜日に“円は著しく過小評価されている。”と述べたベッセント米財務長官は、“更なる円の協調介入を躊躇わない。”と述べ、片山財務相は今朝の記者会見で意気揚々と、
-日米財務省、31日に協調して円買い介入を実施した。
-協調介入は2025年9月発出の“日米財務大臣共同声明”に基づき実施された。
-最近見られた円の過度な変動や無秩序な動きに対処したもの。
-日本の財務省は米財務省との緊密なコミュニケーションを維持し、さらなる協調介入を実施することも躊躇しない。
-日本は将来的にFRB.のレポ・ファシリティーの活用を予定。
と述べた。
最後の“レポ・ファシリティーの活用を予定。”は大変意義深い。
レポ・ファシリティーとは、FRB.が2020年3月31日に外国の中央銀行にドルの流動性を供給する為に開設された物で、これにより日銀は一時的に米国債をドルに交換することが可能になり、公開市場での証券(米国債)売却に代わりドルの調達手段が提供されたことを意味する。
筆者が一時触れたFRB.とのスワップ協定よりもより簡単に使えるドル調達手段で、これで理論的には我が国外貨準備(約1兆3000億ドル)を使うことなく(米債券市場で売ることなく)、介入資金を調達出来ることになる。
今回米財務省が何故ドル円ではなくユーロ円で円買い介入を行ったのかは分からないが、面白い話が有る。
トランプ大統領は時々キャンプ・デービッドで閣議を開き、大手通信社の記者も招かれるが、何とロイター通信社の記者が、ベッセント財務長官がトランプ大統領に対して、
-To do.=為すべき事。
-Buy Japanese Yen.(JPY.)=日本円を買う。
-$5~10 bil.=50~100億ドル。
と書かれたメモを写し、それを公開した。

凡そ日本では考えられない仕業であるが、その後ベッセント財務長官が否定しないと言うことは、あながち嘘ではないのであろう。
(まさか、やらせではないと思うが….)
未だ米財務省がこれだけ巨額のドル円を打った形跡は無いが、トランプ大統領は今回の協調介入に関して以下の様な恩着せがましい発言をした。
-米国が日本による円相場の下支えを支援しているのは友好の証で、世界経済を支援するためだ。
-日本の通貨は弱含んでおり、少し支援を求めていた。我々は常に日本の味方だ。日本は我々に対し、真珠湾攻撃を除いて、非常に良くしてくれてきた。世界経済にとっても良いことだ。
ちゃんちゃらおかしいが、まあ今回の協調介入に関してトランプ大統領も了解しているという事は心強い。
財務省の三村財務官も久々に口を開き、以下のコメントを放った。
-為替介入についてはノーコメント。
-精神的支援を超えるものを米国当局からいただいている。
-通貨政策の担当者として、金融政策と緊密に連動しながら対応したい。
-足元の為替について、特に申し上げることはない。
-さらなる協調介入に躊躇しない。
-今回の協調介入、日米通貨同盟の完成形。
-引き続き、日銀の金融政策としっかり連動しながら対応したい。
今回の日米協調介入を受けて、投機の雄シカゴ・IMM.の連中がどう動いたか、或いはどう動くかが注目される。
彼らを含む投機筋の間では、Don’t fight the Fed.=(ニューヨーク連銀とは戦うな。)言い換えれば、“ニューヨーク連銀のやる事に逆らうなと。”言う格言めいた物が存在する。
これは特にFRB.が行う金融政策には逆らうなと言う事だが、為替に当てはめても良かろう。
そのシカゴ・IMM.であるが、介入前の7月28日付のデータしか見られず、恐らく現在はポジションは減らしていると思われるが、先週も前週から約8億ドル相当のドルを買い増して、約125億ドルの買い持ちとなっていた。


現時点でどの程度のポジションとなっているかは不明であるが、これから夏休みに向けてTrend follow.=(順張り)を得意とする彼らがこのドルの急落を見て、更にドルを買い増すとも思えないが、我が国個人投資家(逆張りを得意とする。)は、案の定ドルが急落した30日(木)からドテンして前日29日のドルの売り持ち57%、買い持ち43%から、8月2日付でドルの売り持ち32%、買い持ち68%へとドルの買い持ちへとドテンした。


(外為どっとコム社のホーム・ぺージから参照。)
筆者に言わせれば、協調介入の怖さを知らないとしかい言いようが無い。
ゴールデン・ウィーク介入で12兆円弱の大規模介入をして、その賞味期限(介入をし始めたレベルまで戻る時間。)は、ひと月半しか持たなかったが、今回は米国の協調もあって同じ轍を踏むとは思えない。
基本的には無尽蔵とも言える介入資金、そして米国の後押しも有って矢張り160円辺りを“片山シーリング。”として、其処を何とか超えない様に努力するであろう。
霞が関迄出掛けて、“あと数兆円を使って155.00を切れば、あっと言う間に150.00を切りますよ!”と進言したいものだ。
今週のテクニカル分析
今週のテクニカル分析の見立ては下サイドをブレークしたので、当然更なる下落を見込む。
今週のレンジ


ドル円:150.00~157.00
ユーロ円:175.00~182.00

酒匂隆雄 (さこう・たかお)
酒匂・エフエックス・アドバイザリー 代表
1970年に北海道大学を卒業後、国内外の主要銀行で為替ディーラーとして外国為替業務に従事。
その後1992年に、スイス・ユニオン銀行東京支店にファースト・バイス・プレジデントとして入行。
さらに1998年には、スイス銀行との合併に伴いUBS銀行となった同行の外国為替部長、東京支店長と歴任。
現在は、酒匂・エフエックス・アドバイザリーの代表、日本フォレックスクラブの名誉会員。
公式ブログ:酒匂隆雄が語る「畢生の遊楽三昧」
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