酒匂隆雄の「為替ランドスケープ」 

果断な措置。

2026/07/21

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ドル円は162円前後の狭いレンジで膠着が続く一方、財務相は「必要とあれば、いつでも果断な措置を取る」と発言。従来より踏み込んだ表現は、市場への一段強い介入警告との見方もある。ドル買い・円売り勢とドル売り・円買い勢の攻防が続く中、為替介入のタイミングと今後のドル円相場を展望する。

一向に安定化しないイラン情勢に対する不安(ドル高&円安要因)と、我が国当局に対する介入警戒感(ドル安&円高要因)が拮抗して、ドル円相場が一向に動意を見せない。

先週のレンジは162円を挟んで高値162.54、安値161.60の狭い値幅に留まった。

ドル・ブル派(ドルに強気な見方を持つプレーヤー)と、ドル・ベア派(ドルに弱気な見方を持つプレーヤー)とのせめぎ合いが続くが、こうなるとドル・ベア派は日々のスワップ・コスト(高金利のドルをショート、低金利の円をロングにすることによって、日米短期金利差である年率約4.3%を払わなくてはならない。4.3%を日々に換算すると約0.01178%となる。)が負担となり、ドルのショート・ポジションをキープすることに躊躇いを感じ始める。

逆にドル・ブル派は金利差分のスワップ・ポイントを日々享受出来るので、気は楽である。

同時にドル円が上昇すると所謂キャピタル・ゲイン(160円で買ったドルが162.50になると、2円50銭のキャピタル・ゲインとなる)を手にすることが出来るので、一石二鳥となる。

では何故、日々のキャリーング・コストが掛かるのにドルをショートにするかと言うと、ドルが下落すると日々のスワップ・コストを大きく上回るキャピタル・ゲインを瞬時に手にすることが出来るからである。

前回の介入で4月29日から5月1日のたった1日の間に、160.45から155.57まで下げたが、これは

(160.45-155.57)=4.88÷160.45≒3%となり、極端な話たった1日でスワップ・コストの約255倍(3%÷0.01178%)の利益を上げることになる。

まあ、これはあくまでも机上の論議でしかないが、要するに日々のスワップ・ポイントにプラスしてキャピタル・ゲイン(ドルが160円から165円まで上昇すると願っている。)を狙ってドルをロングにするか、或いは日々のスワップ・ポイントを払ってでも大きなキャピタル・ゲイン(介入により、ドルが162円から155円まで下落すると願っている。)を狙ってドルをショートにするかのせめぎ合いが続いている訳である。

前者の筆頭は勿論シカゴ・IMM.

彼等も流石に介入を警戒してか、前週の25億ドルの売り戻しに続いて前週も僅かながら(約1億ドル弱)ドルを売り、7月14日時点で約94億ドルの買い持ちとなっている。

我が国の個人投資家であるが、業界最大手の外為どっとコム社のデータによると、前週の買い比率49%、売り比率51%の拮抗状態から、7月20日付けで買い比率38%、売り比率62%へと売り持ち比率を引き上げている。

(外為どっとコム社のホーム・ページより参照。)

先週、片山財務相は17日の閣議後記者会見で、足元で162円台前半の円安ドル高水準で推移する外国為替市場について“必要とあれば、いつでも果断な措置を取る。”とコメントしたが、“果断な措置。”と言う言葉は初めて聞く。

辞書で調べると、

―果断=物事を思い切って行い、躊躇わずに決断・実行する事。また、そのさまを意味する。

 ビジネスやリーダー像を語る場面で、“決断力がある。迷わず行動する。”と言う肯定的な評価として使われる。

とある。

まあ、“介入は何時でも躊躇わずにやりますよ。”と言うメッセージか?

個人投資家はこの言葉を重く受け取ったのであろう。

財務省の口先介入には強度の差が有り、

-為替市場の動向を注視している。=これはまあ当たり前の話でどうってことは無い。

-行き過ぎた動きには適切に対応する。=そろそろ相場の動きが気になりだしたと言う軽い警告。

-あらゆる手段を排除せず。=いざとなると介入をしますよとの強い警告。

-断固たる措置を取る。=何時でも介入しますよとの最終警告。

そして今回の

-果断な措置を取る。

となり、断固たる措置よりも強い最終警告と見て良かろう。

個人的には、“やるなら、早くやれよ。狼少年になりますよ。”と言いたいところであるが、まあ皆さん頭脳明晰な方々ばかりだから、ベストのタイミングを計っているのであろう。

ドル・ベア派の一人として、依然として今は我慢の時と心得る。

今週のテクニカル分析

今週のテクニカル分析の見立てはレンジを想定。

上サイドは163.50、下サイドは161.50のブレークに注意。

其処を切ると更なる上昇か、下落が起きる可能性が有る。

今週のレンジ

ドル円:156.00~163.00
ユーロ円:180.50~186.50

酒匂隆雄

酒匂隆雄 (さこう・たかお)

酒匂・エフエックス・アドバイザリー 代表
1970年に北海道大学を卒業後、国内外の主要銀行で為替ディーラーとして外国為替業務に従事。
その後1992年に、スイス・ユニオン銀行東京支店にファースト・バイス・プレジデントとして入行。
さらに1998年には、スイス銀行との合併に伴いUBS銀行となった同行の外国為替部長、東京支店長と歴任。
現在は、酒匂・エフエックス・アドバイザリーの代表、日本フォレックスクラブの名誉会員。


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