鈴木雅光の「奔放自在」

退職金デビューほど危険なものはない

2026/05/18

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経済ジャーナリストの鈴木雅光氏が、「退職金で投資デビュー」の危うさに警鐘。まとまった資金を老後に投じることのリスクと、暴落時に起こりやすい“最悪の判断”について解説します。
この記事で分かること: 退職金投資の注意点/暴落時に避けるべき行動/資産形成を早く始める重要性

最近、同世代の人から「退職金で投資を始めたい」という相談というか、話をされる機会が増えています。私の世代はバブル入社組で、入社した年に日経平均株価が3万8915円という高値をつけた後、バブル崩壊による「失われた30年」を経て、今に至っています。現役時代の大半が不景気だった世代でもあります。

それがここに来て、急に株価が上昇し始めたものだから、何となくソワソワするのでしょう。最近は「FOMO」などという言葉も、よく目にするようになりました。

FOMOとは、「Fear Of Missing Out」の略語です。もともとは新しい情報や周囲の行動についていけないと、社会から置いてきぼりになってしまうという思いから、不安や恐怖を感じる状態のことですが、転じて投資の世界においては、投資家が何か特定の出来事やトレンドを見逃したり取り残されたりすることを恐れ、相場の上昇に乗り遅れまいとする心理状態を指します。

恐らく、そんな気持ちでソワソワしている、還暦間際の方が増えているのかも知れません。しかし、今まで投資をした経験を持たず、いきなり投資を始めるのは危険です。

よく資産運用の専門家が、「これからは人生100年時代ですから、定年になってから投資を始めても遅くありません」などと言いますが、この言葉を真に受けてはいけません。2024年の簡易生命表によると、65歳の平均余命は男性が19.47年、女性が24.38年なので、時間的な余裕は多少ありそうですが、よく考えてみると結構、危険度が高いのです。

一番の問題は、暴落に直面した時の対応策が限られることです。「老後の時間は20年前後もあるのだから、暴落に直面しても、回復するまでの時間的な余裕はある」という反論があるのは、もちろん承知のうえでのことです。

過去、S&P500が暴落し、底値から暴落前の高値に到達するまで、どのくらいの期間がかかったのかを調べると、1987年のブラックマンデーが1年9カ月。2000年のITバブル崩壊と同時多発テロが4年7カ月。2007年のサブプライム&リーマンショックが4年4カ月でした。その期間を考慮すると、定年後から投資を始めて暴落に直面したとしても、回復を待つ時間があるように思えます。

しかし、投資未経験者が暴落に直面した時、果たして平常心を保つことはできるでしょうか。

たとえば2020年2月のコロナショック時に、S&P500は暴落前高値から暴落後の底値まで、約30%も値下がりしました。その他、歴史的な株価暴落時における、暴落前高値から暴落後底値までの下落率は、次のようになります。

ブラックマンデー・・・・・・▲33.25%

ITバブル&同時多発テロ・・・・・・▲49.15%

サブプライムショック&リーマンショック・・・・・・▲51.93%

最悪、投資している金額が半分になるリスクもあるということです。これだけのリスクがあることに耐えられるかどうかを、自分自身に問わなければなりません。仮に退職金が2000万円だとして、それを投資に振り向けた場合、最悪のケースを想定すれば、1000万円まで目減りする恐れがあるということです。

このような状況に直面したら、多くの投資未経験者は、「このまま二度と元の価格に戻らないのではないか」と恐れるでしょう。

でも、あの「100年に一度の暴落」とまで言われたリーマンショックでさえ、4年と4カ月で暴落前の高値を回復できたのです。つまり持ち続けることが出来れば、いつかは回復してリターンを享受できるはずですが、暴落の渦中にある人にとっては、少しでも損失が増える前に売却して、楽になりたいと思うのでしょう。焦って売却してしまう人も少なくないのです。

暴落してもいつかは戻る。暴落に直面した時、こう思えるようになるには、何度かの暴落を実際に経験する必要があります。「投資は若いうちに始めるべき」と言われるのは、時間的余裕があるのはもちろんですが、暴落から回復までの過程を幾度か乗り越えることで、暴落に対する耐性が出来るからです。この耐性を持たないまま暴落に直面すると、底値で売却、もしくは解約するという最悪の選択をしてしまいます。

もうひとつ、退職金デビューには大きな問題があります。それは、退職金運用には出口戦略が伴うということです。どこかの時点で運用資金を売却して、生活費に充当しなければなりません。もし、出口を模索しているタイミングで暴落に直面したら、現金化できる資金は大きく目減りしてしまいます。

もちろん、一度に解約するのではなく、月々の生活に必要な額だけを引き出し、残りは運用し続けることによって、損失が回復するのを待つという手もあります。

しかし、これにも大きな落とし穴があります。大きな評価損を抱えた状態で、しかも生活費としてそこから一部を取り崩しながら、暴落前の評価額まで戻せるかというと、これも結構難儀です。

退職金を用いた投資デビューは、できるだけ避けるべきですし、だからこそ資産形成は、若いうち始める必要があるのです。

鈴木雅光(すずき・まさみつ)

金融ジャーナリスト
JOYnt代表。岡三証券、公社債新聞社、金融データシステムを経て独立し(有)JOYnt設立し代表に。雑誌への寄稿、単行本執筆のほか、投資信託、経済マーケットを中心に幅広くプロデュース業を展開。


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