家計部門保有金融資産の額は2385兆円に
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経済ジャーナリストの鈴木雅光氏が、日本銀行の資金循環統計をもとに、家計部門保有金融資産が2385兆円に達した背景を分析。現預金比率の変化や投資信託・株式への資金流入、「貯蓄から投資へ」の現状と課題を分かりやすく解説します。 この記事で分かること:家計金融資産2385兆円の概要/現預金・株式・投資信託の最新動向/「貯蓄から投資へ」の実態と課題

6月25日に日本銀行が発表した、3月末時点における資金循環統計によると、家計部門が保有する金融資産の総額は、2385兆6622億円となり、前期比では微減となったものの、前年同期比では7.14%増でした。
今回の数字でいくつか注目される点を考えてみましょう。
まず、家計部門保有金融資産の総額に占める現預金残高の比率です。これまで日本は現預金比率が50%を超えており、それゆえに政府は「貯蓄から投資へ」ということを長年、言い続けてきました。
老後の資産形成を考えた場合、現預金に50%もの資産が集中している状態ではインフレリスクをヘッジできず、貧困化する恐れがあるというのが、ここ数年において「貯蓄から投資へ」を推奨する根拠ですが、以前は株価の低迷が長期化しており、その状況を打開するには、現預金に滞留している多額の個人マネーを、株式市場にシフトさせたいという政府の思惑があったように思えます。

その現預金比率が、ここ20年で最も高かったのは、2001年12月の55.53%でした。当時の家計部門保有金融資産の総額は、1387兆6456億円という時代です。そこからほぼ50%超が常態化し、2007年6月に48.14%まで低下しましたが、その後は再び50%超が続き、直近に至ります。コロナ給付金などによる資金還流によって、2020年3月期から2022年12月期までは、53~54%台という高い状態が続いたものの、2023年3月以降は徐々に低下し始め、2025年6月に50%を割り込み、2026年3月には47.22%まで低下しています。
インフレが徐々に常態化していくなかで現預金、なかでも現金で資産を保有することのリスク認知が広がってきたということでしょうか。現金の保有残高は減少傾向をたどっていて、2026年3月の前年同期比は11期連続で減少しています。2022年12月が過去最高額の110兆1039億円でしたが、直近は100兆6303億円でした。
一方、流動性預金と定期性預金の流れも変わりつつあります。これまでは両者とも利率が0%に近い水準だったため、収益性よりも換金性が重視され、流動性預金残高は2024年12月に670兆9955億円まで増えましたが、直近では664兆1739億円まで減少しています。
対して、2015年9月以来、40期連続で前年同期比マイナスが続いていた定期性預金は、2025年9月からプラスに転じ、3期連続で前年同期比プラスになりました。ようやく定期性預金に金利が付くようになり、流動性預金との金利差が広がり始めたためと思われます。
それに加えて債務証券、つまり債券の残高が伸びてきました。絶対的な額は現預金の足元にも及びませんが、前年同期比を見ると、2025年6月が11.92%増、同9月が10.63%増、同12月が9.85%増、そして2026年3月が14.37%増となっています。個人向け国債の変動10年物の基準金利が、7月債で2.63%まで上がってきており、個人の関心を集めています。
次にリスク性商品の残高ですが、上場株式は217兆3206億円となり、この26年間の最高額を更新しています。ちなみにバブル崩壊後の低迷相場が続いた2000年3月期の残高は、92兆4683億円でしたから、この26年間で2.35倍に膨らみました。その意味では、確かに「貯蓄から投資へ」という流れが起こり始めているのかも知れません。

また、投資信託の2026年3月期残高は165兆3505億円で、前期(2025年12月期)に比べて若干減少していますが、これは資金純流出ではなく価格変動によるものです。
これは株式も同様ですが、資金循環統計に掲載されるデータは時価ベースなので、仮に売却や解約が殺到して資金流出超になったとしても、株価などが上昇すれば、それを打ち消して、残高が増加するケースもあります。
この価格変動を調整するために「調整額」という数字が設けられていて、実際の資金純流出入を把握するためには、残高を調整額で加減しなければなりません。それで見ると、投資信託の残高は2023年6月期以降、12期連続で前年同期比がプラスになっています。特に2023年9月期以降は、多くの期で20%超の増加となっており、順調に資金が流入し続けていることが見て取れます。
ただ、投資信託の資金純流入に関しては、それが国内株式市場の活性化につながるかどうかという点で、一抹の疑問を覚えます。というのも、これはここ数年の流れですが、日本株ファンドよりも、S&P500やMSCI-ACWIといった海外のインデックスに連動するインデックスファンドが人気を集めているからです。
この手の、海外インデックスに連動する投資信託は、日本の個人から集めた資金を日本企業に投資するのではなく、米国をはじめとする諸外国の企業に投資することになるため、基本的に日本企業の活性化にはつながりません。「貯蓄から投資へ」の流れが出来つつありますが、手放しで喜べないところが昨今の状況のように思えます。

鈴木雅光(すずき・まさみつ)
金融ジャーナリスト
JOYnt代表。岡三証券、公社債新聞社、金融データシステムを経て独立し(有)JOYnt設立し代表に。雑誌への寄稿、単行本執筆のほか、投資信託、経済マーケットを中心に幅広くプロデュース業を展開。
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