9月18日に最高裁判事で87歳のギンズバーグが亡くなった。全米で、リベラルのアイコン(※)だった彼女を惜しむ行事が行われた。米国の最高裁判事は終身制である。誰も判事をやめさせることはできない。
2016年3月に当時の最高裁判事アントニン・スカリア(保守系)が急逝したときは、11月の大統領選挙まで8カ月の時間があるにも拘わらず、当時の共和党上院院内総務のミッチ・マコネルは、オバマ大統領が指名した、リベラル系判事のガーランドの上院でのコンファメーションを拒否した。上院で審議もしなかった。新しい選挙民の意思を聞く必要があると8カ月後の選挙結果が出るまで無理やりに延引したのである。その結果トランプが選出され、保守系の判事が就任した。
今回は9月18日にギンズバーグが亡くなって、11月3日に大統領選挙と1カ月半のタイムウィンドウしかないのに、大統領とマコネルは、保守系判事を無理やりに、指名就任させようという、まったくの手のひら返しの詐術を弄しようとしている。
それに対して民主党は大反対をしているが、上院で多数を握るマコネルはそれでも強行する構えである。
これを止める手段を民主党は持っていない。
これでマコネルのごり押しが通ると、最高裁判事9人のうち保守系6人、リベラル3人となり圧倒的に保守有利となる。リベラルへの世の中の動きの中で成し遂げてきた、堕胎を禁止しないことや、LGBTの権利の確保、同性婚、あるいはオバマケア―などが、この保守最高裁で覆される可能性があるとしてメディアも大騒ぎである。
これに対して、民主党は、大統領選と上院での勝利を勝ち取り、最高裁判事の数を9人から13人に増やすあるいは最高裁判事の任期に制限を設けるなどを検討しているといわれている。
最高裁が世間の流れから大きく外れることは最高裁に対する国民の信頼が低下することになり、それを恐れて、最高裁長官ロバーツなどは、本人はがりがりの保守であるにも拘わらず、リベラルに寄り添った判決を下し始めている。
6対3で保守有利になったからといって急に世の中が右回転することはないだろう。
しかしこのマコネルの動きに対する民主党支持者の怒りは激しく、上院の共和党支配を崩すために巨額の献金が流れ込んでいる。
また判事の増員問題については、1930年代に当時のフランクリン・ルーズベルト大統領が、保守主導の最高裁に業を煮やし、一気に6人の増員を提唱するという過激な動きに出た。
その増員は通らなかったが、その動きに恐れをなした最高裁保守系判事は、それ以降ニューディール政策や社会保障制度などのリベラルなアジェンダに理解を示すようになったといわれている。
ギンズバーグの後任に指名されている、アミー・コーニー・バレットの上院のコンファメーション・ヒアリングは10月12日から始まる。
48歳の美人の判事は、上院での厳しい追及にどうこたえるか。
ひょっとすると美人なのでマスコミの寵児になることも考えられる。
もう大統領選挙は決着がついたとみて、話題はこの上院ヒアリングに向かう可能性がある。
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