米国の税制改革案は上院も51対49で可決、すでに成立している下院の改革案との最終的なすり合わせが行われ、両者が合意に達すれば、トランプの署名を経て現実の法律となる。
複数の第3者機関は、法人税減税による1兆5千億ドルの歳入減を懸念しているが、ムニューシン財務長官は減税効果による景気拡大に伴う自然増収で賄うとし、マコネル共和党院内総務は、この減税案はレヴェニュー・ニュートラルつまり歳入減による財政赤字の拡大は無いとしている。
十分な検討もしないで会計税務の専門家による公聴会も開かず、複雑で秘密の多い法律を急いで通そうとしているのは、共和党支持者の間でも評判が悪い。
NYタイムズの記事によれば、一部共和党のストラテジストが75%の米国民に異常な不人気であるこの法案という言い方をしている。11カ月間の米国議会による不作為の後、やっと初めて1勝するチャンスが巡ってきているこの税制改革案は、75%の国民の不興を買っているというのは悲劇である。
有名な世論調査機関であるQUINNIPAC大学の調査では59%の有権者は、この共和党の税制改革案は、中産階級を犠牲にした、金持ち優遇の税制であると信じている。
この法律が成立すると、それに対する反感から共和党が来年の中間選挙で不利になるというのは確かにそうだが、だからと言って上院が簡単に民主党多数になるわけでもない。
2018年の中間選挙における上院の改選議員数は、共和党8名、民主党25名と圧倒的に民主党の改選議席が多い。ということは現職議員が選挙で負けるチャンスは圧倒的に民主党の方が多いということになる。今の48議席を維持するだけでも民主党にとっては大変なことであり、51議席(100議席が総数)の多数へ持っていくのは相当に難しい作業である。
となると上院はなかなか難しい。
下院はどうかと言うと、人工的に選挙区を捻じ曲げるゲリマンダリングの結果、総得票数は常に民主党が多いが、議席は共和党多数となっている。
このゲリマンダリングによる不利を克服するには、得票数が民主党55%、共和党45%くらいまで拡大しないと、民主党が議席多数と取ることが出来ないといわれている。
はたして中間選挙で、民主党が55%の得票で圧勝することができるかどうか。
圧勝しなければ、議席多数は取れず民主党は、マイノリティーにとどまる。
上院も下院も中間選挙で民主党が勝つのは不可能ではないが、相当難しい作業である。
75%の国民の不興が投票行動では何%の民主党有利となるのか、難しい読みである。