6月9日の金曜日のマーケットは大荒れであった。
実は6月8日を注目していた。
ECB金融政策、コーミーFBI長官の議会証言、英国総選挙と材料が目白押しであったからである。
さらに6月8日は昨年11月4日のトランプラリーの起点のNYダウ17883ドルの安値からの31週目(216日目--- 54×4)だったからである。
普通の相場は31週間も上がればとりあえずの高値を迎える。トランプラリーが普通の相場なら、ここで天井を打つ可能性が非常に高いとみていた。
コーミー証言の内容は、水掛け論(英語ではHE SAID、SHE SAIDと言う)で決定的なものは出なかったが、これからトランプの苦戦を予想させる出来事ではあった。
だから相場がどうなるということではなく、このコーミー証言がこの31週目のタイミングで出たことが大事なのである。
相場は材料で決まると考えている多くの市場参加者にとって、6月9日の高値と言うのはコーミー証言による乱高下であり、もし筆者の予想する如く、これから米国株価が大幅に下がれば、コーミー証言によりトランプの脆弱性が暴露されたという解釈になるからである。
コーミー証言と株価は全く関係ないのだが、材料主義の人には、恰好のきっかけを提供することになる。つまりトランプが危ないから株価が下がったということである。
そうなると株価は、これからのトランプの片言隻句をとらえて材料にし、さらに株を売り込んでいくということになるのである。あるいはロシアゲートが実態以上に大きな意味を持つかのように株式市場が新たなダイナミックスを導入することになる。
この新たなダイナミックスは滑稽ではあるが、マーケットやメディアは大まじめでこれを追求する。この問題はすぐに解決する問題ではなく、延々と長続きする可能性がある。
どこかでこのダイナミックスの賞味期限が切れて、相場がこれに反応しなくなる。
そうすると今度は、ロシアゲート問題はマーケットの関心外に置かれ、次のマーケットの主要関心事を追求し始める。
相場の材料と言うのはその程度のもので、それ以上でもそれ以下でもない。
ロシアゲートも本当は特別検察官のもとで地道に捜査されるが、マーケットの話題としては、議会が夏休みに入る8月には一旦賞味期限が切れる。
それまでの間に株式相場がどれぐらい下落するか。10%ぐらいの下落は大いに考えられる。
トランプに関係なくハイテク企業の株価はバブルの様相を呈している。
アマゾン、アップル、グーグル、マイクロソフト、フェイスブックの5社の時価総額の合計は2.9兆ドル(320兆円)に達している。本格的な株式市場の崩壊は来年だとみているが、その前にこの数ヶ月間でその予行演習のような急落場面を演出するだろう。
1929年の大暴落以前にも小規模の急落を数回繰り返している。
"マーケットは警告する"は無能の大統領を選んだ米国にふさわしい事件である。