蟹瀬誠一コラム「世界の風を感じて」

蟹瀬誠一(かにせ・せいいち)

国際ジャーナリスト/明治大学国際日本学部教授
(株)アバージェンス取締役
(株)ケイアソシエイツ副社長
1950年石川県生まれ。上智大学文学部新聞学科卒業後、米AP通信社記者、仏AFP通信社記者、米TIME誌特派員を経て、91年にTBS『報道特集』キャスターとして日本のテレビ報道界に転身。東欧、ベトナム、ロシア情勢など海外ニュース中心に取材・リポート。国際政治・経済・文化に詳しい。現在は『リーダー&イノベーション・賢者の選択』(日経CNBC,サンテレビ、BS-12)、『マネーの羅針盤』(テレビ東京)のメインキャスター。カンボジアに小学校を建設するボランティア活動や環境NPO理事としても活躍。
2008年より2013年3月まで明治大学国際日本学部長。
趣味は、読書、美術鑑賞、ゴルフ、テニス、スキューバ・ダイビングなど。


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ポピュリズムと法治国家

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7万人を救うためにテロリストと一般人164人を殺してもいいのか。

そんな究極の選択を視聴者に迫る衝撃のドラマ『裁判劇テロ』が先日日本で初めてスカパーAXNミステリーチャンネルで公開された。私はその3時間生放送の司会兼パネリストを務めたが、テレビの前の視聴者がリアルタイムで裁判員として参加し被告の有罪、無罪を決める番組だっただけに予想を超える大反響。テロ対策のジレンマが浮き彫りになったかたちだ。

原作は著名なドイツ人刑事弁護士で作家のフェルディナント・フォン・シーラッハの最新作『テロ』(2015年。)

物語は、ドイツ上空で乗客164人を乗せた旅客機がハイジャックされたところから始まる。テロリストはその旅客機で7万人の観客で溢れかえったサッカースタジアムに突入しようとしているのだ。まさに9・11米国同時多発テロを想起させる状況である。

7万人を救うために164人を犠牲にしていいのかという選択に迫られたエリート空軍少佐コッホは独断でミサイルを発射して旅客機を撃墜してしまう。 法廷に被告として立たされた彼は英雄か、はたまた犯罪者か。

結末は有罪と無罪の2つのバージョンが用意されている。

背景にはドイツで大議論となった航空安全法がある。2001年の米国同時多発テロ後、ドイツではハイジャックされた航空機が武器として使用される恐れがある場合には連邦軍が撃墜してもよいという航空安全法が2005年に施行された。

しかし翌年の2006年に連邦憲法裁判所は航空安全法は一部違憲だとの判断を下し、現在は停止状態にある。ハイジャック機の撃墜によって乗客の生命を奪うことは「人間の尊厳」「生命の権利」を侵害する行為だというのはその理由だった。

検察側の主張は主に以下の4点。
1)7万人と164人の命を天秤にかけることは出来ない。
2)スタジアムにただちに避難命令を出していれば7万人の観客が避難できる時間があり、誰一人命を危険に晒さずに済んだ。
3)ブラックボックス解析によれば、旅客機が撃墜される寸前に乗員乗客がコックピットに突入しようとしていた。つまりテロリストを制圧した可能性があった。

結論は、モラルや良心の問題に確実なことはない。だから個々のケースを憲法に照らして判断することが法治国家の本質である。ゆえに被告は有罪だというわけだ。

弁護側の主張は、
1)有罪判決は私たちの敵であるテロリストを守り、私たちの命を守らない。
2)より小さな悪を優先するという考え方は英米の法系統にねずいている。
3)超法規的緊急措置が必要だった。
4)戦争には犠牲がつきものだ。だから無罪。

どちらも説得力のある議論で判断はとても難しい。あなたならどうするとドラマは迫ってくる。以前に10か国以上で舞台劇として公演された際の観客の審判は圧倒的に無罪が多かったそうだ。今回の番組後の視聴者投票の結果も無罪が有罪の2倍ほどだった。

しかし私個人として有罪に一票入れたい。なぜなら民主主義の法治国家がテロに対応する手段は法しかないからだ。義憤に燃えて私たち自身が決めたことをないがしろにしてしまえば残るのは弱肉強食の無法地帯である。そうなれば私たちもテロリストと同じ穴の狢だ。

被告が164人を殺害したという事実を消しさることはできないのだ。

米国建国の父のひとりベンジャミン・フランクリンは以下のような言葉を残している。「ひと時の安全のために自由を手放すものは、自由も安全も失うことになる」(1759年)

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