酒匂隆雄の「為替ランドスケープ」 

リスク・オフによる円高

2026/10/26

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158円を挟んでのレンジ取引が続いていたドル円相場がついに動き出した。週初こそ前週からの動きを引き継いで158円台半ばで堅調に推移していたドル円相場であるが、二つの外的要因によりリスク・オフの動きとなって、週末金曜日には一気に円高が進んで一時は安値156.08 迄ドル安&円高が進行した。

2026年10月26日号

158円を挟んでのレンジ取引が続いていたドル円相場がついに動き出した。

週初こそ前週からの動きを引き継いで158円台半ばで堅調に推移していたドル円相場であるが、二つの外的要因により

リスク・オフの動きとなって、週末金曜日には一気に円高が進んで一時は安値156.08 迄ドル安&円高が進行した。

一つ目の要因は益々過激化しつつあるフランス国内での暴動騒ぎである。

これにより財政問題と相まって債券が売られてフランス国債の利回りが上昇して資金逃避が起こり、その流れが米債やJGB.(日本国債)への投資となって日米長期金利が下落し、ユーロとドルが売られて、円が買われる結果となった。

10月20日10月23日変化
ドル円158.53156.82-1.1%
ユーロ円177.73175.66-1.2%
米10年債利回り5.143%4.998%-0.145%
JGB.10年利回り2.905%2.800%-0.105%

二つ目は米半導体企業の決算などを契機に世界的なAI.関連・ハイテク株安が広がり、投資家の資金が安全資産へ向かう形でリスク回避の円買いが急加速したことである。

ハイテク株の比率が高いナスダックは、つい3週前の10月6日に27,599.79の高値を更新したばかりであるが、先週金曜日の23日には25,955.34まで凡そ6%近くも下落した。

この間、ダウは51,521.28から52,215.16迄、凡そ1.3%上昇しており、ナスダックの大幅下落がニューヨーク株式市場の本格的な株価調整の始まりなのか、良く分からない。

只、ダウは先週末金曜日には652.82ドル(約1.3%)下げて引けており、予断は許さない。

特に来たる11月3日には米国中間選挙を控えており、その結果如何によっては更なる株価調整が起きても不思議ではあるまい。

現時点では、ブルー・スイープ(民主党の上下両院勝利)の可能性が高まっており、これまで共和党が勝利することが当然だった地域、テキサス、カンザス、オハイオ、アラスカ、といった州でも民主党の候補が勝利するとトランプ大統領が推し進めて来たデータ・センター投資が逆回転を始める可能性が有り、株価にとっては大きな悪材料となる可能性が有る。

更なる株価下落は先週から起き始めたリスク・オフの動きを加速して、更なる円高の動きに拍車を掛ける可能性は大きい。

奇しくも、高市首相が、

-強い経済で円の信認を高めていく。

-高市円安・高市高金利と言われたが明確に否定する。

と述べたが、はっきり言って日米両政府首脳と財務省関係者が、“円安はまかりならん!”と言っているのだから、円安には成り難いと筆者は考えるのだが、依然としてドル高&円安の動きの継続を信じているのが我が国の個人投資家である。

(外為どっとコム社、ホームページ参照。)

25日時点で買い比率が68%、売り比率が32%となっており、凡そ2対1でドルを買い持ちにしている人の比率が売り持ちにしている人のそれを上回っている。

ドル円相場は火曜日の高値158.60から金曜日に付けた安値156.08迄凡そ2円50銭下げているが、逆張り(相場が下がれば逆らって買い向かう。)の得意な我が国の個人投資家の行動パターンからすると、不思議ではないか?

それに反してシカゴ・IMM.は20日時点で前週からドルの売り持ちを凡そ15億ドル増やして55億ドルの売り持ちとなっている。

但し、20日のニューヨーク市場の終値は158.18であったから、その後のドル安&円高の動きに対して彼らがどの様な行動を取ったかは不明であるが、今週末発表になる27日時点での彼らのポジションが大いに気になるところである。

筆者の見解は、シカゴ・IMM.は引き続き“市場の胴元。”としてのベッセント米財務長官の円安抑制に期待しての円の買い持ち(ドルの売り持ち)ポジションを放棄することは有り得ないであろうという事である。

今週は27日~28日にFOMC.、そして29日~30日に日銀政策決定会合が開催されるが、両者共に政策の変更は無いと見られる。

会合後のウォーシュFRB.議長と植田日銀総裁の記者会見で、今後の金融政策の方向性の手掛かりを示されるかが注目されているが、市場は現在は上述したリスク・オフの動きに、より注目しており大きな波乱要因とはならないであろう。

今回も、円安進行はノロノロ、円高進行はドカンと言う動きを見せ付けられたが、要するにマーケットはドル・ロング(円・ショート。)なのである。

筆者は、未だ円・キャリー・トレードの巻き戻しの動きが本格的に始まったとは思っていない。

兎に角、お上が“円安はまかりならん!”と言っているのだから、ドルが上がった所では安心してドル売り&円買いをしておけば良いのではなかろうか?

ドルをショートにする(円をロングにする。)事による多少の金利差負担(スワップ・コスト。)は、たった数日の動きで回収出来ると思えば安いものだ。

例えば先週火曜日に158.50でショートにして金曜日に156.50で買い戻したとしたら、2円のキャピタル・ゲイン。

10万ドル売ったとしたら20万円の利益。

スワップ・コストは10万ドルに対して1日約1400円であるから、1400円×5日間(木曜日から金曜日に掛けてポジションを持ち越すと、3日分のコストを支払わなければならないが、説明は省略する。)で7千円のコスト。 何方が理に適った(利に適った?)取引であるかは一目瞭然である。

今週のテクニカル分析

今週のテクニカル分析の見立ては、下サイドをブレークしたので更なる下落を見込む。

今週のレンジ

ドル円:153.00~158.00
ユーロ円:173.00~178.00

酒匂隆雄

酒匂隆雄 (さこう・たかお)

酒匂・エフエックス・アドバイザリー 代表
1970年に北海道大学を卒業後、国内外の主要銀行で為替ディーラーとして外国為替業務に従事。
その後1992年に、スイス・ユニオン銀行東京支店にファースト・バイス・プレジデントとして入行。
さらに1998年には、スイス銀行との合併に伴いUBS銀行となった同行の外国為替部長、東京支店長と歴任。
現在は、酒匂・エフエックス・アドバイザリーの代表、日本フォレックスクラブの名誉会員。


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