酒匂隆雄の「為替ランドスケープ」 

ドル安の流れは変わらず?

2025/05/19

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米中関係の電撃合意から一転、ドル円は再び円高方向へ。市場の裏で進む駆け引きとIMMの動向をふまえて、今週の相場見通しを深掘り!

2025年5月19日号

先週のドル円相場は、米中間の関税を巡る電撃合意が好感されてリスクオンの動きとなり、一時高値148.65をつけたが、その後トランプ政権が関税交渉の一貫で台湾と韓国に対して自国通貨高を要求したとの思惑が広がって台湾ドルと韓国ウォンが強含みとなった事を受けて円高の動きとなり、一時144円台までドル安&円高が進んだ後、145.63で週を終えた。

興味深いのは台湾、韓国の両国共に口を揃えた様に、「米国とは為替協議はしていない」と白を切った事である。

何処かの国の対応と全く同じである事が滑稽でさえある。

4月のトリプル安に驚いた穏健派のベッセント財務長官の根回しが効いている(現状では、表向きドル安志向を唱えない)のであろう。

彼は基軸通貨としてのドルは「強いまま」でいて欲しく、貿易決済としてのドルは、「安い」方が望ましいと考えているはずである。

だから表向きは「強いドルが望ましい」と言い、対米貿易黒字国には通貨高を求めながら、「そんな話は無かった事にして欲しい」と頼んでいるのである。

今週はカナダでのG7による中央銀行・蔵相会議に出席する加藤蔵相とベッセント財務長官との会談が予定されている。

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又、「為替の話は出なかった」ととぼけるのであろうが、「そんな筈は無い」事は、誰もが承知している。

そろそろ、小賢しい芝居は止めて貰いたいものだ。

先週1週間、サンフランシスコに滞在していたが、所謂格差と言うものを痛感した。

金持ちは高級ゴルフ場でゴルフに興じ、そうでない人達の一部はホームレスに落ちぶれてその日暮らしをしている。

例外無い意見は、「これから益々生活は苦しくなる」であった。

筆者の友人は殆どが共和党員であるが、誰1人としてトランプを褒める人は居なかった。

かと言って、筆者の様に痛烈にトランプ批判をする御仁も居ない。

「仕方ないなあ」と諦め顔であった。

上でも述べた様に、殆どが「アメリカは益々悪くなる」と思っており、通貨に関しては「ドルは大きく下げざるを得ない」という意見が多かった。

それを知ってか知らずか、シカゴ・IMMは前日に戻り高値の148.65を付けた翌日の5月13日の時点で僅かながら(9億ドル)ドルの売り持ちを減らしたものの、相変わらず大きなドル・ショート(145億ドル)のポジションを保持している。 2週間で141.98から148.47まで6円49銭(終値ベース)のドル高&円安が進んだにも拘わらず、ドルに対しての弱気は変えていない。

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個人投資家残高

4月28日付け5月5日付け5月12日付け
+8億ドル+8億ドル+6億ドル
@143.73@144.84@145.37

シカゴ・IMM

4月29日付け5月6日付け5月13日付け
-158億ドル-154億ドル-145億ドル
@141.98@143.70@144.87

シカゴ・IMMは2月4日にそれまでの円・ショート(ドル・ロング)から円・ロング(ドル・ショート)に転じたが、彼らのポジションの推移と持ち値を検証してみた。

ちょっと乱暴な計算かもしれないが、先週5月13日の時点での145億ドルの持ち値は@149.00となった。

4.2. -15 @154.86=2,322.9
11.2. -30@152.00 =4,560=6,882.9 -45@152.95
18.2. -5@151.50=757.5=7,640.4 -50@152.81
25.2. -30@149.73=4,491.9=12,132.3 -80@151.65
4.3. -31@149.49=4,634.19=16,766.49 -111@151.05
11.3. -3@147.29=441.87=17,208.36 -114@150.95
18.3. +11@149.17=1,640.87=15,567.49 -103@151.14
25.3. -1@150.68=150.68=15,718.17 -104@151.14
1.4. +2@149.96 =299.92=15,418.25 -102@151.16
8.4. -22@147.82 =3,252.04=18,670.29 -124@150.57
15.4. -26@143.05=3,719.3=22,389.59 -150@149.26
22.4. -8@140.88 =1,127.04=23,516.63 -158@148.84
29.4. 0 -158@148.84
6.5. +4@143.70 =574.8=22,941.83 -154@148.97
13.5. +9@148.47=1,336.23=21,605.6 -145@149.00

3ヵ月間、円・ロング(ドル・ショート)をキャリーしていると約4%の日米短期金利差がスワップ・コストとしてかかるが、ポジションが大きく膨らんだのが4月以降と鑑みてそのコストをひと月半と見て計算すると、150×4%÷12ヶ月×1.5ヶ月=0.75となって、それをポジションの持ち値である149.00から引くと、149.00-0.75=148.25となり、今日月曜日に取引されている145円近辺から計算しても未だ3円以上の含み益が有り、「未だ、余裕が有る」と言え、これだけ我慢した後でもあり、ドルに対しての弱気は変えないのかも知れない。

筆者も基本的なドル安&円高の流れは変わっていないと考えており、Sell on rallies(ドルが上がったら売る)と言う戦略を保持したい。

今週のテクニカル分析の見立ては、下サイドへのブレークに注意。

今週のレンジ

ドル円:143.00~146.00
ユーロ円:161.50~164.50

酒匂隆雄

酒匂隆雄 (さこう・たかお)

酒匂・エフエックス・アドバイザリー 代表
1970年に北海道大学を卒業後、国内外の主要銀行で為替ディーラーとして外国為替業務に従事。
その後1992年に、スイス・ユニオン銀行東京支店にファースト・バイス・プレジデントとして入行。
さらに1998年には、スイス銀行との合併に伴いUBS銀行となった同行の外国為替部長、東京支店長と歴任。
現在は、酒匂・エフエックス・アドバイザリーの代表、日本フォレックスクラブの名誉会員。


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