酒匂隆雄の「為替ランドスケープ」 

危うし、ドナルド・トランプ

2025/11/10

> 無料のFX口座開設でお肉・お米のいずれかゲット!


前週の日米・米中首脳会談、FOMC.、そして日銀政策決定会合などのビッグ・イベントを大きな波乱も無くこなした金融市場は、先週は為替市場では若干のドル安、債券市場では金利高(債券安)となり、ドル円相場に関しては日銀及びFRB.の年末に掛けての金融スタンスを計りあぐねて、153円から154円の狭いレンジ内に留まることとなった。

2025年11月10日号

前週の日米・米中首脳会談、FOMC.、そして日銀政策決定会合などのビッグ・イベントを大きな波乱も無くこなした金融市場は、先週は為替市場では若干のドル安、債券市場では金利高(債券安)となり、ドル円相場に関しては日銀及びFRB.の年末に掛けての金融スタンスを計りあぐねて、153円から154円の狭いレンジ内に留まることとなった。 

但し、株式市場では週の終値ベースでは若干の下げとなったものの、ニューヨーク株式市場では週明けの3日から4日に掛けてダウ平均株価が477ドル下げ、その煽りを受けて日経平均株価は5日から6日に掛けて凡そ2,200円近く急落するなどの波乱も見られた。 

10月31日 11月7日
ドル・円154.05 153.43
ユーロ・ドル1.1535 1.1563 
ポンド・ドル1.3143 1.3158 
豪ドル・ドル0.6544 0.6494
10年債利回り4.083% 4.092% 
ダウ 47,562.8746,987.10
S&P 6,840.206,728.80 
日経平均 52,411,34 50,276.37 
(終値)

ニューヨーク株式市場の下げの要因としてはハイテク株などに調整売りが出たことも挙げられるが、そろそろひと月にもならんとする米政府機関の閉鎖が更に長期化し、雇用統計や個人消費支出(PCE)、GDPといった主要経済指標の発表が見送られる中で、実体経済への悪影響が懸念され始めたことも挙げられよう。

議会での共和・民主党の各々が主張する意見の隔たりは依然として大きく、早期解決に関しては予断を許さない状況が続いている。

この様な状況下で共和党・トランプ大統領にとって極めて由々しき事が起きた。

4日に行われたニューヨーク市長選挙で、民主社会主義を標榜する無名のゾーラン・マムダニ氏が元ニューヨーク州知事のクオモ候補や共和党のスリワ候補を破って市場最年少のニューヨーク市長が当選した。

マムダニ氏は、“家賃凍結。”、“バス無料。”、“全家庭への無償保育サービス。”などの公約を掲げて若年層の圧倒的な支持を得て当選したが、選挙期間中にトランプ批判を繰り返してトランプの不興を買い、ついにトランプはニューヨーク市に対する連邦政府の援助を打ち切ると脅し始めた。

何時もの、“トランプ恫喝。”である。

更にトランプに追い打ちを掛けたのがバージニア州とニュージャージー州の知事選で何れも民主党候補が当選した事である。

未だ、有る。

4月にトランプ大統領が国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づき、一方的に日本を含む広範な貿易相手国・地域に輸入関税を賦課した措置が、権限逸脱で違憲かどうかを争う訴訟に発展しており、連邦最高裁での審議が本格化し始めた。

トランプ大統領は強気な姿勢を示しているが、仮に違法と判断されれば関税が引き下げられ、連邦政府が多額の関税を払い戻すことを余儀なくされて、米財政への懸念が高まる可能性が有るのだ。

直近の世論調査ではトランプ不支持率は63%と言われており、このままでは来年11月の中間選挙でトランプは再選されない可能性が高まりつつあるのではなかろうか?

今回のニューヨーク市長選挙では、高物価に悩む市民が無名であったゾーラン・マムダニ氏が、“何かやってくれるのではないか?”との希望を持って投票したと言われている。

そして異例の高投票率となってマムダニ氏を当選させる原動力となった。

昨年の大統領選挙で、バイデン政権の無策に辟易としていたアメリカ国民が、“トランプが大統領になったら何かやってくれるのではないか?”との希望を持って投票した。

そして、トランプは一般のアメリカ国民が喜ぶ様な何かをしたか?

パウエルFRB.議長は“インフレは収まりつつある。”と言い、トランプ大統領は“インフレではない。”と言い切るが、一般のアメリカ国民の考えは全く違っており、一部の富裕層だけが生活をエンジョイしているが、一般の国民はアップ・アップしている。

中央銀行が、“未だ未だデフレ懸念は払しょく出来ていない。”として利上げを逡巡し、一般の国民が物価高とその元凶である円安に悩まされる何処かの国と似ていると言えば、似ていなくもない。

トランプ大統領が中間選挙で敗北した場合の金融市場への影響については、はっきり言って良く分からないが(未だ余り多くの人は話題にしていない。)、個人的には株安&リスク・オフとなってドル安が進行するのではないかとの思っている。

未だ1年先の事で鬼が笑うかも知れないが、“危うし、ドナルド・トランプ!”と言う気がする。

筆者の友人のアメリカ人は全員が共和党員であるが、この点について触れると肩をすくめて余り喋りたがらない。

触れてほしくない話題なのであろう。

米中貿易交渉に進展が有ったとして週明けの東京外為市場ではドル高が進んでいるが、155円に近付くと我が国財務省のドル売り&円買い介入、アメリカ政府からのドル高&円安牽制に要注意であろう。

高市新政権は、“物価対策を一番の政策目標!”と断言した。

高市さん、片山さんは、今の物価高の元凶が円安である事は重々ご存知であろう。

アメリカから怒られる前に介入や日銀に対して利上げを促す事で、円安の進行を阻止する事が肝要と痛感する。

今週のテクニカル分析

見立ては、レンジ取引を想定するが下サイドへのブレークにより注意。

今週のレンジ

ドル円:152.00~154.50
ユーロ円:176.00~179.00

酒匂隆雄

酒匂隆雄 (さこう・たかお)

酒匂・エフエックス・アドバイザリー 代表
1970年に北海道大学を卒業後、国内外の主要銀行で為替ディーラーとして外国為替業務に従事。
その後1992年に、スイス・ユニオン銀行東京支店にファースト・バイス・プレジデントとして入行。
さらに1998年には、スイス銀行との合併に伴いUBS銀行となった同行の外国為替部長、東京支店長と歴任。
現在は、酒匂・エフエックス・アドバイザリーの代表、日本フォレックスクラブの名誉会員。


> 無料のFX口座開設でお肉・お米のいずれかゲット!


この記事をシェアする

無料会員募集中