酒匂隆雄の「為替ランドスケープ」 

再びドル安と円安のせめぎあいか?

2025/09/08

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注目の8月米雇用統計は非農業部門雇用者数が市場予想の+7万人を大きく下回る+2万2千人に留まり、また失業率も4.3%と7月の4.2%から上昇、そして6月分が-1万3千人へと下方修正されたがドル円相場は発表時の148円前後からの下落は穏やかなもので、146.79の安値を付けた後は直ぐに147円台を回復して147.38で週を終えた。

2025年9月8日号

先週のドル円相場は、日銀の氷見野副総裁が北海道で行った講演の中で、“関税の影響はこれから顕在化するというのをメインシナリオとして持っている。現状、影響が大きく出ていないのは遅れているからか、それともそもそもそれほど影響がないのか見極めが必要。”などと述べ、政策金利の引き上げ時期に関しては、“先走り過ぎてもいけないし、後手にも回らないようにしなければいけない。”と述べたことにより利上げに慎重に示したと受け取られ、また日本の政局の不透明感もあり一時149.13迄ドル高&円安が進んだが、その後は週末の8月米雇用統計の発表を控えて、概ね148円を挟んでの展開となった。

注目の8月米雇用統計は非農業部門雇用者数が市場予想の+7万人を大きく下回る+2万2千人に留まり、また失業率も4.3%と7月の4.2%から上昇、そして6月分が-1万3千人へと下方修正されたがドル円相場は発表時の148円前後からの下落は穏やかなもので、146.79の安値を付けた後は直ぐに147円台を回復して147.38で週を終えた。

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市場予想を大きく下回った8月米雇用統計の結果により来週16日~17日に開催されるFOMC.においての利下げはほぼ決まり事となり、0.5%の大幅利下げの観測も浮上してきており、年内3回の利下げも予想され始めた。

それにも拘わらずドル円の下落が限られたものとなったのは、最近の雇用統計はイーロン・マスクが主導して行った政府効率化省(DOGE.)による政府部門の人員削減や、移民取り締まり強化による移民の雇用減などの不確定要素が統計の攪乱要素となっていると思われ、これが市場予想と実際の数字との大きな乖離を起こしていると考える市場参加者(先週指摘したヘッジファンド・コミュニティーを含む。)が、寧ろ冷静に保持するドル・ショート&円・ロングのポジションの一部の縮小を図ったのかのも知れない。

因みにシカゴ・IMM.の投機筋も前週の-71億ドルの売り持ちポジションを約9億ドル縮めて-62億ドルとなっている。

8月の雇用統計の結果を見てFRB.による利下げが確実視されてドルの下落傾向が続くと思っていたが、日曜日に突然石破首相が辞意を表明して、財政規律派と評価される石破氏が退陣すれば、新たな首相により金融緩和的で財政拡張的な政策が実現しやすいとの思惑が台頭してきた。

その結果は円安、債券安(金利高)、そして株高であろう。

そして問題は、一体誰が次期総裁候補として名乗りを挙げ、誰が次期総裁となるかである。

8月のテレビ東京と日経による“次の総理にふさわしい人。”のアンケートによると、高市早苗氏が23%、そして小泉進次郎氏が22%と他の候補者を圧倒的に抑えて人気が有り、個人的にはこの二人の内の一人が次期総裁となる可能性が高いと見る。

小泉進次郎氏は構造改革重視だが、彼が考える政策は石破さんが取ったそれとは大きく懸け離れておらず、彼が次期総理となった場合の市場に対する影響は限られたものではなかろうか?

高市早苗氏は積極財政推進派で金融緩和継続を訴えており、彼女が次期総理となった場合は上で述べた様に円安、債券安(金利高)、そして株高となる可能性が高かろう。

総裁選の行方に関しては全く分からないが、あくまでもトランプ関税による影響を見極めたいとする日銀にとってはまた新たな不確定要因が現れた訳で、どうやら一部に期待されていた10月の早期利上げは困難になったかも知れない。

FRB.の利下げによるドル安要因と、我が国の政局不安による円安要因との鬩ぎあいが予想され、今暫くはレンジ相場が続くと予想する。

アメリカでは、ようやくトランプ関税やハーバード大学に対する補助金打ち切りに対する違憲問題などで、トランプ大統領に対して“物言う動き。”が見られ始めた。

個人的にはこう言う乱暴者が率いる国が、そう長続きする筈は無いと思っている。

来年の中間選挙で勝つ為に民主党知事が率いる州や地方自治体に対して州兵などを動員して、力ずくで自分の威光をひけれかそうと試みているが、上手く行く筈はあるまい。

短期的には円安傾向が続くかも知れないが、中長期的にはドル安となるであろうとの個人的意見は変えていない。

今週のテクニカル分析

見立ては、146~149のレンジを予想。上下何れかをブレークすると、その方向に更に動く可能性を指摘。

今週のレンジ

ドル円:146.50~149.00
ユーロ円:172.00~174.50

酒匂隆雄

酒匂隆雄 (さこう・たかお)

酒匂・エフエックス・アドバイザリー 代表
1970年に北海道大学を卒業後、国内外の主要銀行で為替ディーラーとして外国為替業務に従事。
その後1992年に、スイス・ユニオン銀行東京支店にファースト・バイス・プレジデントとして入行。
さらに1998年には、スイス銀行との合併に伴いUBS銀行となった同行の外国為替部長、東京支店長と歴任。
現在は、酒匂・エフエックス・アドバイザリーの代表、日本フォレックスクラブの名誉会員。


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