酒匂隆雄の「為替ランドスケープ」 

混沌とする、日米金融政策の行方

2025/11/25

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先週のドル円相場は、20日に発表された10月FOMC.の議事要旨に於いて“多くの参加者は自身の経済見通しに基づけば、年内は政策金利を据え置くことが適切になる公算が大きいとの立場を示唆、12月の利下げ観測が後退してドル買いが進み、一時157.89も高値を示現した。

2025年11月25日号

先週のドル円相場は、20日に発表された10月FOMC.の議事要旨に於いて“多くの参加者は自身の経済見通しに基づけば、年内は政策金利を据え置くことが適切になる公算が大きいとの立場を示唆した。”と記され、また利下げが行われた10月会合に於いても、“幾人かのメンバーは利下げに反対の立場を示した。”ことが明らかになり、12月の利下げ観測が後退してドル買いが進み、一時157.89も高値を示現した。

6週間にわたる政府機関閉鎖が終了し、20日に発表された9月の米雇用統計に於いて非農業部門雇用者数が市場予想の+5万人を大きく上回る+11万9千人となったものの、失業率が前月8月の4.3%から4.4%へと悪化した事で米国雇用環境はまだら雇用の結果となったことや、ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁やウォーラーFRB.理事が相次いで12月の利下げに対して前向きな発言を行って市場の12月の織り込み度合いは再び80%近くまで上昇することとなった。

我が国に於いても、ハト派(金融緩和に積極的)と見做されていた増審議委員が、日経新聞とのインタビューで“経済や物価の情勢を見ると、利上げをしてよい環境は整ってきていると思う。”と発言し、12月の利上げに対して前向きな発言をした。

先週までは、年内のFRB.の利下げ、日銀の利上げ観測後退により更なるドル高&円安進行を見込む向きが多かったが、此処に来てどうも日米金融政策の行方が混沌としてきた感が有る。

為替に関しても円安に対しての懸念発言がより目立つようになってきた。

片山財務相は、“為替動向は一方的で急激な動きも見られ、過度な為替変動や無秩序な動きには必要に応じて適切に対応する。為替介入に関しても当然、考えられる。為替介入に関しては9月の日米財務相の共同声明にもしっかりと介入の事も入っている。いざとなったら断固たる措置も辞さない。”と発言し、就任後初めての口先介入を行った。

先週末には、日本成長戦略会議のメンバーである会田氏が、“政府はこれまでよりも為替介入を積極的にやり、円安の副作用を軽減していくということになると思う。”と述べ、また植田日銀総裁も円安進行について“輸入物価を押し上げて、それが国内物価に転嫁されていくことで消費者物価の押し上げ要因になる。”と述べており、“第一防衛線”と目されていた155円を突破し、“第二防衛線”と思われる160円を目前にして益々実弾介入の可能性は増していくであろう。

因みに、2024年に神田前財務官が行ったドル売り&円買い介入の水準は、4月29日が160円台、5月1日が157円台、 7月11日 が161 円台、7月12日が159円台となっており、正に“第二防衛線”に近付きつつある。

市場は所謂“高市トレード。”の“財政拡大、金融緩和維持。”による円安進行を自然な物と捉えていたが、そろそろ“行き過ぎた円安に対する政策的措置=為替介入。”をより真剣に考えるべき時が来つつある感じがする。

商品先物取引委員会(CFTC)が、6週間ぶりにシカゴ・IMM.の投機筋のポジションを発表したが、そのデータは10月6日付けの物で、前週比-13億ドルの39億ドルの売り持ちであった。

当日のニューヨーク市場の終値は147.46で、この6週間で凡そ10円のドル高&円安が進んだ事になる。

彼らがこの6週間でドルの売り持ちから買い持ちに転じてそれがドル円上昇の引き金となったかは定かではないが、中央銀行の政策変更に敏感でファンダメンタルズ(経済的基礎要因)分析に重きを置くシカゴ・IMM.やヘッジ・ファンド・コミュニティーはドル円相場の行方を見誤り(FRB.による利下げと日銀の利上げにより日米金利差が縮小と見込んで、ドル円相場は下落すると確信してドル・ショート&円・ロングのポジションを構築した。年初の日経ヴェリタスのアンケートでも、圧倒的に年初はドル高&円安で年末はドル安&円高と読む識者が多かったのは11ヶ月経った今でも記憶に新しい。)、今年の実績は散々で年末までに一儲けを企んでいるらしいと聞く。

可能性が増しつつあるドル売り介入に抗ってドル買いで挑戦するか、或いは介入に乗っかってドル売りで挑戦するか?

他人事とは思えないが、今は相手(日米中央銀行=“金融政策の変更”と我が国財務省=“ドル売り&円買い介入”)の出方を見守るしかない。

今週のテクニカル分析

見立ては157.89からの反落を見て、下サイドへのブレークに注意。

今週のレンジ

ドル円:155.00~158.00
ユーロ円:178.00~181.00

酒匂隆雄

酒匂隆雄 (さこう・たかお)

酒匂・エフエックス・アドバイザリー 代表
1970年に北海道大学を卒業後、国内外の主要銀行で為替ディーラーとして外国為替業務に従事。
その後1992年に、スイス・ユニオン銀行東京支店にファースト・バイス・プレジデントとして入行。
さらに1998年には、スイス銀行との合併に伴いUBS銀行となった同行の外国為替部長、東京支店長と歴任。
現在は、酒匂・エフエックス・アドバイザリーの代表、日本フォレックスクラブの名誉会員。


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