鈴木雅光の「奔放自在」

毎月分配型ファンドが20代に人気なワケ

2024/05/31

毎月分配型ファンドが20代の間で再び人気を集めています。一時期は高齢者の年金不安を支えるための手段とされていましたが、今では若者たちが毎月の安定した収益を求めて投資する理由が増えてきました。その背景を探ります。

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一時期、個人の間で人気を博した投資信託に「毎月分配型ファンド」があります。

通常、投資信託には年1、2回ほどの決算日が設けられていて、その都度、前回の決算日の翌営業日から今回の決算日までの運用によって得られた収益の一部を、「分配金」として受益者に還元します。

毎月分配型投資信託とは、決算日を毎月設けて、年金のように、毎月ある程度の額の分配金を受け取れるように設計した投資信託のことです。

代表的なのが、三菱UFJアセットマネジメントが設定・運用している「グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)」です。今は2800億円足らずの純資産総額ですが、このファンドが全盛だった2008年7月の純資産総額は、5兆7000億円を超えていました。

今、個人の間で人気を博している「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」でさえ、直近の純資産総額は3兆3835億円です。この点からも、いかに当時のグローバル・ソブリン・オープンが人気だったのか、お分かりいただけるのではないでしょうか。

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では、なぜここまでグローバル・ソブリン・オープンが人気化したのでしょうか。

最大の理由は、高齢者の年金不安にうまく取り入ったからです。当時、グローバル・ソブリン・オープンの毎月の分配金は、受益権1万口に対して最も高い時で60円が支払われていました。1998年8月から2000年12月までのことです。もし500万口分を保有していれば、毎月3万円の分配金を受け取ることができたのです。

毎月3万円のキャッシュフローが確保できるのは、公的年金しか収入のない高齢者にとっては、かなり魅力的だったに違いありません。「毎月分配型で年金を確保しましょう」といったマーケティングが功を奏し、グローバル・ソブリン・オープンだけでなく、他の投資信託会社も似たようなファンドを設定し、毎月分配型ファンドは一大ブームを巻き起こしたのです。

しかし、その後は金融庁が、さまざまな仕組みを使って分配金をかさ上げしたような毎月分配型ファンドは資産形成に望ましくないなどと、業界をけん制するようなコメントを出したり、世界的な超金融緩和で金利が急低下したりして、毎月分配型ファンドの人気は後退したように見えました。実際、その代表的な商品だった、グローバル・ソブリン・オープンの純資産総額は、ピークの5兆7000億円から2800億円足らずまで減少しているのです。

それだけに、投資信託協会が公表した「2023年度投資信託に関するアンケート調査」の結果は非常に意外なものでした。

このアンケート調査によると、毎月分配型ファンドの現在の保有状況において、20代が40.1%となり、70代の40.3%に次ぐ高さになったというのです。ちなみに年代別に毎月分配型ファンドを保有している比率を示すと、

20代・・・・・・40.1%
30代・・・・・・34.2%
40代・・・・・・31.7%
50代・・・・・・25.9%
60代・・・・・・33.1%
70代・・・・・・40.3%

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70代が毎月分配型ファンドを保有するのはまだ分かるのですが、なぜ20代が70代とほぼ変わらない率で毎月分配型ファンドを保有しているのでしょうか。その理由として、「毎月利益確定ができる」という回答比が高かったそうです。

ただ、毎月利益を確定させることにどのような意味があるのかを、考える必要があります。特に20代を中心とする若年層の資産運用は、今、保有している資産を有効活用して、そこから一定額のキャッシュフローを得ていく「資産活用」ではなく、積立投資などを利用しながら徐々に資産を増やしていく、「資産形成」に主眼を置く必要があります。

資産形成をするのであれば、効率的に資産を増やせる仕組みを築く必要があります。そのひとつが積立投資ですし、さらに言うならば分配金を受け取らずに運用し続けることです。

現状、投資信託で全期間にわたり完全無分配で運用するのは、投資信託の税制ルール上、出来ないことになっていますし、毎月払い出される分配金は課税されます。ちなみに今、NISAが非課税制度として注目されていますが、毎月分配型ファンドは資産形成に寄与しないという理由から、NISAの成長投資枠やつみたて投資枠での購入ができないことにもなっています。毎月支払われる分配金に対して20.315%が税金として差し引かれるのですから、運用の効率性という観点で考えれば、極めて不利な運用を強いられることになります。

つまりどこからどう考えても、毎月分配型ファンドは資産形成に向かないのです。それを20代が購入するのは、これから長期にわたって資産形成をしていくには、間違った投資行動といわざるを得ません。

しかし、その後は金利低下などの影響を受け、分配金の額は徐々に低下し、直近の分配金は受益権1万口につき5円です。

鈴木雅光(すずき・まさみつ)

金融ジャーナリスト
JOYnt代表。岡三証券、公社債新聞社、金融データシステムを経て独立し(有)JOYnt設立し代表に。雑誌への寄稿、単行本執筆のほか、投資信託、経済マーケットを中心に幅広くプロデュース業を展開。

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