国内外の銀行で為替ディーラーとして活躍され、その華麗な取引手腕から「貴公子」と称された酒匂隆雄さん。為替ディーラーの第一人者の顔とは別に、レーシング、海外旅行、ワイン・グルメに温泉旅行と、様々な趣味をお持ちで、人生を楽しく過ごすことに関しても一流人です。
このコンテンツでは、楽しい話題や日々の生活、たまには為替マーケットについて語っていただきます。
4月になり桜が満開となり、いよいよ春だなと思われる今日この頃、街中には如何にもフレッシュマンだと分かる若人がきびきびと歩き回り、微笑ましい気がする。
何故彼らがフレッシュマンであろうかと想像出来るかと言うと、多くの女性が黒のスーツに白いシャツを着ており、また多くの男性がちょっと襟がブカブカ気味のシャツにぎこちなくネクタイを付けているからである。勿論スーツは濃紺！
どうして皆同じ格好をするんだろう？テレビで見る大手の会社の入社式で奇抜な格好をしている新入社員は居ない。例外無く上で述べた様に女性は黒のスーツに白いシャツ、そして男性は濃紺のスーツに地味なネクタイを付けている。これと違った格好をすると自分だけ"浮いた様な感じ"になってしまうのを恐れているのかな？
たった（？）47年前の自分の場合を振り返ってみたら確かに自分もブルーのスーツに（濃紺ではなかった。）割合地味なネクタイをしていた。何せ初任給が3万6千800円だったから中々高くていいスーツは買えなかったな。
2年目に昇給が有ったが確か数十円で「あほくさ！」と思ったが支店長が偉そうに「これでも君は同期でトップの昇給だったよ。」と言い放って、「銀行ってあほくさいところだなあ。」と思った。その銀行とは4年でおさらばしたが・・・
その後は2001年に退職するまで27年間外資系の銀行に勤めたが、新入社員で上の様な所謂『リクルート・ルック』の姿をした若者は居なかったな。白いソックスを履いてきたおにいちゃんに「おい、学生じゃあないんだから白いソックスは無いだろう。黒か青にしろ！」と言った事と、夏に何を血迷ったかタンクトップで来たおねーちゃんに「おい、此処は痩せても枯れても銀行なんだから袖の付いた物を着て来い！」と注意したことが有るが、外資系は緩かったんでしょうな。
話は違うが昔も「バレンタンデー」と言うものが有り、2月14日に女性からチョコレートを頂き、そして1ヶ月後の3月14日には男性がお返しをすると言う習慣が有った。（今も有るのであろう。）このお返しなるものが面倒臭くて敵わない。手っ取り早くお手軽ワインを娘にラッピングして貰って女性に渡して結構評判が良かったのだが、面倒臭い！そして大体数倍の持ち出しではないか！
所謂『義理チョコ』とやらを貰っても嬉しくもなんとも無い。其処で「オフィスでのバレンタイン・チョコの遣り取りは禁止。」とお触れを出したら、まあこれが大受け！聞いたら『何とも思っていないどころか嫌いな上司にチョコレートをプレゼントすることに辟易としていた。』と言う意見が大多数で、筆者の株が大いに上昇した。
あ、それともう一つ。『痩せても枯れても銀行』だった為、勿論全員がネクタイを着用している。ところが為替のディーリング・ルームは機械がいっぱい有って、夏は冷房を強く効かせても未だ暑い。そこで客に会わない連中はネクタイをしなくても良いと言うお触れを出した。
所謂今では普通となった『ノー・ネクタイ』の走りだった訳であるが、これもすこぶる好評であった。よく考えたら俺は『中々物分りの良い、いい上司』だったんだな!（と自分で言っていれば世話は無いか？）
そしてよく考えたら退職して既に16年が経つんだな！時が流れるのは早いものだ。
ところで会社を辞め、定時に行かなければならない所が無いので家に居る時間がどうしても長くなる。元々着る物とかお洒落には興味が無いので家に居る時は同じ様なズボンを穿き、同じ様なシャツを着て、同じ様なセーターを着る。家内が「もう少し小奇麗にしたらどうなの？」と文句を言うが余計なお世話だ。
こうやって段々物事に無頓着になっていくんだな。年は取りたくないもんだ。
酒匂隆雄 さこう・たかお
酒匂・エフエックス・アドバイザリー 代表
1970年に北海道大学を卒業後、国内外の主要銀行で為替ディーラーとして外国為替業務に従事。
その後1992年に、スイス・ユニオン銀行東京支店にファースト・バイス・プレジデントとして入行。
さらに1998年には、スイス銀行との合併に伴いUBS銀行となった同行の外国為替部長、東京支店長と歴任。
現在は、酒匂・エフエックス・アドバイザリーの代表、日本フォレックスクラブの名誉会員。
