
国内外の銀行で為替ディーラーとして活躍され、その華麗な取引手腕から「貴公子」と称された酒匂隆雄さん。為替ディーラーの第一人者の顔とは別に、レーシング、海外旅行、ワイン・グルメに温泉旅行と、様々な趣味をお持ちで、人生を楽しく過ごすことに関しても一流人です。
このコンテンツでは、楽しい話題や日々の生活、たまには為替マーケットについて語っていただきます。
第一生命経済研究所の調べによると、今年2月末時点でタンス預金が43兆円在り、この数字は前年同月比で8%増加し、それが益々増える傾向であるらしい。
タンス預金とは、現在日銀が発行している紙幣残高の99兆円から決済に使われている分を差し引いたもので、世の中に流通しないで、所謂タンスの奥に眠っている現金残高を表す。
ちょっと待てよ。我が国の総人口は2016年10月現在で約1億2千6百万人で、単純にこのタンス預金の43兆円を総人口で割ると一人当たり約34万円をこっそり(?)タンスに隠していることになるではないか!
まあこれは有り得ない話で、所謂我が国の富裕層と言われる約250万人で割ると一人当たり約1千7百万円となる。
約1千7百万円を自分の家のタンスに置くのか?
まあタンスは兎も角、統計上は大金持ちは平均約2千万円弱の現金を手元に置いていることになる。

最近金庫メーカーに、「1億から2億円の現金を入れる金庫の大きさはどれくらい?」と言う問い合わせが増えていると言う。有る所には有るもんですなあ。これはキャッシュレス化が進む海外では考えられない。アメリカなんて数ドルの買い物もクレジットカードを使う。現金はむしろ嫌がられる。
筆者がアメリカに滞在し始めの頃一度お店で100ドル札を出したら、矯めつ眇めつ透かす様にチェックしてからしぶしぶ受け取った。その理由は先ずは偽札を疑い、次は盗難を恐れるからである。我が国のように万札を束の様にして持ち歩く人は居ない。ましてや家に数千万円の現金を置くことなんて考えられない。
我が国の治安状況がすこぶる良い事が金持ち連中が多額の現金を手元に置く理由の一つであろうが、他にも将来の増税や金融当局の監視強化に対する対策の一面も有るらしい。税務署に睨まれる程の金を持ち合わせない年金生活者の吾輩には夢の様な話ではあるが、れっきとした事実でありまする。
さあ近所のコンビニのATMから3万円程引き出しにでも行って来るか・・・

酒匂隆雄 さこう・たかお
酒匂・エフエックス・アドバイザリー 代表
1970年に北海道大学を卒業後、国内外の主要銀行で為替ディーラーとして外国為替業務に従事。
その後1992年に、スイス・ユニオン銀行東京支店にファースト・バイス・プレジデントとして入行。
さらに1998年には、スイス銀行との合併に伴いUBS銀行となった同行の外国為替部長、東京支店長と歴任。
現在は、酒匂・エフエックス・アドバイザリーの代表、日本フォレックスクラブの名誉会員。
