鈴木雅光の「奔放自在」

新NISAのスタートまであと少し

2023/12/15

いよいよ新NISAが年明け1月からスタートします。従来型のNISAは、一般NISAが600万円、つみたてNISAが800万円までの非課税枠でしたが、新NISAでは「成長投資枠」と「つみたて投資枠」という2つの枠を設け、その合計で1800万円までの生涯非課税枠が設けられます。

新NISAを利用する人は結構多いかと思います。1800万円の生涯非課税枠に加え、解約・売却が自由に行えるようになったからです。旧来のNISAは、解約・売却をすると、その枠を再利用することは認められませんでしたが、新NISAではそれが認められるようになります。年末を越えてからという前提条件はありますが、解約・売却した後に出来た枠を再利用できることになったため、以前に比べると利食い・損切りもしやすくなります。

旧来のNISAから新NISAへの移行はスムーズです。すでに旧NISAで投資をしていた人は、一般NISA、つみたてNISAとも、2023年12月末以降の追加購入はできませんが、それぞれの非課税期間が終了するまでは、運用し続けることができます。当然、その間に発生した運用収益については、非課税扱いになります。

そして、2024年1月以降は、そのまま旧来のNISAで利用していた金融機関に新NISAの口座が自動的に開設されるので、つみたてNISAを使っていた場合は新NISAのつみたて投資枠で、一般NISAを使っていた場合は新NISAの成長投資枠で、改めて非課税運用ができることになります。

注意しなければならないのは、旧来のつみたてNISAを利用している人が、新NISAのスタートを機に、別の金融機関でNISA口座を開設する場合です。

たとえば、つみたてNISAで積立投資をしている場合、2023年12月末を持って旧来のつみたてNISAでの積立投資は一旦終了し、新たな積立投資は2024年1月からスタートする新NISAのつみたて投資枠に引き継がれる形になります。

この間、何もせずに放っておくと、自動的に、これまで利用してきた金融機関で新NISAをスタートさせることになってしまいます。この場合、旧来のNISA口座を開設していた金融機関に「勘定廃止通知書」もしくは「非課税口座廃止通知書」のいずれかを請求した後、新しい金融機関にそれらの書類と共に、NISA口座開設届出書、本人確認書類などを送付すれば、新しい金融機関で新NISAによる投資を再開できます。

また、新NISAでの運用を検討している人にとって気になるのは、1800万円の生涯非課税枠をどうやって埋めるか、ということでしょう。

1800万円を最短で埋めようとするならば、成長投資枠で年間240万円、つみたて投資枠で年間120万円の合計360万円が年間の投資枠になるので、5年間で枠を満たすことができます。

しかし、毎年360万円もの資金を投入できる人は、そう多くないでしょう。とはいえ、毎月3万円ずつの投資だと、1800万円の枠を満たすまでには50年が掛かります。50年もかかるようでは、30歳から新NISAで積立投資を始めたとしても、満額を積み立て終った時にはすでに80歳になってしまいます。あまり意味がありませんね。

理想を言えば、自分が定年退職をした後、それまでに築いた資産を有効活用しながら、生活資金を金融資産から捻出し、それに公的年金を合わせて毎月の生活費を賄っていくということでしょう。それを実現するためには、自分が定年退職する年齢に向けて、1800万円になるような積立プランを策定する必要があります。

たとえば60歳で定年を迎えた後、インカムゲインの取得をメインにした運用商品で投資を続けていきたいと考えているのであれば、それまでに1800万円を満たしておきたいところでしょう。

基本的に1800万円の非課税枠のうち、600万円はつみたて投資枠に認められた投資信託だけでしか運用できないので、少しややこしくなるのですが、たとえば60歳までは、成長投資枠、つみたて投資枠の両方とも、グローバル株式で運用できる投資信託やETFなどで積立投資を続け、60歳が近づいてきたら、徐々にグローバル株式で運用するETFや投資信託を解約し、その資金でインカムゲイン重視の運用商品に乗り換えるという手も考えられます。

それでも600万円はつみたて投資枠でしか運用できないので、この部分については運用商品の種類が制限され、つみたて投資枠に認められた投資信託、ETFでの運用しかできない点に注意が必要ですが、成長投資枠で買い付けているものについては、たとえば高配当利回り株式や、J-REITなどのように、年4、5%程度の配当利回りを狙える商品に移していくのです。

1800万円の満額投資で、成長投資枠の利用限度額は1200万円ですから、それを年5%の配当利回りで運用できるとしたら、毎年60万円の配当収入を得ることができます。月にすれば5万円です。このキャッシュフローを取り続ければ、元本自体を取り崩さなくて済みます。

新NISAのスタートまであと1カ月足らず。老後を見据えて、長期的な資産形成計画を立ててみてはいかがでしょうか。

鈴木雅光(すずき・まさみつ)

金融ジャーナリスト
JOYnt代表。岡三証券、公社債新聞社、金融データシステムを経て独立し(有)JOYnt設立し代表に。雑誌への寄稿、単行本執筆のほか、投資信託、経済マーケットを中心に幅広くプロデュース業を展開。

この記事をシェアする

無料会員募集中