
国内外の銀行で為替ディーラーとして活躍され、その華麗な取引手腕から「貴公子」と称された酒匂隆雄さん。為替ディーラーの第一人者の顔とは別に、レーシング、海外旅行、ワイン・グルメに温泉旅行と、様々な趣味をお持ちで、人生を楽しく過ごすことに関しても一流人です。
このコンテンツでは、楽しい話題や日々の生活、たまには為替マーケットについて語っていただきます。
ゴールデン・ウィークが終わった。
今年のゴールデン・ウィークは5月2日と6日の両日を休めば10日連続の大型連休となり、多くの人達にとって正にゴールデン・ウィーク(黄金週間)と呼んでもいい楽しいお休みだった筈である。
凡そ15年前に銀行員としての宮仕えを終え、サンデー・毎日(詰まらない駄洒落だが毎日が日曜日と言う意味らしい。先日知り合いが言い放って面白かったので使わせて貰おう)の筆者には毎日が大型連休の最中(さなか)であり、子供達が独立してジジ・ババだけの家庭となってしまった今は、別に何処かに行こうかなどとも思わない。それに何処に行っても混んでいるし....
さてこのゴールデン・ウィークの間、多くの人が休みを謳歌している間にドル・円相場は大きく動いた。
4月27と28日に開催された日銀の政策決定会合で市場の予想に反して政策変更が無く、更なる金融緩和を期待していた株式市場で株が大きく売られ、同時に円が買われ(ドルが売られた)、111.88の高値から安値107.88へと4円も暴落した。
そしてその流れは連休中にも止まらずに5月3日に更に2円以上も低い105.55迄下げ、たった4日間で6円以上も下げる事となったのである。
その後介入警戒感もあって、今週になって108円台まで戻し、ゴールデン・ウィークが始まる前から6円下げて3円戻したことになるが、こう相場が大きく動くと活発に為替取引を行っている人達にとっては、上手く行けば(例えばドルが下がると思って111円台でドルを売り持ちにしていた)Golden week(黄金週間)となるが、逆に行けば(逆にドルが上がると思ってドルを買い持ちにしていた)Bloody week(血みどろの週間)となってしまったかも知れない。
さあ此処からドル・円相場はどうなるか?
相場の行方は神のみぞ知るで、前もって予知は出来ない。予知は出来ないがファンダメンタルズ分析、テクニカル分析、需給分析、市場参加者のセンチメント分析、そして金融当局の意向の分析などを行う事によってある程度予想は出来るかも知れない。
予知と予想は違いますよ!
予知=物事が起こる前にそれを知る事。(スーパー大辞林)
予想=これから起こることについて考えを巡らし、推し量る事。前もって予測すること。また、その内容。(スーパー大辞林)
筆者の勝手な個人的分析に則って予想すると、
・ファンダメンタルズ的には105円台まで下落した理由は何ら変わっていない(ドル安&円高が進む)
・テクニカル的には上の60分足チャートを見ても分かる様に、もう少しドルが上がってもおかしくはない(ドル高&円安が進む)
・需給的にはまちまち。シカゴIMM.を代表とする投機筋はドルを売り持ち(円の買い持ち)にしており、我が国の個人投資家はドルを買い持ち(円の売り持ち)にしている。実需(輸出と輸入)は貿易・経常収支が黒字であるので当然ドルの余剰(ドル安&円高が進む)
・市場参加者のセンチメントはまちまち。115円に戻ると言う人も居るし、100円に行くという人も居る(中立)
・金融当局の意向
これは厄介である。ルー米財務長官は「現状の円相場の動きは無秩序ではない」と言い、我が国の介入をけん制する。それに対して安倍首相や麻生財務大臣は「現状の円相場の動き(円高)は投機主導で行き過ぎであり、断固とした措置を取る(介入をする)」と強気な発言をし、これがここ数日のドルの買い戻しを誘発している(安倍首相や麻生財務大臣の発言を重視すればドル高&円安であるが、「介入なんて出来っこない!」と思えばドル安&円高である)
筆者の個人的な予想は短期的にはもう一段のドル高&円安が進むかも知れないが、中長期的には再びドルが売られ、100円が割れる可能性についても注意すべきであろうかと言うものであるが、果たしてどうなるか?
クリスマスの頃には「ああ、今年はGolden year(黄金の年)であったなあ」と言えたらいいですね。

酒匂隆雄 さこう・たかお
酒匂・エフエックス・アドバイザリー 代表
1970年に北海道大学を卒業後、国内外の主要銀行で為替ディーラーとして外国為替業務に従事。
その後1992年に、スイス・ユニオン銀行東京支店にファースト・バイス・プレジデントとして入行。
さらに1998年には、スイス銀行との合併に伴いUBS銀行となった同行の外国為替部長、東京支店長と歴任。
現在は、酒匂・エフエックス・アドバイザリーの代表、日本フォレックスクラブの名誉会員。
