
国内外の銀行で為替ディーラーとして活躍され、その華麗な取引手腕から「貴公子」と称された酒匂隆雄さん。為替ディーラーの第一人者の顔とは別に、レーシング、海外旅行、ワイン・グルメに温泉旅行と、様々な趣味をお持ちで、人生を楽しく過ごすことに関しても一流人です。
このコンテンツでは、楽しい話題や日々の生活、たまには為替マーケットについて語っていただきます。
早いもので、もう3月です。年初来金融市場は大荒れで、ドル・円相場は1月29日の日銀のマイナス金利導入発表の日からたった2週間で10円以上も円高が進み、2015年の1年分の高値と安値の幅の10円をあっと言う間にこなしてしまった。
聞いてみるとプロのディーラー諸君もこの落ち着きのない動きに翻弄されて苦労しているらしい。彼らの宿命は常にポジションを保持する事を期待されており、ドル・円相場が上がればドルを買い持ちにして儲けることを期待され、下がればドルを売り持ちにして儲けることを期待される。
多くのディーラーが年初には"2016年はアメリカが利上げし、日本は金融緩和政策を続けて日米金利差が拡大するのでドル・円相場は上がる。"と思っていたので、ドルを買い持ちしていた。
ところがどっこい1月はドル・円相場は徐々に値を下げ、20日には116円を一瞬切った。彼らは順張りが得意だから相場が下がれば追っ掛けて売り、相場が上がれば追っ掛けて買う傾向がある。
そして29日に日銀がマイナス金利導入を発表してドル・円相場は高値121.68まで戻し、今度は逆に120円を超えたあたりから再びドテンしてドルの買い持ちに転じた。
「あーあ、やっぱり金利差が拡大して125円に行くんだな」と思い出したのも束の間、たった2週間でドル・円相場は10円も下げて111円をも割り込んだ。
買ってやられ、売ってやられ、また買ってやられ、最後にまたまた売ってやられてしまった。

その点我々個人投資家は相場展開が嫌だな、とかこの相場はよく分からないな、と思えば手を出さなければいい。「No risk, No return.」(リスクを取らなければ利益は生まれない)と言うが、「High risk, High return.」(儲ける為に大きなリスクを取らなければいけない)と思って無理をすると大概結果は良くない。だから我々個人投資家は「Managed risk, better return.」(リスクをマネージして程々の利益を狙う)を考えたらいかがかな、と思う。
日経平均株価は3月に入ってジリジリと値を上げ、この1週間で約1千円も上げた。聞くところによると年度末に向けて我々の年金を運用している年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が株を買って意図的に株価を吊り上げているらしい。(ドレッシングと呼ばれる)
2015年3月の年度末の日経平均株価の終値は約19,200円で、現在の1万6千円台では巨額の運用損を計上しなくてはならず、7月の参院選挙を控えて安倍内閣が何とかして少なくとも3月末までに株価を上げたくて仕方ないらしい。でも昨日と今日だけで既に300円近くも下げている。
どうなんだろう?
実態を伴わない株価の上昇(しかも意図的な)は後ほど痛いしっぺ返しを喰らうのではないかなあ?ドル・円相場は何れ再び下がると思っているのだが株価が上がればリスクオフとやらで円が売られてドル・円相場が上がる傾向が有る。このプロも苦労している難しい相場。
我々素人は無理をしないで上手にそして丁寧にやりましょう!

酒匂隆雄 さこう・たかお
酒匂・エフエックス・アドバイザリー 代表
1970年に北海道大学を卒業後、国内外の主要銀行で為替ディーラーとして外国為替業務に従事。
その後1992年に、スイス・ユニオン銀行東京支店にファースト・バイス・プレジデントとして入行。
さらに1998年には、スイス銀行との合併に伴いUBS銀行となった同行の外国為替部長、東京支店長と歴任。
現在は、酒匂・エフエックス・アドバイザリーの代表、日本フォレックスクラブの名誉会員。
