
国内外の銀行で為替ディーラーとして活躍され、その華麗な取引手腕から「貴公子」と称された酒匂隆雄さん。為替ディーラーの第一人者の顔とは別に、レーシング、海外旅行、ワイン・グルメに温泉旅行と、様々な趣味をお持ちで、人生を楽しく過ごすことに関しても一流人です。
このコンテンツでは、楽しい話題や日々の生活、たまには為替マーケットについて語っていただきます。
トレトレの読者の多くの方々が色々な投資にご興味をお持ちであろうなと思う。
当然為替相場、特に円相場の動向にはご興味をお持ちどころか、昨今の円高に気が気ではないと感じていらっしゃる方も多いかも知れない。
ドル・円相場は1月29日に驚きの日銀のマイナス金利導入の発表された当日、高値121.68を付け、その10日後に建国記念日で我が国の為替市場がお休みの時に安値110.95を付け、たった2週間足らずの間に10円73銭暴落した。
2015年のドル・円相場の値幅は1月に付けた安値115.84と6月に付けた高値125.85の10円01銭で、何と実に2週間で昨年の1年分の値幅をこなしたことになるのだ。
下のチャートは1月29日から2月22日午後4時頃までのドル・円相場の日足チャートを表した物であるが、まあ見事にズンズンと値を下げた。
2月15日と16日には114.73と114.87迄戻したがその後はドルの頭が重く、ついこの前まで市場で信じられていた115円を底(サポート=下値抵抗線)とし、125円を天井(レジスタンス=上値抵抗線)とした『黒田レンジ』がもろくも崩れ、今は115円のサポートが逆にレジスタンスとなったかも知れない。

年末から年始に掛けて『2016年のドル・円相場はどうなる?』と言う質問に対して錚々たる有名なエコノミストやストラタジストが『135円に行く』、逆に『110円に行く』と真逆の意見を述べていたが、各々の意見には説得力があった。
「そうだよな、アメリカは利上げをし日本は緩和政策を続けるんだから135円に行くかも知れないな」と思ったし、「いや、金利差拡大を見越して2012年から円安が進んでおり、80円から120円は実に50%の円安である。Enough is enough.(ちょっとやり過ぎだよな)そろそろ円高に転換するだろうな」とも思った。
そして結果的にはあっと言う間の円高が進んだが、さあ此処から何方に行くのだろうか?
此処からも意見は真っ二つに分かれる。
・日銀は金融緩和(マイナス金利の拡大)を続け、再び円安に戻る、と言う円安派。
・我が国の経常収支は現在ひと月約1兆円の黒字と成っており、余剰のドルが売られて円高傾向が続く、と言う円高派。
筆者は個人的には後者の円高派である。とは言え、相場は相場。実際に何方に行くかは神のみぞ知る。
円安に行くとしてもこのままさーっと125円に戻るとも思えない。
逆に円高に行くとしても此処3週間の動きの様にさーっと105円に下がるとも思えない。
もしFXを投資手段の一つとして使っていらっしゃる方は、相場の動きに上手く乗じて着実に、そして堅実にやって参りましょう!

酒匂隆雄 さこう・たかお
酒匂・エフエックス・アドバイザリー 代表
1970年に北海道大学を卒業後、国内外の主要銀行で為替ディーラーとして外国為替業務に従事。
その後1992年に、スイス・ユニオン銀行東京支店にファースト・バイス・プレジデントとして入行。
さらに1998年には、スイス銀行との合併に伴いUBS銀行となった同行の外国為替部長、東京支店長と歴任。
現在は、酒匂・エフエックス・アドバイザリーの代表、日本フォレックスクラブの名誉会員。
