国内外の銀行で為替ディーラーとして活躍され、その華麗な取引手腕から「貴公子」と称された酒匂隆雄さん。為替ディーラーの第一人者の顔とは別に、レーシング、海外旅行、ワイン・グルメに温泉旅行と、様々な趣味をお持ちで、人生を楽しく過ごすことに関しても一流人です。
このコンテンツでは、楽しい話題や日々の生活、たまには為替マーケットについて語っていただきます。
皆様、明けましておめでとう御座います。本年最初の「畢生の遊楽三昧」となります。どうぞ本年も宜しくお願い致します。
ご存じだと思うが、年明けの金融市場は大混乱となりお屠蘇気分は吹っ飛んだ。1月4日の大発会より日経平均株価は東証始まって以来の5日連続の下げとなり、年末の終値18,450.98から先週末は17,697.96まで約4％も下げている。
また連休明けの今日の午前中も約433円（2.45％）も下げて現在（1月12日午後1時現在）は17,266近辺で取引されている。
この背景には中国情勢の不安、原油価格の下落、そして北朝鮮の水爆実験騒動などの地政学的リスクの増大などが挙げられるが、この株価下落に影響されて殆どの通貨に対して円高が進んだ。
ドル・円相場は年初の120円台から昨日のニューヨーク市場では一気に116円台まで下落し、我が国の個人投資家に人気が有る豪ドル・円も年初の87円台から80円台まで下落した。
2016年が始まって未だ10日しか経っていないが、波乱の年を予感させる様な激しい動きでありますな。
このまま株価やドル・円相場が下げ続けるとは思わないが、上で挙げた状況が劇的に改善しない限り急に株価が2万円台とかドル・円相場が120円台まで戻るとも思えない。今年の干支は申で、証券業界では『申年は荒れる』と言う格言があるそうな。為替の世界にはそんな物は無い。
金利が殆どゼロの円から金利が高い通貨にシフト（低金利の円を売って、高金利の通貨を買う）するのは極めて健全な商取引ではあるが、年率数パーセントの金利差を狙ってドカンと元本が棄損したのでは元も子も無い。たとえば、1週間で87円台から80円台まで下落した豪ドル・円は（87ー80）／87＝約8%で年率に直すと実に8%×52週（1年）=416％となる事を忘れてはいけない。
しかもこれはレバレッジが1倍で！！！！
投資の世界ではよく「No risk, no return.」（リスクを取らなければ利益は生まれない）と言う。そして同時に「High risk, high return.」（高い利益を望むのなら、大きなリスクを取らなくてはならない）とも言う。年初からのこの大荒れ相場の時は、大きなリスクを取るのは危険である。
「Managed risk, better return.」（リスクをマネージして、より良い利益を目指す）と言うのはどうだろうか？筆者の専門である為替の世界ではリスクをマネージすると言う事は「ちゃんと損切りをすること」を意味する。
上がると思えば買えば宜しい。下がると思えば売れば宜しい。 ただし、努々「自分がやる事が常に正しい」と思わないこと！常に正しいのは市場である。自分が上がると思って買って、もし価格が下がれば自分が間違いで市場が正しいのである。その時はきっぱりと諦めて捲土重来を期すればいい。
今日が駄目でも明日がある。
明日が駄目でも明後日がある。
今週が駄目でも来週がある。
来週が駄目でも再来週がある。
一番良くないのは自分が間違った事を認めないでズルズル損失を引き摺ってしまい、気が付いた時はにっちもさっちも行かなくなってしまう事である。年初からお説教の様な話になってしまったが、ご容赦下さい。
今年も頑張りましょう！
酒匂隆雄 さこう・たかお
酒匂・エフエックス・アドバイザリー 代表
1970年に北海道大学を卒業後、国内外の主要銀行で為替ディーラーとして外国為替業務に従事。
その後1992年に、スイス・ユニオン銀行東京支店にファースト・バイス・プレジデントとして入行。
さらに1998年には、スイス銀行との合併に伴いＵＢＳ銀行となった同行の外国為替部長、東京支店長と歴任。
現在は、酒匂・エフエックス・アドバイザリーの代表、日本フォレックスクラブの名誉会員。
