若林栄四のフライングバックジャパン

若林栄四Flying Back Japan! 033

2019/10/09

2019年---。
米中貿易戦争や米朝問題、イギリスのハードブレクジット問題、中国のバブル崩壊懸念など、マーケットにとってはさまざまなネガティブ要因が重なる反面、株価は比較的安定して推移してきました。
とはいえ、なかなか抜けないのが、NYダウの7月16日につけた2万7398ドル。年内、さらなる高値更新はあるのか。そして米国経済は今後どうなるのか。ワカバヤシFXアソシエイツ代表の若林栄四氏に、今後の動向を伺いました。

わかり易いWトップをつけたNYダウ

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米国株の行方をどう見ていますか。

若林

為替やら金やら、いろいろなマーケットでそれぞれの動きはありますが、いずれにしてもカギを握るのは米国株の行方だと思います。米国株がさらに強く上昇するなら米ドルは買われるでしょうし、米国株が下げれば米ドルは売られます。

そして結論から申し上げれば、米国株は下げます。

NYダウは今年7月16日に2万7398ドルの高値を付けたのち、8月15日には2万5339ドルまで調整しました。そこから再び上昇機運に乗り、9月12日には2万7306ドルまで上昇してダブルトップを形成しました。

若林

これはシナリオ通りの展開です。実はダブルトップは昨年も形成しました。2018年1月26日の2万6616ドルと同年10月5日の2万6951ドルがそれです。この時はダブルトップを形成した後、12月28日には2万1712ドルまで下落し、いよいよ本格的な下落局面かと思わせつつも、そこから2019年7月16日にかけて上昇しました。

2018年のダブルトップ形成は、やや日柄が狂ったわけですが、今回のダブルトップは日柄も非常に綺麗なので、いよいよ本格的な下げ局面が到来するのではないかと見ています。

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どのように日柄が綺麗なのでしょうか。

若林

2009年3月に米国株はリーマンショック後のボトムをつけました。この時のNYダウは6469ドルです。そこから黄金分割でやると、1日28日とした場合の135カ月が3780日で、7月26日が該当します。なぜ135カ月なのかというと、これを日数に換算した3780日がちょうど540週になるからです。540が何を意味するのかということですが、ペンタゴン、つまり正五角形の内角は108度であり、内角の和が540度になります。したがって黄金分割で日柄を計算する場合、540というのは非常に重要な数字になるのです。

ただ、NYダウについては他の日柄の影響もあったので、それよりも少し早い7月16日に2万7398ドルの高値をつけたわけですが、S&P500やNASDAQは7月26日に高値をつけました。

天井の日柄だったというわけです。事実、NYダウは7月16日に高値をつけた後、8月15日には2万5339ドルまで下落しました。

そして、そこから9月12日にかけて2万7306ドルまで戻したわけですが、これはリーマンショックの前に株価が高値をつけたサブプライムバブルとの関連性があります。2007年10月11日に1万4198ドルの天井をつけた後、2009年3月までNYダウはメチャクチャに下げたわけですが、ちょうどその安値からの日柄が9月に来たのです。

米国バブル崩壊カウントダウン

若林

なぜ、その日柄が重要なのかと言うと、私は11年11カ月という日柄をとても重要視しているからです。何かというと、高値をつけてから11年11か月後に再び高値をつけにいくケースが多いのです。2007年10月11日からの11年11カ月目を計算すると、2019年9月10~15日あたりになります。NYダウが9月12日に2番目の天井をつけたのは、こうした日柄の計算によれば必然といっても良いでしょう。

――

米国経済はいよいよバブル崩壊へと向かうのでしょうか。

若林

米国経済は間違いなくバブルです。バブルは必ず崩壊します。NYダウは9月12日に二番天井をつけて下げたわけですが、この後は大きな日柄もないので、恐らくこのまま相場は下げるでしょう。

今年は恐慌の始まりです。1637年のチューリップバブルからの382年目が今年です。19世紀、そして20世紀に起こった恐慌は、すべてチューリップバブルからの黄金分割の日柄が影響しています。だから21世紀の大恐慌も1637年からの綺麗な日柄で来るはずだと思います。それが一番美しい形になるのが2019年なのです。だから、2019年7月にどうも米国の株価は天井をつけたのではないかと考えているのです。そして、9月にダブルトップを形成したのですから、いよいよここから下げ局面に入るというのが、今の米国株価の見立てです。

確かに現象面だけを見れば、米中貿易問題やトランプ大統領の弾劾、ブレクジット問題などいろいろネガティブな要因があるわりには、株価は下げることなく踏みとどまっています。米国の景気も意外と強い。ひょっとするとまだ上がるのではないかという期待を抱く人もいるとは思いますが、そんなことには関係なく、米国の株価は下げます。ここまでお金をパンパンになるまで膨らませたわけですから、それはどこかで必ず縮みます。お金を縮ませるためには、株価を暴落させるのが一番手っ取り早い。

トランプの対抗馬はエリザベス・ウォーレン

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米国大統領選挙が2020年に行われます。誰が大統領になるのかで米国経済も大きく左右されるのではと思うのですが、どう見ていらっしゃいますか。

若林

共和党は現職のトランプが立つに決まっていますが、民主党は3人の候補者の争いになっています。ジョー・バイデン、バーニー・サンダース、そしてエリザベス・ウォーレンです。誰が民主党の大統領候補になるのかですが、今回の大統領選挙は右と左のポピュリストの戦いといっても良いでしょう。右のポピュリストは言うまでもなく現職のトランプ大統領です。

では、左のポピュリストは誰なのかですが、ジョー・バイデンは中道なので対象外。バーニー・サンダースは、右か左か以前に78歳という高齢ですから、健康面で不安がある。となると、エリザベス・ウォーレンが浮上してきます。

彼女はシャープな頭脳を持ち、ハーバード大学ロースクールの教授として活躍し、かつ子供の頃から苦労人です。だから貧困層にも受けますし、ハーバードの教授ということでインテリ層の人気も高い。しかもMFA(メディカル・フォー・オール)をはじめとして、あらゆる米国の問題について政策提言を行っています。

特にMFAについては、日本と同じように政府管掌保険にしようということです。現在、65歳以上を対象にしている保険を国民全員に広げるというものですが、これを行うにはお金が必要です。無効10年間で25兆ドルから30兆ドルは必要と言われているのですが、彼女はそれを実現させるために金持ち増税をすると言っています。資産5000万ドル以上の人からはその2%を、10億ドル以上の人からはその3%を毎年資産税で徴収すると明言しています。

特に彼女は今まで甘い汁を吸い続けた一部の大金持ち、ウォールストリート、保険会社、そして製薬会社をターゲットにしており、MFAに絡めて税金を取る考えですから、これから本格化する大統領選挙戦において、エリザベス有利ということになれば、間違いなくウォールストリートや製薬会社の株価は暴落するでしょう。

今後の米中関係・英国EU離脱の行方

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米中関係はやや落ち着いてきたようですが、今後の行方はどうなるのでしょうか。

若林

トランプが何を言っても関係ないでしょう。中国との貿易摩擦に関連していろいろな発言をしますが、あれは言い過ぎです。1年に2回くらい言えば効果的でしょうが、あれだけ毎日のようにツイッターなどで発言を繰り返していたら、見透かされます。

でも、あのやり方を本人はまったく変えるつもりはないでしょうし、米国は徹底的に中国をやっつけるのが国論になっていますから、ここまで踏み込んだ以上、引くことはできません。中国をやっつけろというのは、共和党も民主党も同じですから、中国からすればますます逃げ場が無くなるわけです。習近平政権は強気を装っていますが、内情はガタガタだと思います。

――

ブレクジットで混乱するイギリス、欧州は今後どうなるのでしょうか。

若林

ブレクジットがどうなるのかは、誰にも分からないでしょう。日柄では、10月末あたりからどうもユーロ高が進むのではないかとみています。つまり米ドルは下げる。10月末がブレクジットの期限で、どうやらハードブレクジットになる可能性が濃厚ですが、それによってユーロ/ポンドがどうなるのかは、今の時点では何とも言えません。

ドイツの景気もガタガタですしね。ただ、日柄的にはユーロ高です。これは、欧州の景気がどうなろうと、ユーロが上がるわけです。材料なんて後からいくらでも付けられますから、ユーロは上昇し、ついにユーロクライシスが起こります。今のところユーロ安だから、ユーロ加盟国のなかで経済が弱い国でも何とかユーロに加盟していられる。

ところが、ユーロ高になったらそうも言えなくなりますから、ユーロから脱落していく国がどんどん出てくるでしょう。最終的にユーロは強者連合になるはずです。

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ありがとうございました。

若林栄四  わかばやし・えいし

ワカバヤシ エフエックス アソシエイツ代表

1966年東京銀行(現、三菱東京UFJ銀行)入行。シンガポール支店、本店為替資金部及びニューヨーク支店次長を経て勧角証券(アメリカ)執行副社長を歴任。現在、ニューヨークを拠点として、ファイナンシャル・コンサルタントとして活躍する傍ら、日本では株式会社ワカヤバシ エフエックス アソシエイツ(本邦法人)の代表取締役を務める。
著書:
『黄金の相場予測2016 覚醒する大円高』(日本実業出版社/2016年2月)
『黄金の相場予測2017 ヘリコプターマネー』(日本実業出版社/2017年3月)
・最新刊 黄金の相場予測2019 パーフェクトストーム』(日本実業出版社/2019年7月)、好評発売中。

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