トランプ対マスク
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トランプ大統領とイーロン・マスクがついに対立。財政政策や市場への影響も無視できず、ドル円は再び波乱含み。今後の米中関係にも要注目です。
2025年6月9日号
あれだけ仲の良さそうに見えたトランプ大統領とイーロン・マスクが仲違いをしたらしい。
発端となったのはトランプ大統領が「Big, Beautifull Bill.」(大きくて美しい法案)と称して推進する税制法案を、イーロン・マスクが「巨大で、理不尽で、利権まみれの議会歳出法案。」とこき下ろしたことにある。
彼は「この法案に賛成票を投じた者たちは恥を知れ。自分たちが間違ったことをしたのは分かっている筈だ。分かっているだろう。」と続けたが、この法案は5月に僅差で米下院を通過したが、成立には上院での承認が必要だ。
これにはあの鼻っ柱の強いトランプが黙っている訳も無く、イーロン・マスクが所有する企業との政府契約を打ち切り、3月に購入した最新の電気自動車TESLAを売り払うぞと脅した。
イーロン・マスクとしてみれば、政府効率化省(DOGE)を任され、2026年7月まで政府機関の縮小や廃止、年間5000億ドルの以上の歳出削減、国際機関への資金供与の削減、政府職員の早期退職を募り人員削減、金融規制の緩和などを目標としていたのに、そのやり方の強引さに非難が殺到して先週のレポートで話題にした「TACO」(トランプは何時もビビる)のせいでトランプが及び腰となり、イーロン・マスクに引導を渡したことから二人の間で確執が始まった。

昨年の大統領選で莫大な資金援助をしたマスクはトランプを、「Ingratitude」(恩知らず)と罵り、来年の中間選挙でトランプ人気を落とす為に莫大な資金を投入して新党を立ち上げると意気込むが、片や大統領として絶大な権力を持ち、もう一方は億万長者で莫大な金を持つこの二人のいがみ合いは単なる個人的な不和ではなく、アメリカの財政政策や経済に多大な影響を及ばす可能性も有り、世界の金融市場の不確実性は増して市場のVolatility(変動率)も高まり、筆者に言わせれば、「矢張り、ドルは買えない。」と言うことになる。
イーロン・マスクの指摘を待つまでもなく、アメリカの財政赤字はGDPの約7%にも達しており、長期金利が再び上昇して「悪い金利上昇」が起きる可能性が高い。
先週末、10年債利回りは再び4.5%の大台を突破した。
週末発表された5月の米雇用統計の非農業部門雇用者数が市場予想を上回り、雇用情勢は市場が考える程悪化はしていないと取られてニューヨーク株式市場の3指数とも上昇したが、トランプ大統領はパウエルFRB.議長に対して政策金利を1%引き下げるべきだと主張した。
トランプ関税による物価への影響と雇用への影響を注視したいパウエル議長にとって、今回の雇用統計の数字は利下げのタイミングを計る為の時間的猶予を貰った形になったが、トランプの苛立ちは相当なもので、来年のパウエル議長の任期満了を前にして、自分のお気に入り(当然ハト派的で利下げに積極的。)のケビン・ウオーシュ現FRB理事を次期FRB議長とする自分勝手なアイディアを隠そうともしない。
要するに自分の言う事を聞く「影のFRB議長」を作ろうとしている。
トランプは4月に、パウエル議長を「一刻も早く解任すべきだ」と主張して、ドル安、株安、そして債券安(金利上昇)のトリプル安が起きたことを忘れてしまったらしい。
それが再び起きたら、またぞろTACOとなって収拾を図るか?
まあ、やっていられない。
先週、トランプと中国の習近平主席が電話会談を行ったらしい。
会談内容については知る由も無いが、どうやらアメリカはレア・アースの在庫が枯渇し始めて、何とかレア・アース産出世界一の中国からの輸入を拡大(再開?)したいらしい。
トランプの身勝手さには呆れるが、実さえ取れればどうでも良いのであろう。
このニュースを受けて週開けはリスク・オンとなって株価、ドル共に上伸するかと思いきや、月曜日午後1時半現在で日経平均株価は凡そ+400円で取引されているが、ドル円相場の頭は重く、144.40台で取引されている。
矢張り市場はいつ何時、トランプの不規則発言が飛び出して米中関係が再び悪化するかも知れないとの懸念を抱いているのであろう。
ドル円相場はここ数週間は142円から146円の間を行ったり来たりする、レンジ相場の感が有る。
中期的なドル安のトレンドは意識してコアのドル・ショートのポジションを持ちながらも、下がった所ではドルを買い戻し、ドルが上がった所では再び売り戻すと言うレンジ取引が上手くワークしている気がするが、基本的には「Sell on rallies」(上がったら売る)と言う戦略は不変である 。
シカゴ・IMMが12億ドル分のドル・ショートを減らしたが、依然として132億ドルのショート・ポジションを保持している。
我が国の個人投資家は相変わらず、10億ドルのドル・ロングのまま。

個人投資家残高
前週 | 6月2日付け | 比較 |
+14億ドル | +10億ドル | -4億ドル |
@142.57 | @144.03 | +1.46 |
シカゴ・IMM
前週 | 5月27日付け | 比較 |
-144億ドル | -132億ドル | +12億ドル |
@142.83 | @142.68 | -0.15 |
今週のテクニカル分析
見立てはレンジ取引を意識しており、142を下切れば更なる下落、145.50を上切れば更なる上昇を見る。
今週のレンジ
ドル円:142.00~145.00
ユーロ円:163.00~166.00



酒匂隆雄 (さこう・たかお)
酒匂・エフエックス・アドバイザリー 代表
1970年に北海道大学を卒業後、国内外の主要銀行で為替ディーラーとして外国為替業務に従事。
その後1992年に、スイス・ユニオン銀行東京支店にファースト・バイス・プレジデントとして入行。
さらに1998年には、スイス銀行との合併に伴いUBS銀行となった同行の外国為替部長、東京支店長と歴任。
現在は、酒匂・エフエックス・アドバイザリーの代表、日本フォレックスクラブの名誉会員。
公式ブログ:酒匂隆雄が語る「畢生の遊楽三昧」
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