トリプル安
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トランプ発言や関税政策の迷走が続く中、米国市場で「債券安・株安・ドル安」のトリプル安が進行中。ドル離れの兆しも見逃せない!
2025年5月26日号
2週間前の週末、米中の突然の関税交渉進展のニュースで 週明けの東京市場でドル円相場は148.65迄吹き上がったが、市場が落ち着きを取り戻すにつれドルは本性(?)を現し始め、先週末は安値142.42迄下落した。
今週末も似た様な事が起きた。
トランプ大統領は金曜日、EU(欧州連合)に対して6月1日から50%の関税を課す考えがあると表明し、これが一段のドル安を促したが、またまた週末にフォンデアライエン欧州委員長が「トランプ米大統領と良好な電話協議を行った。EUには協議を速やかかつ決定的に前進させる用意がある。」と述べたことを受けてトランプ大統領が態度を一変して、EU.への50%関税の7月9日までの延長に同意したとのニュースが伝わるとドル円相場は143.07迄上昇したが長続きはせず、直ぐに金曜日の終値レベルである142.60近辺まで下落している。

トランプ大統領は思い付き発言を多発し、それに対する各国の反応に応じてまたトランプ大統領が思い付き発言をすると言う状態が続き、市場が一々それに反応すると言うのには辟易とするが、今朝もそうであるが大分市場の反応が落ち着きつつある。
と言うよりは、市場がもっと冷静にファンダメンタルズに則った反応をし始めたのではなかろうか?
此処で言うファンダメンタルズとは、アメリカの実態経済の事である。
公の消費者物価指数(CPI)こそ前年比2.3%と落ち着きを見せるが、先日も筆者自らが体験したがアメリカの実態の物価動向はそんなものではなかった。
チップも多めにやらないと嫌な顔をされるし、関税騒動でこれから間違いなくアメリカの物価は上がって行くと断言する。
そして大衆迎合が好きなトランプ大統領の減税案のせいで政府の財政支出は拡大する。
当然長期金利は上昇するであろう。
既にその兆候は表れており、米長期金利は上昇傾向にあって10年債利回りは再び4.5%の大台を超えた。
長期金利上昇に伴い株価は下がるが、ドルは金利上昇にも拘わらず上がらないどころか、下がる。
米長期金利とドル円相場のデカップリングが起きつつあるのだ。


その理由は明快で、長期金利の上昇が債券売りによるものだからである。
長期金利の上昇=ドル買いとはならず、債券売り=ドル売りとなっているのだ。
トランプ大統領による不透明な関税政策や先日のムーディーズによる米国債券の格下げなどにより静かながらも、確実に債券安、株安&ドル安のトリプル安が起きつつある気がする。 下の表は先週の米10年債利回り、主要株価、そして主要通貨の動きを表しているが、10年債利回りが4.5%を超える上昇(債券価格は下落)を見せている間、株価は2%以上下落し、ドルは主要通貨に対して此方も2%近く下落している。
通貨・銘柄 | 5月16日 | 5月23日 | 変化 |
---|---|---|---|
米10年債利回り | 4.445% | 4.509% | +0.064% |
NYダウ | 42,654.74 | 41,603.07 | -2.50% |
S&P | 5,958.38 | 5,802.82 | -2.60% |
ドル円 | 145.63 | 142.57 | -2.10% |
ユーロドル | 1.1160 | 1.1364 | +1.80% |
ポンドドル | 1.3282 | 1.3533 | +1.90% |
豪ドルドル | 0.6404 | 0.6495 | +1.40% |
徐々に、「ドル離れ」が起きつつある様な気がしてならない。
ここ数日、海外のSovereign Funds(政府系ファンド)のみならず、午前10時の仲値設定に向けて大手邦銀がまとまったドル売りを持ち込む傾向が見られるが、我が国の似た様なファンドが同じくじわじわとドル離れ、或いはヘッジを掛けているのかも知れない。
こうなると、決済通貨としての「安いドル」は望むが、基軸通貨としての「強いドル」を望むベッセント財務長官にとっては、日本を始め対米貿易黒字国に敢えてドル安政策を望む必要は無い。
寧ろ急激なドル安によるトリプル安は避けたいと言う思惑の方が強いかも知れない。
だから台湾、韓国、そして日本の外交代表がわざとらしく、「為替の話は出なかった」と白々しい話をするのであろう。
わざとらしくて滑稽である。
シカゴ・IMMの積極的な姿勢は変わっていない。
先週は前週の終値から3円60銭もドル安&円高が進んだにも拘わらず、保持する円ロング&ドルショートのポジションは僅か、1億ドルの減少に留まっている。
よっぽど更なるドル安&円高進行に自信を持っているのであろう。

個人投資家残高
前週 | 5月19日付け | 比較 |
+6億ドル | +8億ドル | +2億ドル |
@145.37 | @145.63 | +0.26 |
シカゴ・IMM
前週 | 5月20日付け | 比較 |
-145億ドル | -144億ドル | +1億ドル |
@144.87 | @144.87 | -3.60 |
筆者も彼らと同じ相場観を抱いており、依然としてドルの先安観を抱きながら、ドルが上がれば売ると言うSell on rallies.の戦略を続けたい。
今週のテクニカル分析の見立ては更なるドルの下落に注意。
今週のレンジ
ドル円:140.50~143.50
ユーロ円:161.50~164.50



酒匂隆雄 (さこう・たかお)
酒匂・エフエックス・アドバイザリー 代表
1970年に北海道大学を卒業後、国内外の主要銀行で為替ディーラーとして外国為替業務に従事。
その後1992年に、スイス・ユニオン銀行東京支店にファースト・バイス・プレジデントとして入行。
さらに1998年には、スイス銀行との合併に伴いUBS銀行となった同行の外国為替部長、東京支店長と歴任。
現在は、酒匂・エフエックス・アドバイザリーの代表、日本フォレックスクラブの名誉会員。
公式ブログ:酒匂隆雄が語る「畢生の遊楽三昧」
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