酒匂隆雄の「為替ランドスケープ」 

次は日銀政策決定会合

2025/12/15

> 無料のFX口座開設でお肉・お米のいずれかゲット!


今年最後となるFOMC.が開催され、トランプ大統領の執拗な利下げ要求に抗って、利下げはするものの追加利下げには慎重であるとのスタンスを変えず、想定内の利下げ行われた。

2025年12月15日号

今年最後となるFOMC.が開催され、市場予想通りに3回連続で0.25%の利下げが行われて政策金利であるFederal Funds Rate.が3.50~3.75%となった。

利下げは想定内で、FOMC.後のパウエルFRB.議長の記者会見に注目が集まっていたが、パウエル議長は9月の利下げ決定後の記者会見では、“今回はRisk Management.としての利下げである。”と発言し、また10月には“12月利下げは確実なものではない。それからはほど遠い。”と発言して、トランプ大統領の執拗な利下げ要求に抗って、利下げはするものの追加利下げには慎重であるとのスタンスを変えず、市場では“タカ派的・利下げ。”=(利下げは行うものの、以降の利下げに対しては慎重である。)なる言葉が生まれて、市場は今回も同じ様な文言が出ることを期待していた。パウエル議長はFOMC.後の会見で、

-インフレ率は依然としてやや高い。

-雇用の下振れリスクは最近高まっているようだ。

-FRBは会合ごとに決定を下す。

-FRBは経済の動向を見守る態勢にある。

-1 月のFOMC. 迄に多くのデータが得られるだろう。

と述べて、依然として政策変更はData dependent.=(データ次第である。)とし、今後の経済指標を見極める姿勢を示したことを市場は何方かと言うとハト派的と捉えて、長期金利とドルは下げ、株価は上昇した。

ドル円は一時155円を切るドル安&円高が進んだが、次は今週18日~19日の予定で開催される日銀政策決定会合と、会合後の植田日銀総裁の記者会見が注目される。

先週末、主要新聞の殆どが大きな見出しで、“日銀、0.25%の利上げを決定。”と述べて、一斉に利上げを規制事実の様に報じたが、これは間違いなく日銀か政府サイドからの利上げに対する地ならしの為のリークと考えて良かろう。

そして重要なのはFOMC.後のパウエルFRB.議長の記者会見と同じく、決定会合後の植田日銀総裁の記者会見の内容である。

市場では、利上げは今回限りで当面は様子見になるとの予想が多かったが、植田総裁が実質金利の算出方法のインフレ率基準を、これまでの日銀の予想物価(2.0%)から消費者物価指数(CPI)に置き換えた発言をし、この新方式では、ターミナルレートが下限の1.00%付近から上限の2.0%台になるとの憶測も台頭しており、現在の実質金利がマイナスになっていることで、来年以降も日銀が利上げを継続するであろうとの議論が広がり始めた。

10月、ベッセント米財務長官が片山財務相との会談後に“アベノミクス導入から12年が経過し、状況は大きく変化していることから、インフレ期待を安定させ、為替レートの過度な変動を防ぐ上で、健全な金融政策の策定とコミュニケーションが果たす重要な役割を強調した。”との外圧とも取れる発言を受けて、高市政権が利上げを認め、日銀も利上げを正当化する為に実質金利の算出方法を変更したとも考えられる。

何れにせよこのひと月で日銀の利上げに関しては、

-年内は無理。

との大方の予想から、

-ほぼ利上げは織り込み済み。

となり、

-もしかしたら2026年も利上げ継続。

と変化しつつある。

FRB.が2026年も利下げを継続し、日銀が利上げを継続するなら、日米金利差は確実に縮小する。

ドル円相場には下落圧力が掛かっても不思議ではない。

先週、高市首相は片山財務相と同様に“過度な変動や無秩序な動きには必要に応じて適切な対応を取る。”と円安を牽制する発言をしており、介入にも警戒を続けたい。

神田前財務官が2022年9月に就任後最初となる24年ぶりに行った円買い&ドル売り介入は、日銀政策決定会合直後であった。

そして、

-政府として過度な変動を憂慮しており、先ほど断固たる措置を取った。

-足元の為替市場では投機的な動きも背景に急速で一方的な動きがみられている。

-引き続き為替市場の動向を高い緊張感を持って注視しつつ、対応には万全を期したい。

とのコメントを発し、その後総額25兆円の円買い&ドル売り介入を行ったことは未だ記憶に新しい。

首相、財務相が“適切な対応を取る。”と明言しているのだから、注意を怠らないでいることは肝要であろう。

今週は何と言っても日銀政策決定会合と会合後の植田総裁の記者会見に注目が集まるが、年末に向けて市場の流動性は低くなり、自ずから市場のボラティリィティーは増して、思わぬ方向に相場が動く危険性が有る。

今朝方発表された12月日銀短観によると、事業計画の前提となる想定為替レート(全規模・全産業)は、2025年度通期で1ドル=147.06で、9月調査(145.68)から円安方向に修正された。

相変わらずのポジション・トークになるが、どう見ても現状の155円と言うのはドル高&円安過ぎると思うのだが….

今週のテクニカル分析

ドルの下落を予想。

今週のレンジ

ドル円:153.00~156.00
ユーロ円:180.00~183.00

酒匂隆雄

酒匂隆雄 (さこう・たかお)

酒匂・エフエックス・アドバイザリー 代表
1970年に北海道大学を卒業後、国内外の主要銀行で為替ディーラーとして外国為替業務に従事。
その後1992年に、スイス・ユニオン銀行東京支店にファースト・バイス・プレジデントとして入行。
さらに1998年には、スイス銀行との合併に伴いUBS銀行となった同行の外国為替部長、東京支店長と歴任。
現在は、酒匂・エフエックス・アドバイザリーの代表、日本フォレックスクラブの名誉会員。


> 無料のFX口座開設でお肉・お米のいずれかゲット!


この記事をシェアする

無料会員募集中