鈴木雅光の「奔放自在」

ローコストのインデックスファンドは正しいのか

2024/05/17

NISAの制度改正が行われてから、投資信託への資金流入がどうなったのかを解説するレポートが、野村総合研究所から出されています。詳細はレポート「新NISAが投信マーケットに与えた影響をビジュアル化してみた」(金子久著)を読んでみて下さい。

ここではあくまでも結論の一部しか用いませんが、NISAの制度改正が行われた2024年1月から3月までの3カ月間で投資信託の資金流出入を見ると、「投信への純資金流入のうち7割がパッシブ投信に向かった」ということです。

同レポートでは、パッシブ投信とアクティブ投信の純資金流入比率を計算したグラフが掲載されていますが、それによると、2024年1-3月期における資金流入額は、以下のようになりました。

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2024年1-3月期における資金流入額

パッシブ投信アクティブ投信
つみたて投資枠のみ158億円(58%)112億円(42%)
成長投資枠のみ4442億円(30%)1兆368億円(70%)
両投資枠2兆2368億円(97%)740億円(3%)

また同レポートではそれぞれの枠の本数を明示されています。

本数金額
つみたて投資枠のみ19本0.4兆円
成長枠のみ1627本40.6兆円
両投資枠255本23.5兆円

これらの数字から読み取れるのは、成長投資枠のみ届出投信では比較的アクティブ投信が健闘しているものの、両投資枠届出投信になるとパッシブ投信の優位性が非常に高いということです。

これは言うまでもなく、ここ数年でパッシブ投信のコスト引き下げ競争が激化した結果、「ローコストの投資信託は正義」と考えている受益者が増え、NISAの制度改正も相まって、新規資金がパッシブ投信に流入しました。

パッシブ運用とは、日経平均株価やS&P500といった指数の値動きと、同程度の連動率を目標にした運用手法のことです。別名、インデックス運用とも言います。

パッシブ運用の評価は、その運用成績を、連動目標とする指数に対していかに近づけられるかによって決まります。たとえば日経平均株価が10%値上がりしたら、パッシブ運用の成績も10%の上昇、日経平均株価が10%値下がりしたら、パッシブ運用の成績も10%の下落というように、上がっても下がっても、とにかく連動目標となる指数の値動きに対して、運用成績をほぼ連動させられれば、高く評価されます。

ということは、たとえば日経平均株価が10%値上がりした時に、パッシブ運用の成績が15%値上がりした場合は、いくら連動目標に対して高いリターンを実現させたとしても、それは評価されません。

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そこで気になるのが、「長期の資産形成において、コスト目線は大切です」といった、某パッシブ運用の投資信託の宣伝文句です。

もちろん、信託報酬などの運用コストが下がれば、パフォーマンスにとってはプラスです。ただ、それはアクティブ運用について言えることであって、パッシブ運用にもそれを当てはめるのは、いささか我田引水ではないかと思うのです。

アクティブ運用の場合、運用者の能力やトレーディング技術などによって、運用成績の良し悪しが決まってきます。その場合、少しでもリターンを上げるためには、運用コストを引き下げるのも一手であり、その意味において信託報酬率の低いファンドは歓迎されるべきですが、パッシブ運用の場合、極端な言い方をすると、仮に年間の信託報酬率が1%だったとしても、あるいは0.5%だったとしても、運用成績が連動目標となる指数にほぼ一致していれば、何も問題はないはずです。

たとえば、パッシブ運用で人気を集めている「eMAXIS」を見てみましょう。

eMAXISには、店頭で販売し、ペーパーベースの目論見書などを配布している「eMAXISシリーズ」と、販売をネット金融機関に絞り、目論見書などもすべて電子交付にしてコストを切り下げた「eMAXIS Slimシリーズ」があります。

この両シリーズに、オール・カントリーという株価指数への連動を目指したパッシブ運用のファンドが用意されていますが、両者の信託報酬率を比較すると、以下の通りになります。

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信託報酬率の比較

シリーズ年率
eMAXIS0.66%
eMAXIS Slim0.05775%

理屈から考えると、信託報酬率が低いeMAXISシリーズのオール・カントリーの方が、リターンが高くなって然るべきです。

では、実際に分配金込の基準価額を比較してみましょう。

基準価格の比較(分配金込み)

基準価格eMAXISeMAXIS Slim
100237.65240.973.32

eMAXIS Slimのオール・カントリーが設定された2018年10月31日から、両者の基準価額の推移を比較したところ、信託報酬率が圧倒的に低いeMAXIS Slimと、eMAXISのオール・カントリーの成績差は、ほぼ無いに等しい結果となりました。

同日の基準価額を100として計算すると、eMAXISが3月末時点で237.65。対してeMAXIS Slimは240.97だったのです。5年と5カ月の運用期間でわずか3.32の差は、あって無いようなものでしょう。

要するに、前述した「長期の資産形成において、コスト目線は大切です。」という宣伝文句は、ことパッシブ運用のファンドには関係ないといっても良いのかも知れません。パッシブ運用のファンドにとって大事なのは、コストよりも連動目標となる指数に対する連動率なのです。

鈴木雅光(すずき・まさみつ)

金融ジャーナリスト
JOYnt代表。岡三証券、公社債新聞社、金融データシステムを経て独立し(有)JOYnt設立し代表に。雑誌への寄稿、単行本執筆のほか、投資信託、経済マーケットを中心に幅広くプロデュース業を展開。

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