鈴木雅光の「奔放自在」

金とプラチナの立場逆転について

2024/04/26

一般的にプラチナカードは、ゴールドカードよりもステイタスが上とされています。 クレジットカードに限らず、各種会員制サービスの多くは、「ブロンズ」→「シルバー」→「ゴールド」→「プラチナ」という順番に、ステイタスが高くなっています。 しかし、この順番もそろそろ見直さなければならない時期に来ているのかも知れません。

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なぜプラチナが、こういった会員制サービスのステイタスでゴールドよりも上位なのかというと、金に比べてプラチナの方が希少な存在だからです。

より希少性のあるものほど、その値段は高くなります。そのため、かつてはプラチナの価格が、金のそれを上回っていました。

実際、どのくらいプラチナが希少なのでしょうか。埋蔵量はあくまでも推定値なので、確実とは言えませんが、金のそれが約5万2000トンであるのに対し、プラチナは約1万6000トンと言われています。プラチナは金に対して、約3分の1程度の埋蔵量しかないため、その希少性が価格に反映され、プラチナの価格が金のそれを上回る状況が、長年にわたって続いてきました。

ちなみに年間の産出量を見ても、金が約2600トンであるのに対し、プラチナは約182トンですから、やはりプラチナの方が希少です。

ところがこの10年、金とプラチナの価格は逆転状態が続いています。金価格が堅調に上昇を続ける一方で、プラチナの価格が低迷しているのです。

まず、金とプラチナの需要要因を比較してみましょう。

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金とプラチナの需要要因の比較

需要プラチナ
宝飾品48.7%18.1%
投資21.2%3.8%
工業用途6.7%
公的機関23.3%
自動車触媒41.1%
産業用37.0%

以上のようになっています。プラチナの需要の大半は工業用途であるため、世界的な景気減速懸念が価格の重石となっているのは事実でしょう。

ただ、ここで注目すべきは公的機関の需要です。ここで言う公的機関とは、国が外貨準備として保有している金を指しています。

公的機関が保有している金の需要を時系列でみると、2004年から2009年まではマイナスが続いています。つまり外貨準備として保有していた金を売りに出していました。

ところが、2010年を機に公的機関による金の買いが増え始めてきました。トン数で言うと、2010年が79トンの買い越しであり、その後は毎年400トンから600トンの買い越しが続き、2022年の買い越しは1000トンを超えました。ちなみに2023年も1037トンの買い越しです。

金が各国の外貨準備に組み入れられているのは、金を「無国籍通貨」として見ているからです。

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ご存じのように、金は非常に高い流動性を持っていて、国際金市場でいつでも売却できます。かつ、多くの国が外貨準備の中心として保有している米ドルは、もし米国政府がデフォルトに陥ったりしたら、その時点で紙切れになる恐れがあります。

でも、金は世界共通の価値が認められているため、米ドル危機が生じたとしても価値を毀損するリスクがありません。そのため各国政府は外貨準備に組み入れる金の量を年々、増やしているのです。この公的機関による買い越し増が、金価格を押し上げてきた側面は無視できません。

一方、プラチナは金のように外貨準備に組み入れられることがありません。これにはちゃんとした理由があります。希少価値はあるものの、希少過ぎて市場での流動性が極めて薄いからです。流動性が極端に低いと、価格の値動きも激しくなりがちです。そのためプラチナは、専ら工業用途が中心であり、公的機関の買いが全くない状態にあるのです。

この公的機関による買いがあり、かつその量が年々増加傾向にあるところで、金とプラチナの価格差が拡大している面もあるでしょう。今年に入ってからも、中国の中央銀行である中国人民銀行が保有している金の量が、17カ月連続で前月を超え、2024年3月末時点で約2262トンになったという報道がありました。中国人民銀行は、この17カ月間で金の保有量を16%も増やしたことになります。

また、世界の中央銀行のなかでも、中国人民銀行の金買いは飛びぬけています。ワールド・ゴールド・カウンシルの調査によると、2023年中に各国の中央銀行が買い付けた金の純購入量は1037トンでしたが、中国はその2割を占めていて、データで確認できる1977年以降で最大の純購入になったということです。

なぜ中国が金をたくさん買っているのかについては、憶測も含めてさまざまな見方があります。金を裏付けとする新たな通貨圏を、中国が中心になって構築しているという話もあれば、米中対立激化のなかで、米ドル建て外貨準備を封鎖された時に備えて金を確保しているという見方も浮上しています。2020年3月末時点で、中国が保有していた米国国債の残高は1兆816億ドルでしたが、2023年10月末には7696億ドルまで減少しました。中国が米国国債の保有額を減らして金の保有額を増やせば、米国は国債を発行するに際して、資金調達に苦労することになります。こうした点にも米中の対立が垣間見られるのです。

鈴木雅光(すずき・まさみつ)

金融ジャーナリスト
JOYnt代表。岡三証券、公社債新聞社、金融データシステムを経て独立し(有)JOYnt設立し代表に。雑誌への寄稿、単行本執筆のほか、投資信託、経済マーケットを中心に幅広くプロデュース業を展開。

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