鈴木雅光の「奔放自在」

老後のお金は「貯める」よりも「生む」ことの方が大事

2023/03/02

老後の資産形成に関する記事やレポートの類には、まるで枕詞のように「老後2000万円問題」という文字が使われています。「人生100年時代」も同じです。
「人生100年時代。しかし、老後2000万円問題でクローズアップされたように、経済的には豊かな老後生活はハードルが高い・・・・・・」というような書き出しの文章を、結構目にすることがあります。

上記のような文章を読んで、まず何を考えるでしょうか。多くの人は、「定年を迎えるまでに最低でも2000万円を貯めなければ」などと考えるのではないでしょうか。

そもそも「2000万円問題」とは何だったのか、簡単におさらいしておきましょう。

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これは2019年6月に、金融審議会市場ワーキング・グループの報告書に記載されたものです。高齢者夫婦(無職世帯)の平均的な支出額26万3718円に対し、公的年金を含めた収入額が20万9198円なので、毎月差し引き5万4520円の不足が生じ、仮にその生活を30年間続けた場合、不足額の合計が1962万7200円になるという内容でした。

したがって、定年を迎えて完全にリタイアメントする前に、2000万円程度の貯蓄をつくっておけば、老後はその貯蓄を少しずつ取り崩しつつ、公的年金を受け取って生活費が賄える、という話です。

ただ、この考え方には問題があります。徐々に保有資産の一部を取り崩していくため、当たり前のことではありますが、自身の保有資産が時間の経過と共に目減りしていきます。最初は2000万円あるので精神的に余裕があるとしても、それが1000万円になり、500万円になったら、結構追い込まれた気分になるのではないでしょうか。

2000万円を30年間で取り崩す計画を立てた場合、15年前後の期間が経過した時点で、保有資産の額は1000万円にまで目減りします。その時、「まだ1000万円もあるじゃないか」と思えるかどうか。恐らく、焦る人が結構多いのではないかと推察します。

また、2000万円という数字は、夫婦が30年間生きることを前提にしていますが、幸か不幸か、30年を超えて長生きしてしまうと、お金が底を尽きます。

一定額のお金をコツコツと貯めることは、もちろん大事なのですが、「老後はその貯めたお金を取り崩しながら生活するもの」と思い込んでいると、上記のような失敗に陥る恐れがあります。

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そうならないようにするにはどうすれば良いのでしょうか。

そこで考えたいのが、お金を「貯める」のではなく、「生む」方法を考えることです。b別の言い方をすると、ストックを積み上げるのではなく、フローを確保するという考え方です。

ここで言うフローとは、ある程度、積み上げたストックから生み出されるインカムゲインのことです。身近なところで言うと、預金の利息、債券の利子、株式の配当金、投資信託の分配金、あたりでしょうか。

このうち預金の利息は、これだけの超低金利ですから、ほぼゼロです。債券でも、円建て国内債券は同じと思って良いでしょう。

これらに対して、株式の配当金だと4~5%程度の配当利回りが得られる銘柄もあります。J-REITも同じです。

仮に4%の配当利回りが得られる株式があるとします。2000万円問題では月5万4520円が不足するということですから、年間では65万4240円が不足する計算になります。そこで、こう考えてみて下さい。「年4%の配当利回りで65万4240円を確保するためには、この銘柄にいくら投資すれば良いのか」。

この計算は簡単です。65万4240円を年4%で割り戻すだけで終わりです。つまり、

65万4240円÷4%=1635万6000円

これだけの金額を年4%の配当利回りが得られる銘柄に投資しておけば、2000万円問題は解決するのです。

この方法のメリットは、年4%の配当利回りが変わらなければ、1635万6000円の投資元本を減らさずに、ずっと年65万4240円のキャッシュフローを得られることです。

加えて、株価の下落が配当利回りを改善させるチャンスになります。

たとえば1株=1640円の株式を1万株保有しているとします。年間配当金額が66円だとすると、配当利回りは4.02%になります。

この株価が1300円まで値下がりしたらどうでしょうか。もちろん、その株価下落が業績の悪化によるものだと、減配になる恐れが生じてきますが、株価は業績などファンダメンタルズだけでなく、単なる市場の心理で値下がりすることもあります。

そのような場合、基本的に企業業績には大きな悪影響が生じないので、減配されることはないでしょう。つまり年66円の配当は維持されます。

配当金が年66円で、株価が1300円まで下がったとしたら、配当利回りは5.07%になります。つまり、株価が下がった時を狙って株数を買い増すことを繰り返していけば、配当利回りを向上させることもできるのです。

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では、同じことを投資信託で出来るのか、ということですが、これは正直お勧めしません。株式の配当金は、あくまでも企業の最終利益の一部を配当しますが、投資信託の分配金は運用によって得た収益だけでなく、「分配準備積立金」や「収益調整金」のように、元本の一部を取り崩して分配金に充てられるものがあり、この部分を厚めにして分配金に充てられてしまうと、肝心の基準価額が上がらないという状態になります。

そのうえ、何をどれだけ分配金に回すかは、すべて投資信託会社の判断に一任されます。

株式の配当金は、企業業績が好調であれば増配されることもありますが、投資信託の分配金は、仮に運用成績が好調だったとしても、投資信託会社が「将来、成績が悪化しても分配できるように、運用収益を温存しておこう」と判断したら、分配金が全く増えないこともあり得るのです。かなり投資信託の分配金は、恣意的なものなのです。

そこから考えると、キャッシュフローを確保するための投資先は、株式かJ-REITが適切だと考えられるのです。

鈴木雅光(すずき・まさみつ)

金融ジャーナリスト
JOYnt代表。岡三証券、公社債新聞社、金融データシステムを経て独立し(有)JOYnt設立し代表に。雑誌への寄稿、単行本執筆のほか、投資信託、経済マーケットを中心に幅広くプロデュース業を展開。

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