鈴木雅光の「奔放自在」

本当に長期投資できるの?

2025/06/13

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「長期投資が原則」と言われる投資信託。しかし本当に長期で運用できるのでしょうか?実は、思わぬ理由で長期運用が困難になるケースがあるのです。途中で運用継続が困難になる理由と、対策を解説します。

「投資信託は長期保有が原則です」とよく言われます。確かに投資信託は、短期売買をするためのツールではありません。かつては購入手数料が高かったため、短期売買を繰り返すと着実にコスト負担が重くなりましたし、購入手数料がゼロの投資信託が増えた昨今でも、大勢の保有者が短期売買を繰り返すと、ファンドマネジャーにとっては非常に運用しにくくなるため、結果的にリターンに悪影響が及びます。

したがって、投資信託は長期保有するのが原則ではあるのですが、そのためには「長期間、運用し続けてくれる投資信託」を選ぶ必要があります。

しかし、さまざまな事情から長期運用が出来なくなるケースもあります。それを今回はまとめてみましょう。

第一に、解約によって残高が目減りし、繰上償還されるケースです。繰上償還とは、信託期間がまだ残っているか、もしくは信託期間が無期限になっているのにも関わらず、償還されてしまうことです。といっても何の理由もなく、いきなり繰上償還されることはありません。たいていは解約増によってファンドの規模が小さくなり、それ以上運用を継続しても、運用会社にとって収益にならないと判断された場合、繰上償還が行われます。

どのような時に繰上償還されるかについては、目論見書にも記載されています。たいていは、受益権口数が30億口を下回った場合に、繰上償還の可能性が高まります。

第二に、ファンドの併合です。4月2日、かつて「1兆円ファンド」と称された、「ノムラ日本株戦略ファンド」が、「ノムラ・ジャパン・オープン」と併合されることが発表されました。ノムラ・ジャパン・オープンが存続ファンドになり、6月19日から消滅ファンドとなるノムラ日本株戦略ファンドのポートフォリオは、ノムラ・ジャパン・オープンと同一のものに順次、入れ替えられていきます。そして最終的には8月28日に、両ファンドが完全に一体化する予定です。

現時点においても、純資産残高が大幅に減り、しかしなぜか繰上償還されずに運用され続けているファンドも少なくありません。さまざまな条件をクリアする必要はありますが、ファンドの併合は、繰上償還よりも受益者にとってのショックは小さく済みます。

というのも繰上償還の場合、繰上償還された時の基準価額が、購入した時の基準価額より下落していると、強制的に含み損を実現させられてしまうからです。その点、ファンドの併合であれば、償還されることなく、似た運用方針を持つ存続ファンドのポートフォリオに寄せられつつ、運用そのものが継続されるため、いきなり含み損が実現するというリスクを回避できます。

第三は、今、大騒ぎされていますが、長期投資のツールであるiDeCoなどの確定拠出年金における除外です。iDeCoの場合、一運営管理機関が扱える投資信託の本数は35本と決められています。そのため、新しく他のファンドをラインアップに加えようとした場合、35本のラインアップが一杯だと、いずれかのファンドを外さなければなりません。これが除外です。

当然、除外するからには相応の理由が必要です。ちなみに楽天証券が先般、iDeCoの対象としていたファンドのうち9本を除外するとし、当初は除外に同意できない場合、6月30日までを異議申し立て期間とし、不同意が3分の1を超えていれば除外されないということだったのですが、その後、楽天証券への問い合わせが急増したこと、除外の理由について説明不足だったことから、除外ならびに除外手続きを延期しました。

ただし、すでに異議申し立てをした人は、新しい除外手続きの告知が行われた場合、改めて異議申し立てを行う必要があります。二度手間になりますが、自分が楽天証券のiDeCoで買い付けているファンドが除外対象になり、それに納得のいく説明がなされない場合は、異議申し立てを忘れずに行って下さい。

そして最後、第四ですが、運用会社自体が存続できなくなるリスクがあります。これはもう、どうしようもないでしょう。この9月には、PayPayアセットマネジメントが、投資信託の運用業務から撤退する予定です。そして、その理由は業績不振です。

従来、多くの運用会社は大手金融機関の子会社でした。その問題点はいろいろなところで議論されていますが、一方で良い点もありました。それは、親会社のメンツにかけてでも、運用会社を潰すような真似だけはしなかったことです。

近年は大手金融機関系列の運用会社を批判する一方、独立系をもてはやす傾向が顕著でしたが、強い資本関係を持たない独立系は、スタートダッシュをかけて、最初の段階から相当程度、運用資金を集めないと、売上が立たず、赤字が累積していくことになります。それでも増資を続けて資本を調達し続けられるなら何とか乗り切れるでしょうが、増資もままならず、かつ運用資金も集まらないような運用会社は、破綻が待っているだけです。

運用会社は自社サイトで必ず財務諸表を開示しています。投資信託を買う時は、運用している運用会社のサイトを見て、必ず財務諸表を確認してください。特に、新しく設立された運用会社のファンドを買うときほど、直近の決算は赤字か黒字か、赤字なら単年度でいくらの赤字が出ているのか、資本金と準備金を合わせた額はいくらあるのか、そして運用しているファンドは着実に純資産残高を増やせているのかどうかを、慎重に見極める必要があります。

具体的には、貸借対照表に記載されている資本金と準備金の合計額に対して、損益計算書に記載されている営業収益の数字が小さく、結果的に純損失の占める比率が高い運用会社のファンドは、買わないことをお勧めします。

鈴木雅光(すずき・まさみつ)

金融ジャーナリスト
JOYnt代表。岡三証券、公社債新聞社、金融データシステムを経て独立し(有)JOYnt設立し代表に。雑誌への寄稿、単行本執筆のほか、投資信託、経済マーケットを中心に幅広くプロデュース業を展開。


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