「1兆円ファンド」が過去最多の11本に
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1兆円を超える巨大ファンドが過去最多の11本に。背景には、新NISAによる長期投資ブームとインデックス投資の台頭があります。投資信託市場に流れ込む資金の行方を徹底解説します。
このタイトルは9月25日付の日本経済新聞に掲載されたものから引用したものです。「1兆円ファンド」というのは、ファンドに組み入れられた資産の時価総額を示す「純資産総額」が1兆円を超えたファンドの総称、といっても良いのかも知れません。
この「1兆円ファンド」という総称は、2000年2月に設定された「ノムラ日本株戦略ファンド」が、確か9800億円前後の資金を集めて運用をスタートさせ、同年5月に1兆1670億円まで純資産総額を増やしたことから用いられるようになったと記憶しています。当時、純資産総額が1兆円に乗せたファンドは、公募型投資信託としては初めての快挙でした。


しかし、この時はまさにITバブルのピークで、同ファンドが運用をスタートさせた直後から株価は下落。経済の長期低迷によって同ファンドの運用成績も振るわず、2025年2月時点では557億円程度まで純資産総額は目減りしていました。結果、ファンド併合によって他の日本株アクティブファンドのマザーファンドと共有化され、同ファンドはその名称も「野村国内株式アクティブオープン」に変更されました。
その後、1兆円を大きく超えたファンドといえば、三菱UFJアセットマネジメントが設定・運用している「グローバル・ソブリン・オープン(毎月決算型)」で、2008年7月に5兆7000億円を超えました。ちなみに同ファンドの運用会社は当時、国際投信投資顧問でしたが、合併により、現在は三菱UFJアセットマネジメントが運用しています。
このように、滅多に1兆円を超える純資産総額を持つファンドは現れませんが、近年、それが急増しているというのが、前出の日本経済新聞の記事です。記事によると、9月には11本ものファンドが、1兆円を超える純資産総額を実現しました。
以下、記事からの引用ですが、
「1兆円超ファンド11本の内訳はインデックス型が6本で、アクティブ型が5本。インデックス型のうち5本は新NISA(少額投資非課税制度)のつみたて投資枠と成長投資枠の両方で投資できる。残り1本は確定拠出年金(DC)専用の「野村外国株式インデックスファンド・MSCI-KOKUSAI(確定拠出年金向け)」で、今年7月に初めて1兆円台に乗せた」。
「1兆円を超えるファンドは20年末に一時ゼロになったところから順調に増えている。それ以前の1兆円超ファンドはすべてアクティブ型だったが、ここ数年はインデックス型ファンドの台頭が目立つ。18年に旧つみたてNISAが始まったころから低コストのインデックス型ファンドを活用した長期投資が徐々に広がり、24年の新NISA開始でその流れが加速した影響が大きい」。
ということでした。1兆円ファンドがここ数年で11本にもなったのには当然、理由があります。その理由として日本経済新聞は、2024年1月からスタートした新NISAにより、インデックスファンドを活用した長期投資が広がったことを挙げています。
資金循環統計の家計ストックで投資信託の残高がどの程度まで増えたのかを見ると、新NISAがスタートする直前、2023年12月末の残高は106兆5301億円で、2025年6月末は140兆3569億円ですから、この1年半で31.75%増でした。
ただ、この数値には評価損益も含まれていますから、純粋に元本ベースでどの程度増減したのかを把握するためには、調整額を加減する必要があります。それによると、2023年12月末の残高は102兆289億円で、2025年6月末が132兆8610億円ですから、この間に30.21%の資金増になったことが分かります。


一方、NISAが導入されたのは2014年1月ですから、そこを起点にして新NISAがスタートする直前の2023年12月末までに、どの程度、投資信託への資金純流入があったのかを見ると、調整額を加減した残高は、2013年12月末が67兆9892億円、2023年12月末が102兆289億円ですから、この10年間で50.06%増でした。絶対額で見ても、NISAが導入されて新NISAがスタートする直前の10年間で34兆397億円増、新NISAが導入されてからの1年半で30兆8321億円ですから、明らかに投資信託への資金流入は加速しています。これが1兆円ファンドを続出させた背景のようです。
現在、国内公募投資信託で最も大きい純資産総額を持つのが、三菱UFJアセットマネジメントの「eMAXIS Slim米国株式(S&P500)」の8兆5857億6900万円と、「eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー)」の7兆5859億8600万円ですが、いずれも投資対象となるマーケットの規模が大きいので、運用に支障を来すことはありません。
とはいえ、他にも同じインデックスに連動する1兆円ファンドが複数あり、それを合計すると、それなりの額の資金が、海外に流出していることになります。実際、11本ある1兆円ファンドのすべてが、米国ないしはその他の海外株式市場に分散投資するタイプのファンドです。
日本の投資信託にかなりの資金が流入しているのは事実ですが、それを通じて日本の株価を押し上げる力になっていないのが、何とも悩ましいところです。

鈴木雅光(すずき・まさみつ)
金融ジャーナリスト
JOYnt代表。岡三証券、公社債新聞社、金融データシステムを経て独立し(有)JOYnt設立し代表に。雑誌への寄稿、単行本執筆のほか、投資信託、経済マーケットを中心に幅広くプロデュース業を展開。

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