2025年12月9〜10日のFOMCと、12月18〜19日の日銀政策決定会合を軸に今後のドル円を展望。利下げ・利上げの最終到達点（ターミナルレート）が相場を左右します。この記事でわかること：政策の焦点／パウエル・植田会見の注目点／為替介入の可能性。

今週の9日から10日に掛けて本年最後となるFOMC.が開催される。

先週はブラックアウト期間（FOMC.の構成メンバーは直前に金融政策に関する対外発言を制限される。）に入り、

FRB.高官による発言は聞かれなかったが、市場は90％以上の確率で3回連続の利下げを見込んでいて、利下げが行われるとFRB.の政策金利は3.50％～3.75％となる。

今回の利下げは殆ど、Done deal.（決まり事）と言っても良いが、ここ数回のFOMC.議事録によると、最大限の雇用と物価安定の二大責務のどちらを優先するかについて、FOMC.メンバーの中でも意見が分かれており、政策変更はData dependent.（データ次第。）と繰り返すパウエルFRB.議長が、FOMC.後の記者会見で2026年に入ってからの追加利下げの可能性についてどの様な発言をするかが注目される。

パウエルFRB.議長の任期は2026年4月で、後任はトランプ大統領肝いりで金融緩和に積極的なハセット米国家経済会議（NEC）委員長が有力視されているが、トランプ大統領のことが大嫌いなパウエル議長がそれを意識して“タカ派的利下げ。＝今回は利下げを行うものの、先行きの追加利下げには慎重な姿勢を示す。”であることを示唆すると、ドル・ベア派（ドルにとって弱気論者。ドルが下がる事を期待している。）にとっては面白くない展開（FOMC.後は一旦ドルは下がるが、Buy on rumor, sell on fact.＝噂で買って、事が起きれば売り戻す。今回は噂で円を買って＝ドルを売って、事が起きたら円を売ってドルを買う。）となる事は否定出来ない。

これは来週18日～19日に開催が予定されている日銀政策決定会合にも当てはまり、現在は90％以上の確率で凡そ1年ぶりに0.75％への追加利上げが見込まれているものの、決定会合後の植田日銀総裁の記者会見がこちらも注目される。

植田日銀総裁は先週の講演で、利上げしても“まだ緩和的である。”と述べるなど、12 月以後も金融引き締めを続ける意思を表したが、これに対して米財務省は“アベノミクス導入から12年が経過し、状況は大きく変化していることから、インフレ期待を安定させ、為替レートの過度な変動を防ぐ上で、健全な金融政策の策定とコミュニケーションが果たす重要な役割を強調した。”と述べて、歓迎の意を表した。

今後のドル円相場の行方は、アメリカでは来年のFOMC.、我が国では日銀政策決定会合でのターミナルレート（政策金利の最終到達水準。）がどうなるかに委ねられている。

アメリカではターミナルレートが３％、我が国では1％前後と目されており、それぞれあと1～2回の政策変更（FRB.による追加利下げと日銀による追加利上げ。）が行われても不思議ではない。

そうなるとドル・ベア派にとっても追い風となることであろう。

先週、木原官房長官が数回に渡り、
「為替相場は安定的な推移が重要。」
「足元の為替市場は一方的または急激的な動きがみられ憂慮している。」
「為替の過度な変動や無秩序な動きには適切に対応。」

などと円安牽制を図っており、我が国金融当局によるドル売り＆円買い介入の可能性は増していると考えても良かろう。

その場合、アメリカからの反対は無いどころか、寧ろ歓迎する可能性は大であると信じる。

米政府機関の閉鎖により発表が遅れているシカゴ・IMM.投機筋の円のポジションであるが、先週10月28日分の発表が有り、一時31億ドル相当迄縮小していたドルの売り持ちポジション（円の買い持ちポジション）が56億ドルの売り持ちとなり、再びドル・ショートを増やしている。（下のグラフの青いバー。）

その間ドル円相場は152円を超えるドル高＆円安が進んでおり、（下のグラフの赤い線）シカゴ・IMM.が珍しく逆張り（ドルの上昇に抗ってドルのショート・ポジションを増やしている。）を行っていることが分かる。

彼等もドル・ベアか？

ドル円相場はその後のひと月で5円以上のドル高＆円安が進んでいるが、彼らドル上昇局面でどの様に対処したか大いに興味のあるところである。

今週から来週に掛けては、日米金融当局の政策変更とその後のトップ（パウエル議長と植田総裁）の発言内容が最重要であることは間違いあるまい。

今週のテクニカル分析

今週のテクニカル分析の見立ては更なる下落を予想。

今週のレンジ

ドル円：153.00～156.00
ユーロ円：179.00～182.00