個人向け国債は変動金利型が有利か?
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経済ジャーナリストの鈴木雅光氏が、個人向け国債の人気の背景とその実態を分析。
金利上昇を受けて有利とされる変動金利型の特徴と、見落とされがちなリスクを解説します。
この記事で分かること: 個人向け国債の最新動向/変動金利型が注目される理由/金利低下局面でのリスクと選び方
個人向け国債の発行額が増加傾向をたどっている。財務省が3月5日、個人向け国債の3月発行分が8743億円であることを発表したが、これによって2025年度(2025年4月から2026年3月)の販売額は合計6兆1526億円になり、前年度比で36.9%増となった。実に19年ぶりの高水準である。


ちなみに「個人向け国債」の名称は、1月から「個人向け国債プラス」へと変更されている。財務省のホームページによると、「商品のラインナップ及び基本的な商品性等に変更はありません」とのことだが、名称に「プラス」が付いているのは、販売対象が見直されたからだ。これまで個人向け国債の販売対象は、文字通り個人に限定されていたが、一部の法人等にも拡大することになった。
ちなみに「一部の法人等」、非営利法人ならびに非上場法人等を指している。つまり上場企業はもちろんのこと、上場していなくても資本金が5億円以上と見込まれる株式会社は、自己勘定で個人向け国債を買うことは出来ない。
さて、個人向け国債の人気がこのように高まっているのは、言うまでもなく金利が生まれてきたからだ。4月に発行される個人向け国債の利率は、
変動金利型(10年)・・・・・・年1.40%
固定金利型(5年)・・・・・・年1.58%
固定金利型(3年)・・・・・・年1.34%
となっている。たとえば変動金利型(10年)の過去の利率を見ると、2021年4月発行は年0.09%だった。これでは利子などほぼ発生しないのも同然で、当時の個人向け国債はほとんど買い手がいない状況だった。それが今では年1.40%なのだから、人気が出るのも当然だろう。
前述したように、個人向け国債は現在、変動金利(10年)、固定金利(5年)、固定金利(3年)という3つのタイプが毎月発行されている。固定金利は償還まで適用利率が変わらないので、昨今のような金利上昇局面においては、「変動金利(10年)が望ましい」という意見が大半を占めている。
変動金利型は半年ごとに適用利率が見直される。たとえば2025年4月に発行された第180回債の発行時の適用利率は年0.92%だったが、同年10月16日からは年1.06%に引き上げられ、さらに2026年4月16日からは年1.40%へと引き上げられる予定だ。
変動金利10年物の適用利率は、「基準金利×0.66」で決まる。基準金利とは、いわゆる長期金利のことだ。そのため、2022年以降からの長期金利の上昇を受けて、変動金利型10年物の適用利率は上昇傾向をたどっている。そのため、固定金利型の5年物や3年物よりも、変動金利型10年物を買った方が有利だと言われている。確かに、前述した3月に発行される個人向け国債の利率を見ても、変動金利型(10年)の適用利率は年1.40%であり、固定金利型(5年)の利率に比べて0.18%の差でしかない。金利上昇のピッチにもよるが、恐らくこの程度の金利差は簡単にひっくり返されるだろう。固定金利型(5年)は今後、5年間は同じ利率が適用されるので、この5年間で変動金利型(10年)の利率が0.18%超上昇すれば、とりあえずは変動金利型(10年)が有利だったということになる。
ただ、少し考えていただきたいのは、今後10年間、ずっと金利が上昇し続けるのだろうか、ということだ。


確かに、昨今のように長期金利が上昇する局面においては、適用利率が引き上げられるため、一見すると有利な運用対象であるかのように見える。
しかし、金利上昇局面で収益が改善していく変動金利型は、逆に金利低下局面では収益が悪化していくのも事実だ。
これから10年先の途中まで長期金利が上昇し続け、しかも償還を迎える時まで長期金利が高止まりすれば、変動金利型10年物による運用成果は、非常に高くなるが、果たして今後10年にわたって、長期金利が高止まりするようなことになるだろうか。
長期金利は景気サイクルによって上下する。たとえば現在の中東情勢が一段と悪化し、国内景気が冷え込んだりすれば、長期金利の上昇は期待できなくなるだけでなく、逆に 低下することも想定される。そうなれば、変動金利型(10年)の利率は低下し、有利な運用も期待できなくなる。今後10年先まで好景気が続くかどうかを考えると、どちらかといえば、それまでの間に景気が後退し、長期金利は低下すると考える方が現実的なように思える。
もしそうだとするならば、変動金利型(10年)を購入すれば有利に運用できるというのは、いささか違うのではないだろうか。景気サイクルを考慮すると、むしろ今は変動金利型10年物の個人向け国債を買わずに、長期金利の水準が上昇していくのを静観し、長期金利がピークを付けたと思われるところで固定金利型5年物を買った方が良いと考えられる。

鈴木雅光(すずき・まさみつ)
金融ジャーナリスト
JOYnt代表。岡三証券、公社債新聞社、金融データシステムを経て独立し(有)JOYnt設立し代表に。雑誌への寄稿、単行本執筆のほか、投資信託、経済マーケットを中心に幅広くプロデュース業を展開。
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