鈴木雅光の「奔放自在」

「みんなで大家さん」が集団訴訟へ

2025/11/07

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不動産ファンド「みんなで大家さん」を巡り、出資金返還を求める集団訴訟が拡大。第1次訴訟には1000人超・請求総額100億円。成田シリーズの進捗遅延を背景に、過去最大級の投資被害に発展する可能性があります。

不動産投資ファンドである「みんなで大家さん」を巡って、出資金の返還を求める大規模な集団訴訟の動きが顕在化してきました。

2025年10月17日付で日経不動産マーケット情報に掲載された記事によると、10月15日を締切日とする第1次の集団訴訟には1000人を超える投資家が参加の意向を示し、請求額は100億円にも上るということでした。

さらに弁護団は第2次訴訟の準備も進めており、最終的な参加人数を推計すると、過去最大規模の集団訴訟に発展する可能性があるそうです。

「みんなで大家さん」とは、共生バンク株式会社が展開している不動産ファンド事業のブランド名です。

共生バンクは17のグループ企業から構成されています。そのグループ企業のひとつが、「みんなで大家さん」という不動産ファンドを管理・運営している「都市綜研インベストメントファンド」と、不動産ファンドの販売代理を行っている「みんなで大家さん販売」です。

「都市綜研インベストメントファンド」が、さまざまな不動産開発案件をファンド化した後、「みんなで大家さん販売」がそのファンドを小口化して、不特定多数の投資家に対して販売します。そして投資家は、自分たちが投資した不動産物件から得られる賃料収入を、ファンドの持ち分に応じて配当金として受け取れるというスキームになっています。

この仕組みは、「不動産特定共同事業法に基づく匿名組合契約」による出資の形態をとります。

匿名組合契約は結構、私たちの身近なところで用いられている契約形態で、投資資金を提供する出資者が匿名組合員、匿名組合契約に基づいて設立されたファンドの管理・運営を行うのが営業者となり、営業者が行った事業によって得た損益に応じて、匿名組合員に配当金が支払われます。

また、匿名組合契約に基づいて営業者が行った事業が失敗したとしても、匿名組合員は無限責任を負うことはなく、損失は出資した額の範囲内に限定されます。

と言えば聞こえが良いのですが、下手をすれば出資した資金が全額、失われる恐れがあります。その点では、株式や投資信託、不動産投資信託などに比べても、かなりリスクが高い投資案件と言えなくもありません。

もっと言うと、匿名組合契約による投資スキームは、税制面が不利な側面もあります。というのも、投資信託の分配金に対する課税のような、20.315%の源泉分離課税が適用されないからです。

匿名組合契約による投資スキームから得られる運用収益に対する課税は、源泉分離課税ではなく、雑所得として総合課税扱いになります。雑所得は損益通算ができませんし、逆に利益が出れば累進課税が適用されてしまうため、税制上のデメリットが大きくなります。つまり、匿名組合契約による投資スキームで、税制上のデメリットを補って余りあるだけのリターンを手取りベースで実現しようとすれば、相当高いリターンが必要になりますし、それは同時にリスクが高いことの裏返しにもなります。

「みんなで大家さん」は、さまざまなシリーズが運用されています。今回、特に問題になっているのは、「シリーズ成田」という匿名組合契約でした。

これは、約45.6万平方メートルの大型開発用地である、「成田空港周辺開発プロジェクト用地」の一角を対象不動産として組み入れた匿名組合ファンドです。

これまで募集・販売されてきたシリーズ成田の想定利回りは年7.0%、運用期間は5年~5年1カ月で、申込金額は1口=100万円から、となっています。これを18回にわたって募集・販売し、合計で2000億円近い出資金を集めました。

ところが、このプロジェクトが全く進捗しておらず、対象用地の大半が更地であることが判明しました。

そもそも、この投資ファンドの仕組みは、投資した不動産の家賃収入から配当金が支払われます。しかし更地では当然、そこに建物は存在せず、テナントもおらず、したがって配当金の原資となる家賃が全く発生していないことになります。

このシリーズの1号ファンドは、実は2026年1月に当初満了日を迎えます。満了日を迎えたら、出資金は投資家に返還しなければなりません。そうであるにも関わらず、プロジェクトは今もって完成のメドが立っていません。このような状況で、どうやって1号ファンドの償還金を支払うのでしょうか。そもそも、これまでどうやって7%もの配当金を払い続けてきたのでしょうか。

あまり考えたくないことですが、2号ファンド、3号ファンドというように、時期をずらして募集してきたファンドの出資金を、それ以前に募集・販売してきたファンドの配当金に回してきたのではないかと疑いたくなります。

しかし、これは完全なポンジ・スキームです。

もし償還金の支払が不可能ということになったら、共生バンク株式会社自体が倒産する恐れもあります。そうなった時、投資家には出資金が返還されない恐れがあります。詐欺であるとは断言できませんが、かなり大規模な金融被害が生じることになりそうです。

鈴木雅光(すずき・まさみつ)

金融ジャーナリスト
JOYnt代表。岡三証券、公社債新聞社、金融データシステムを経て独立し(有)JOYnt設立し代表に。雑誌への寄稿、単行本執筆のほか、投資信託、経済マーケットを中心に幅広くプロデュース業を展開。


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