20260827|ドル円は150円割れも?武者陵司氏が語る円高シナリオと日本株の分岐点【ゴールデンアワー】
> お米 or お肉がもれなくもらえる?!

2026年8月27日(木)に配信された第65回「ゴールデンアワー」では、ストラテジストの武者陵司氏をゲストに迎え、日米協調介入後のドル円相場、日米の金融政策、米国経済、日本株の今後について詳しく伺いました。
ドル円は再び160円に迫っていますが、武者氏は「160~163円付近に上値の壁ができた」と分析。今後は円安がさらに進む可能性よりも、150円割れを含む円高方向への変化に注意が必要との見方を示しました。
今回の結論――ドル円も日本株も政策が大きな分岐点に
今回の配信で示された重要なポイントは、次の4つです。
・ドル円は160~163円付近で上値が重くなっている
・日銀の利上げが円高加速のきっかけになる可能性がある
・米国ではインフレよりも雇用の減速に注意が必要
・日本株の今後は、高市政権が積極的な経済政策を実行できるかで大きく変わる
武者氏は、日米金利差が縮小しているにもかかわらず円安が続いている現在の状況について、「ファンダメンタルズだけでは説明しにくい」と指摘しました。
ドル円は160~163円付近が上値の壁に
現在の円安はファンダメンタルズでは説明しにくい
配信中の16時時点で、ドル円は159円30銭付近で推移していました。
川口氏のペンタゴン分析では、7月30日の日米協調介入後に一度大きく円高へ動いたものの、その後は再び159円台まで戻しています。ただし、これまでの円安局面と比べると上値は重く、160円を目前に足踏みする展開が続いています。
武者氏も、160~163円付近には明確な上値の壁ができたとの見方を示しました。
その根拠の一つが、購買力平価から見た円の割安さです。武者氏によると、円の購買力平価は1ドル=95円前後であり、150~160円台のドル円は円の実力から大きく離れた水準にあります。
さらに、2022年以降の円安を支えた日米金利差は、すでに大幅に縮小しています。それでも円安が続いているため、「日本の財政不安」など別の理由が市場で意識されてきました。
しかし武者氏は、日本の財政状況は一般にいわれているほど悪くなく、円を売り続ける根拠は薄れつつあると分析しています。
150円割れから円高が加速する可能性
今後、ドル円が150円を割り込む可能性について、武者氏は「おかしくない」と答えています。
特に注意が必要なのが、日銀による追加利上げです。
武者氏は、現在の日本経済はデフレからの転換途中にあり、十分な賃金上昇や成長力が定着する前に利上げを進めれば、景気や住宅市場に逆風となる可能性があると指摘しました。
また、利上げをきっかけに円高へトレンドが変われば、145円、140円を目指す可能性もあるとしています。
公的年金の積立金を運用する機関「GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)」が保有する運用資産のうち、約半分が海外資産であることにも言及。急速な円高が進んだ場合、外貨資産の比率を引き下げる動きが新たな円買いを呼び、円高がさらに加速する可能性があるとの見方を示しました。
一方で、日本国内への投資や産業競争力を維持するには、1ドル=140円前後の円安水準が必要だとも指摘しています。円安を止めるための利上げが、逆に日本経済の回復を損なうことを警戒している形です。
「日本の財政は危機的」とは限らない理由
番組では、日本の財政と長期金利についても多くの時間が割かれました。
日本政府の債務残高はGDP比で非常に大きく、この数字だけを見ると財政危機が近いように見えます。しかし武者氏は、政府が保有する金融資産を差し引かず、債務の総額だけで判断することには問題があると指摘しています。
武者氏が示した主なポイントは次のとおりです。
・税収は近年、当初予算を継続的に上回っている
・日本政府はGDP比で約130%に相当する金融資産を保有している
・国債の約半分は日銀が保有している
・政府から日銀へ支払われた利息の一部は、日銀納付金として政府へ戻る
・国債費には利払いだけでなく、借金の返済分も含まれている

こうした政府の資産や日銀との関係まで含めてバランスシートで考えると、日本の財政は「すぐに危機が起こるような状態ではない」というのが武者氏の見解です。
ただし、これは武者氏による分析であり、日本の財政に対しては異なる見方もあります。一般的な財政指標との違いを意識しておく必要があります。
米国経済はインフレより雇用の減速に注意
米国経済について、武者氏は緩やかな減速局面に入っていると分析しています。
米国の成長率は依然として2%程度を維持していますが、今後は1.5%前後、場合によってはそれ以下へ低下する可能性があるとしました。
特に注目しているのが雇用です。
これまでは製造業を中心に雇用が減少していましたが、足元では情報産業に加え、コンサルタント、会計士、弁護士などが属する専門サービス分野でも雇用の鈍化が目立っています。
武者氏は、AI革命が生産性を高める一方で、ホワイトカラーの仕事を減らし始めていると指摘。AIによる成長と雇用減少という、プラスとマイナスの両面が現れ始めたと説明しました。
物価については、直近の上昇は主にエネルギー価格によるものとの見方です。エネルギー価格がさらに上昇しなければ、今後はインフレよりも雇用の弱さが金融政策上の問題になる可能性があります。
米国株の鍵は長期金利
川口氏は、NYダウがこれまでの上昇トレンドから外れつつあり、天井を打った可能性を指摘しました。
これに対して武者氏は、現時点で米国株がすでに大きな天井を打った可能性は低いと分析しています。
最大の焦点は、米国の長期金利です。
財政赤字への警戒から長期金利が大きく上昇すれば株式市場の重荷になりますが、雇用の減速とインフレの沈静化が確認されれば、金融政策は引き締めよりも景気を支える方向へ向かう可能性があります。
AI投資を背景に世界の資金が米国へ流れ込む構造も、当面は米国経済と株価を支える要因になるとみています。
日本株は高市政権の経済政策次第
日本株については、現在の上昇が高市政権による積極的な財政・金融政策への期待を織り込んだものだと、武者氏は分析しています。
昨年10月以降の日本株の急上昇は、アベノミクス開始時と同様に、政策転換を先回りした動きだったとの見方です。

今後のシナリオは、政策の実現性によって大きく分かれます。
・積極的な経済政策が進む場合
現在の調整を経た後、日本株が再び高値を目指す可能性がある
・政策が腰折れした場合
現在の株価水準が大きな天井になる可能性がある
・高市首相が退陣する場合
緊縮的な政策へ転換し、日経平均株価が5万円程度まで下落する可能性もある
もちろん、日経平均5万円という数字は、武者氏が示した最悪の場合の条件付きシナリオです。現時点の予想として断定したものではありません。
内閣改造や特別国会での審議を通じて、積極的な経済政策を実行できるかどうかが、日本株の次の方向を決める重要な判断材料になりそうです。
金とビットコインが示す「信用創造」の拡大
視聴者からは、ビットコインが3カ月ぶりに8万ドルを突破したことについて質問が寄せられました。
武者氏は、ビットコイン自体を専門的に分析しているわけではないと前置きしたうえで、金とビットコインには共通する値動きがあると説明しました。
米国の雇用が不安定になり、金融政策が景気を支える方向へ動けば、市場へ供給される資金が増える可能性があります。
その資金がまず金やビットコインへ向かい、続いて株式などの資産価格を押し上げるシナリオを示しています。
動画で確認したい必見シーン
31:38 日米の財政状況を比較
34:17 ドル円160~163円に上値の壁
37:15 150円割れと日銀利上げのリスク
48:01 米国株の天井と長期金利の見通し
53:52 日本株の今後を左右する政策
57:51 政策が成功・失敗した場合の日本株シナリオ
1:02:13 金とビットコインに関する見方
まとめ――円安継続を前提にしすぎない
今回の配信で武者氏が強調したのは、現在の円安には、日米金利差や日本の財政状況だけでは説明できない部分が大きくなっているという点です。
ドル円は160~163円付近で上値が抑えられる一方、日銀の利上げなどをきっかけに円高方向へ流れが変われば、150円割れから145円、140円を試す可能性もあります。

また、米国ではAIによる成長と雇用減少が同時に進み、日本株では高市政権の経済政策が相場を左右する重要な局面を迎えています。
ドル円、日本株、米国株のいずれも、これまでのトレンドがそのまま続くと考えるのではなく、金融政策や雇用、長期金利、国内の政策動向を確認しながら判断する必要がありそうです。
詳しい分析や出演者同士の議論は、ぜひアーカイブでご覧ください。
次回の「ゴールデンアワー」は、2026年9月24日(木)20時から配信予定です。ゲストには、国際テクニカルアナリストの福永博之氏を迎えます。
※本記事は番組内で語られた見解を整理したものです。将来の相場や価格を保証するものではありません。
> お米 or お肉がもれなくもらえる?!

