
記事公開日:2019年6月19日
令和元年、最初のアメジスト香港主催の特別セミナーが6月8日、アークヒルズクラブにて開催されました。今回は、カリスマ個人投資家の内田衛さんを特別講師に迎え、さらにお馴染み酒匂隆雄さん、川口一晃さん、名波はるかさんも登壇。令和元年に相応しい布陣で、これからの投資戦略について盛りだくさんの話を聞くことが出来ました。こちらの記事は、酒匂隆雄さんと川口一晃さんの対談の様子です。

今回は、私からお二方にテーマを出させていただきます。まず「アメリカはどこに行こうとしているのか」。
そうですね。トランプ大統領は、気に入らない人は全員クビにするという人事を行っています。とにかく彼は敵をつくるのが好きですね。今のところは安倍首相が、彼の暴走を諫める役どころですが、非常に不透明です。でも、米国内では非常に楽観的でした。次の大統領選挙も再選されるかも知れません。
彼はビジネスマンです。外資系の経営者は、トップに立つとイエスマンで周りを固めようとします。それと同じですね。人事も含めて、政治というよりも企業経営しているイメージです。
ビジネスマンだから、得になることはやるし、まずい時は引く。こうした押し引きの呼吸を読むのに長けていますよね。メキシコの関税率引き上げも見送りましたし、次回の大統領選挙まではなんとかうまくやるでしょう。
ドラえもんみたいなものですよ。ジャイアンという非常に強いガキ大将がいて、それについて回るスネオがいる。ジャイアンは言うまでもなくトランプの米国で、スネオは日本。で、ジャイアンの横暴が最近とみに目立つようになってきた。今後の顛末はどうなることやら。
他のクラスメイトは嫌がっているが、やりたい放題ですからね。

マーケットを動かすのは米中問題でしょうか、それともメキシコ国境問題でしょうか。
米中問題は、もはや通商問題というよりも貿易戦争になっています。通商問題から離れて、知的財産や人権問題を巡る論争が繰り広げられています。こうなると簡単に収まらないでしょう。メキシコの関税率引き上げ問題は一段落しましたが、米中はかなり長期化するのではないでしょうか。それだけ、マーケットに及ぼす影響も甚大だと思います。
米中問題が日本に及ぼす影響も懸念されます。日本からの輸出が一番多いのは中国で20数%、米国が14%です。でも、中国に行っている日本の輸出品は原材料的なものが中心で、それを中国で完成させ、製品が米国へと輸出されていきます。日本で作られている原材料が、回りまわって米国で消費されているのですから、米中が揉めれば揉めるほど、日本経済にも影響が及びます。
米国の株価はまだ強いと思うけど。
強いですよね。でも、日本は思ったほど強くない。
昨年12月までFRBは利上げスタンスでした。今は逆に利下げスタンスです。金融を引き締めないとなれば、米国の株価は上がります。でもGAFAに対する課税問題があるので、この先はどうなるか分かりませんよ。
僕はしばらく米国株価の調整は長引くかと思ったのですが、ここ数日で完全に戻してきました。今は景気が悪いから利上げを見送ることを材料視して、株価が上昇していますが、景気が悪ければ本来、株価はスローダウンしなければおかしい。こんなに勢いよく上昇しても良いのかという点が疑問です。恐らく、どのマーケットが目先、一番儲かりやすいかを考えた時、多くの投資家が米国だと判断したのでしょう。ということは、実態以上に米国の株価水準は高いと考えられます。
米国に引き寄せられたマネーは、次にどこへ行くのでしょうか。そういう視点で考える必要がありそうです。
長期金利が低下してきたということは、債券を買っているわけですよね。世界で一番安全な資産は米国国債だという判断があるのでしょう。でも、同時に米国の株価も勢いよく上昇しているわけで、それが非常に不思議です。米国の株価は少し慎重に見た方が良いのかも知れません。
短期金利が長期金利よりも高い逆イールド現象が生じているのも懸念材料です。短期金利は中央銀行がコントロールできるもので、現在の水準は2.5~2.7%です。これに対して長期金利は市場の需給関係で決まりますから、金利形成に中央銀行の意図を反映できません。その長期金利が短期金利よりも低いのですから、不況間近のサインと見ることも出来ます。
混迷のイギリス、ユーロ加盟国の行方はどうなりますか。
このテーマについては、よく分からないとしか答えようがありません。
同じです。メイ前首相が辞任して、次の首相を決める段階ですが、現状ではハードブレクジットになる恐れが高いでしょう。そもそもブレクジットを決めた時の国民投票は僅差で、英国民のなかには「本当に離脱しちゃうの?」と思っている人も大勢いたようです。
だから、次にもう一度、国民投票を行ったら「ユーロに残る」という票が多数を占める可能性もあります。では、なぜ英ポンドが今戻しているのかというと、売る人がいなくなったからです。
シカゴのIMMを見ると、円、ユーロ、英ポンド、豪ドルが皆、ショートになっています。売っている以上、どこかで買い戻さないと利益を確定できませんから、それが通貨の押し上げ要因になっています。
同意見です。
昔、為替トレーダーだった時、英ポンドのトレードで儲かった試しがなかった。ボラティリティが高いから難しいのです。だから、それでもどうしてもトレードしたいという方は、レバレッジを低めにすることです。いずれにしても、新規ポジションを持つならば、10月31日まで様子を見た方が良いでしょう。

中国問題でどんな影響が出るでしょうか。
大きな影響が出ると思います。特に韓国。韓国の貿易パートナーで一番大きな国は中国です。中国は今、米中貿易戦争の影響で経済が苦境に立たされていますから、それは韓国経済にとってもマイナス要因です。だからウォンが売られているのですが、このままウォン安が進めば、韓国はインフレに見舞われます。
それを避けるためにはウォン買いの介入を行うのですが、自国通貨を防衛する時は外貨準備を売らなければなりません。自国通貨を安くするのは簡単ですが、防衛するのは非常に難しいのです。中国問題が韓国経済にとってネガティブ要因として利いてくるのは、これからではないでしょうか。
僕の意見は、先ほど米中貿易問題のところで申し上げた通りです。
フェイスブックがファーウェイに対してアプリを入れさせないといった措置も取られてきました。どんどん問題が広がっています。中国問題はもっと深刻になるでしょう。
参議院選、消費税アップを控えている日本はどうなるでしょうか。
どうなのでしょう。日米首脳会談で、参院選まで通商問題はやめてくれと安倍さんが言って、これに対してトランプ大統領はやらないと言ったとか。消費税率の引き上げはやるでしょう。やらないと円が売られます。海外の投機筋は日本の財政事情を知っていますから、これをやらないことには、日本はダメだということで円が売られ、株式も売られます。
景気に影響は出るでしょうね。
でも、ほとんど織り込まれているでしょう。消費税率を引き上げた程度で景気は落ち込まないと思いますよ。
日本の景気は重くなっています。オリンピックは織り込み済みですしね。株価の動きがそれを如実に物語っています。これから先、日本の景気はスローダウンしていきます。
ドル円の見通しを教えて下さい。
これから戻したとしても1ドル=110円前後でしょう。戻りは弱いと思います。
5月の雇用統計が悪かった。前哨戦のADPも悪かった。そうであるにも関わらず、107円90銭までしか落ちませんでした。誰かが買っているみたいですね。とはいえリスクオフの円買いも考えられますから、米中問題がきな臭いうちは112円の円安にはならないでしょう。110円をコアにして、112~113円までの円安、108~109円の円高というレンジを想定しています。
この1カ月で見れば、108~109円。
ユーロ相場の見通しを教えて下さい。
ドイツ経済が悪いし、イタリアの財政問題も深刻化しています。それでもユーロが上がるのは、IMMでショート優勢だからです。
ゆっくり下げてきましたから、上がりにくいでしょうね。
ポンド円の見通しは?
ボラ大きい。基本的には売り推奨です。
怖いよね。長期的なトレンドはポンド安だと見ているのですが、マーケットがショートだから、どこかでポンと跳ね上がる可能性も考えておく必要がありそうです。
豪ドルの見通しは?
短期的に豪ドルは戻すと思いますが、中国の影響を受けます。中国がこけると豪州もこけます。見通しは不透明です。
ニュージーランドドルの見通しは。
基本的に豪ドルもニュージーランドドルも同じです。豪ドルが下がれば、ニュージーランドドルも売られるでしょう。
年初の安値を意識する動きになるのではないでしょうか。
カナダドルの見通しは。
米ドルとほぼ同じでしょう。
同じです。
ありがとうございました。
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