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経済ジャーナリスト鈴木雅光の「奔放自在」 vol.50
公開日:2022年7月14日

存在意義を失ったETF

1995年、東京証券取引所にETFが上場されました。ETFとはExchange Traded Fundの略で、受益証券を証券取引所に上場し、株式と同様に売買できる投資信託です。

日本における第1号のETFは、野村アセットマネジメントが設定した「日経300株価連動型上場投資信託」でした。同ファンドの設定に遡ること2年前、1993年から算出が始まった「日経株価指数300」を盛り上げるために設定されたという声もありますが、結局のところ、このETFの売買は盛り上がらず、それ以降の新規ETF上場は、2001年までありませんでした。

2001年になり、現物株式との交換が可能なETFが解禁となり、同年に東証上場ETFの本数は9本になりました。ところが、それでもETFの市場は盛り上がらず、2002年に2本が新規上場を果たしたものの、2003年から2006年までは1本も新規上場がありませんでした。

風向きが大きく変わったのは2008年からです。それまで日経225平均株価や東証株価指数など、主に国内の株価インデックスへの連動を目指すETFばかり上場されていましたが、2008年にETFの多様化を進めるため、国内の株価指数への連動を目指すETFだけでなく、海外の株価指数や債券、コモディティなどへの連動を目指すETFも組成できるようになったのです。

これを機に東京証券取引所に上場されるETFの本数は一気に増えました。2007年に18本だったのが2008年には68本になり、2010年には112本、2016年には205本、そして現在、264本となっています。

しかし現状、ETFの商品的な立ち位置はかなり微妙なところにあります。かつて、ETFのメリットと言われていた点が、徐々に失われつつあるからです。

ETFのメリットとは何でしょうか。あくまでも個人がETFを利用する際のメリットですが、以前から言われていたのは、

1)コストが安い。

2)いつでも株式市場で売買できる。

3)信用取引を活用できる。

というところでしょうか。特に①のコストが安いという点は、ここ数年、投資信託でローコストのインデックス型投資信託が登場するまでは、ETFが圧倒的に有利でした。

しかし昨今では、インデックス型投資信託の信託報酬率がETFとほぼ変わらなくなりました。

加えてETFは株式と同じように市場で売買しますから、売買に際して証券会社に「株式委託手数料」を支払う必要があります。

インデックス型投資信託の場合、購入時手数料がかからないノーロード型が中心になっているので、手数料面の優位性ではむしろインデックス型投資信託に軍配が上がります。つまり①のメリットについては正直、現時点においては優位性とは言えなくなりつつあるのが現実です。

ところでこの「コストが安い」という点が注目を集めていた頃、ETFは長期投資に向いていると言われていました。多くのインデックス型投資信託の信託報酬率が年0.8%とか1.0%と言われていた時代です。ETFの信託報酬率が年0.2%程度というのは、圧倒的にコスト安だったので、長期投資を前提にした場合、コストが安い分だけETFは有利だと考えられていたのです。

しかし、これも今では相当に怪しくなってきました。なぜならETFの上場廃止が増えているからです。

前述したように、東京証券取引所に上場されているETFの本数は年々増加傾向をたどってきました。

ところがその一方で、2015年からは上場廃止された銘柄も結構増えています。具体的に上場廃止された銘柄数を挙げると、

2015年・・・・・・5本
2016年・・・・・・1本
2017年・・・・・・1本
2018年・・・・・・14本
2019年・・・・・・20本
2020年・・・・・・2本
2021年・・・・・・9本
2022年・・・・・・1本
というようになっています。特に2018年と2019年は、上場廃止が急増しました。

上場廃止になると、当然のことですがそれ以降の運用は出来なくなります。長期投資したくでも出来ないのです。

唯一、ETFの存在価値があるとしたら、株式と同じようにザラ場で売買できることと、信用取引を利用してレバレッジが掛けられるという2点のみです。ということは、もはやETFは長期投資のためのツールでは無くなったことを意味します。

実際、ETFを売買代金でランキングすると、その上位に来るのは「レバレッジ型」や「ダブルインバース型」ばかりです。レバレッジ型とは、たとえば連動目標となるインデックスが10%動くと、ETFの取引価格が20%、あるいは30%というように倍率を掛けて動くタイプのETFです。

またインバースは、連動目標となるインデックスが下落すると、取引価格が値上がりするタイプのETFです。いずれも、短期的な相場の値動きを捉えて利益を享受するタイプのETFですが、それが売買金額上位のほとんどを占めていることからも、今のETFが資産形成ではなく、投機の対象になっていることが伺われます。



金融ジャーナリスト
鈴木雅光(すずき・まさみつ)

JOYnt代表。岡三証券、公社債新聞社、金融データシステムを経て独立し(有)JOYnt設立し代表に。雑誌への寄稿、単行本執筆のほか、投資信託、経済マーケットを中心に幅広くプロデュース業を展開。

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