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経済ジャーナリスト鈴木雅光の「奔放自在」 vol.41
公開日:2022年2月11日

個人向けインパクト投資債券のワナ

「インパクト投資」という言葉をご存じでしょうか。これは、社会貢献と投資リターンの両立を目指す投資のことです。

最近、「サスティナブル」とか、「ESG」、あるいは「SDGs」といった言葉を年中、耳にするようになりました。

サスティナブルとは持続可能性のことで、分かりやすいところで言うと、限りある地球の資源を食いつぶすような開発をせず、すべての生き物にとってかけがえのない場所である地球が永遠に存続できるようにする、あらゆることを指しています。

たとえば、地球温暖化につながるCO2の排出量を減らしてカーボンニュートラルを目指したり、海洋プラスティック問題を解決するために石油化学製品を減らしたり、あるいは化石燃料の使用を最小限に抑えて再生可能エネルギーに代替させたりするなどが該当します。

こうしたサスティナブルな世界を目指すため、2015年の国連サミットで加盟国の全会一致をもって採択されたのが、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」、つまりSDGsです。SDGsとはSustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略です。

またESGは、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(企業統治)の3つを合わせた言葉で、投資家が投資先を選定する際の指標として提唱されているものです。つまり、地球環境や社会に配慮した経営を行い、かつコンプライアンスの遵守や情報開示、第三者視点での監視体制の設置など企業統治がしっかりしている企業こそが、機関投資家などの投資対象として相応しいという考え方です。

つまり、SDGsやESGを念頭に置き、それらの実現に向けて活動を行うことによって、サスティナブルな世界を実現できるということです。

個人向けの金融商品でも、こうした世の中の流れを反映して、SDGsやESGをテーマにした金融商品が増えています。今回はそのひとつ、「インパクト投資債券」を取り上げてみたいと思います。

インパクト投資債券とは、世界銀行や国際金融公社、北欧投資銀行、アジア開発銀行といった国際機関や民間金融機関などが、途上国支援に必要な事業資金を集めるために発行した債券のことです。この手の債券を個人が購入すれば、その資金が世界中の支援を必要としているところに配分されるという仕組みです。

債券発行によって調達された資金の使い道を見ると、「開発途上国の子供たちにワクチンを提供する」、「マイクロファイナンス機関への投融資」、「環境関連プロジェクトに融資」、「クリーンエネルギー開発事業への融資」、「アフリカにおける教育関連プロジェクトを支援」、「中南米における貧困対策事業を支援」というように、SDGsの実現に向けて必要なプロジェクトへの資金供給が行われていることが分かります。

とはいえインパクト投資ですから、「誰一人取り残さない」ために行われる支援に資金を提供するのはもちろん大事ですが、それと同時に、そこから一定のリターンを得ることも大事です。

債券のリターンは、基本的に利子という形で投資家の手元に戻ってきます。インパクト投資を目的にしてこの手の債券に投資する人の関心事は、どのくらいの利率になるのかという点でしょう。

これが驚くなかれ、非常に高いのです。

現在、誰もがご存じかと思いますが、先進国ではゼロ金利、もしくはマイナス金利の状態です。このところ、コロナ禍の影響でインフレが加速し、長期金利は上昇ぎみとはいえ、米国10年国債の利回りは1.8%前後。日本に至っては0.17%前後です。こうしたなかで、インパクト投資債券の利回りを見ると、発行された時期によっても異なりますが、5%台、6%台は当たり前で、なかには2年物で20%を超えるものもあります。

これだけ高い利率が提示されていたら、興味を持つ個人も大勢いるでしょう。途上国支援のプロジェクトに投資することで、本当にこれだけのリターンが期待できるものなのでしょうか。実は、これにはからくりがあります。

この手の債券の通貨建てを見ると分かりますが、ブラジルレアル、トルコリラ、南ア・ランド、ロシアルーブル、メキシコペソ、インドルピーなど新興国通貨建てのものが大半を占めています。いずれも高金利通貨ばかりです。つまり高金利が提示されているインパクト投資債券は、基本的に高金利通貨建てだからこそ表面上の利率が高くなっているだけのことなのです。

しかし、高い利率の裏には高いリスクがあることを忘れてはいけません。利率の高い通貨国はインフレの国ですから、基本的に通貨価値は減価していきます。

ちなみに2018年、「環境にやさしい経済・社会の発展に貢献する企業・プロジェクトへの融資」をお題目にしたグリーンボンドが、トルコリラ建てで発行され、償還までの期間3年で、年利率11.71%が提示されました。

この債券の受渡日である2018年1月のトルコリラ/円は、1トルコリラ=30円前後でしたが、それから3年が経過した2021年1月時点では、1トルコリラ=13円前後までトルコリラ安・円高が進んでいます。率にして、トルコリラは対円で57%も減価したことになります。この間、年11.71%の利息を受け取れたとしても、完全な元本割れです。

社会貢献という言葉の裏側に、これだけの高いリスクが潜んでいることには留意しておく必要があります。



金融ジャーナリスト
鈴木雅光(すずき・まさみつ)

JOYnt代表。岡三証券、公社債新聞社、金融データシステムを経て独立し(有)JOYnt設立し代表に。雑誌への寄稿、単行本執筆のほか、投資信託、経済マーケットを中心に幅広くプロデュース業を展開。

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